ギリシャデフォルトリスク上昇責任は債権団にもある
ココログメンテナンスのため記事公開が遅れました。
6月29日午前11時6分にメルマガにアップした記事です。
週明けの東京株式市場はギリシャと債権団との交渉が不調に終わったことで、ギリシャのデフォルトとユーロ離脱のリスクを踏まえて株価が大幅に下落している。
日経平均株価の下げ幅は一時500円を超えて20100円台をつけた。
今週は、米国の6月雇用統計が7月2日の木曜日に発表される。
独立記念日の休場で発表が通常よりも1日前倒しされる。
『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
6月29日号にも記述したように、目先の最大のリスクはギリシャ情勢であり、最終的な着地はまだ明確でない。
ギリシャはEU等からの金融支援終了を望んでいない。
EU、ECB、IMFはギリシャのデフォルト、ユーロ離脱を望んでいない。
両者の意向は、この点では一致する。
しかし、金融支援を継続するための条件において両者の主張は食い違い、一致点を見出せないのである。
双方は、自己の主張を通すために、「強気」の交渉姿勢を維持している。
双方がともに「譲歩しない」姿勢を示し続けている、。
交渉が決裂すれば、金融支援は打ち切りとなり、ギリシャはデフォルト、ユーロ離脱に陥る可能性が高まる。
このことをギリシャは望んでいない。
また、EU、ECB、IMFも望んでいない。
しかし、双方が自分の側が譲歩することはしたくないとして、交渉がまとまらないのである。
これを「チキンゲーム」と呼ぶ。
「度胸試し」とも呼ばれるゲームで、米国の青春映画「アメリカン・グラフィティ」を観たことのある人はよく覚えているだろう。
二大の車を遠くから正面衝突する方向に全速力で走らせて、先にコースから離脱した方を「負け」とするゲームだ。
双方の度胸が強く、最後までコースを離脱しないと正面衝突する。
勝負には勝つが、双方ともに重傷を負うことになる。
いまのギリシャと債権団は、どちらも譲らず、この方向に向かいかねない動きを示している。
欧米の報道では、「ギリシャが譲歩しないのが悪い」という論調が目立つが、これはウクライナ問題でも見られる特徴である。
ウクライナでの政権転覆の動きが生じたときの報道も同じである。
西側の報道は、「ロシアが悪い」というものであったが、そもそもウクライナ政変を裏側で工作したのは米国と米国と連携するウクライナの極右勢力であったと見られている。
報道は工作を指揮した側から発せられているわけで、この情報だけを鵜呑みにすると全体の中立・公正な判断をすることができない。
ギリシャの債務問題もまったく同じ側面を有する。
双方に双方の主張があることを忘れてはならない。
ギリシャ政府は債権団が提示する財政再建案をギリシャ国民が受け入れるかどうかの国民投票を7月5日に実施するので、債権団の判断をここまで猶予してもらいたいという行動を示した。
これに対して、債権団は6月30日の期限は譲れないとして、この提案を拒否している。
このまま進むと、ギリシャは6月30日のIMFへの資金返済ができなくなり、事実上のデフォルト(債務不履行)状態に陥ることになる。
この緊張感から金融市場がリスクを回避する行動を強めている。
ギリシャと債権団との主張のすれ違いの最大のポイントは、財政再建の手法の相違にある。
ギリシャ政府は企業に対する課税などを通じて財政再建を実現することを目指すが、債権団は年金給付の引下げ等の実施を強く求めている。
債権団は、企業課税の強化はギリシャの経済成長を抑圧し、想定する財政再建効果をもたらさないとの見解をも同時に示している。
ここには、経済運営に際しての基本的な立場、主張の隔たりがある。
日本でも財政再建の方法論について、主張の相違がある。
安倍政権は
消費税の増税、法人税の減税、社会保障の圧縮
などを通じて財政再建を果たすべきだと主張する。
これに対して、「弱肉強食政策」に反対する立場からは、
消費税の減税、法人課税の強化、富裕層に対する課税強化、社会保障の拡充
が提案される。
現状では、「弱肉強食派」の主張が押し通されている。
この「弱肉強食推進」の経済政策運営の考え方を「ワシントン・コンセンサス」と呼ぶことができる。
今回のギリシャに対する債権団の一角を占めるIMFの本部もワシントンに存在し、ワシントン・コンセンサスを策定した重要な一機関である。
ギリシャに対して最も強硬な姿勢を示していると見られているのがIMFのラガルド専務理事であり、ギリシャに対して、ワシントン・コンセンサスに沿う経済運営を強く求めていると見られるのだ。
このワシントン・コンセンサスの中核を占める経済運営の要諦(ようてい)は、
市場原理
規制撤廃
小さな政府=社会保障の圧縮
民営化
である。
この「ワシントン・コンセンサス」に対する評価が重要な事項になるのだ。
続きは本日の
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