カテゴリー「カルロス・ゴーン」の2件の記事

2020年1月 9日 (木)

頭脳明晰を微塵も感じさせなかったゴーン会見

海外逃亡したゴーン被告が逃亡先のレバノン・ベイルートで記者会見を行った。

記者会見は失敗だったと判断できる。

会見をしなければ、ゴーンという人物は優秀な人物であるとの幻想が世間一般に残存した可能性があるからだ。

ゴーン氏が問われている罪は企業の財産を私的に窃取したというものだ。

企業の財産を横領し、私腹を肥やしたというものだ。

この疑いに対する無実の証明が皆無だった。

日本の刑事司法手続きに多くの問題点があることは知る人はみな知っている。

その前近代的な制度によって人権を侵害されてきた者は多数存在する。

しかし、記者を集めて説明する機会を得たにもかかわらず、ゴーン被告は自分が無実潔白であることについて効果的な説明ができなかった。

保釈中の不法な海外逃亡自体が犯罪である。

ゴーン氏はクーデターだと主張するが、司法取引を利用した立件であるから、検察と日産の連携は存在しても不自然ではない。

クーデターであるとのゴーン被告の主張が説得力を持つためには、ゴーン氏が問われている背任の罪についての無実の証明が必要不可欠である。

背任の事実が存在するなら、日産から排除され、罪を問われることに正当性がある。

ゴーン氏は自分自身が完全に無実潔白であること、無実潔白であるのに日産によって犯罪者に仕立て上げられたことを証明する必要があるが、この肝心な部分についての説明が会見の前半部分の説明では存在しなかった。

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長々と同じ話を繰り返しているだけで、優秀な経営者との説が風説に過ぎなかったと多くの者が感じたと思われる。

「コストダウン 叫ぶあんたが コスト高」

これは、1999年の第一生命サラリーマン川柳の第1位作品だ。

ゴーンの手法を詠んだ川柳と理解できるが、冷酷にコストを切るだけなら冷血人間なら誰でもできる。

人間を大切にしながら企業を立て直してこそ名経営者なのだ。

人間や取引先を消耗品として取り扱い、単に企業の利益を出すだけなら、難しい話ではない。

そして、企業経営者として重要なことは自分自身の身辺が身ぎれいかどうかである。

最前線で汗水流す労働者と豪華なオフィスで命令だけ下す経営者の年収格差には限界を設けるべきだ。

本当の優れた経営者は企業活動が生み出す果実の分配において、末端の労働者に手厚く、自分自身に対する報酬に対して抑制的に行動する。

これが優れた経営者の基本姿勢である。

ゴーン流は真逆だ。

それでもその報酬が正規に認められた正統性のあるものであるなら、ギリギリ許容範囲になるだろう。

ところが、不正な手法を用いて、自己の報酬をかさ上げすることは、企業に対する背任行為になる。

刑法はこれを犯罪と認定して刑罰の対象にしている。

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刑事司法のあり方として、

適法手続き、罪刑法定主義、法の下の平等、無罪推定原則

などを満たさねばならない。

いまから230年以上も前の1789年フランス人権宣言にこのことが明記されている。

しかしながら、日本の刑事司法においては、これらの大原則が守られていない。

これはこれで重大な問題だが、この問題が存在することは、背任罪の免責理由にならない。

ゴーン氏が無実の主張をするなら、起訴されている特別背任の事案について、無実の証明をする必要がある。

その証明ができなければ、日本の刑事司法制度に多くの問題はあるが、ゴーン被告の行動は犯罪行為であるとの見方が揺るがない。

罪を犯していない者が日本の司法制度を糾弾して、その苦難から脱出を図ったというなら賛同を得るだろう。

無実の人間が犯罪者に仕立て上げられることは最大の誤りだからだ。

しかし、罪を犯していることが事実であれば、日本の刑事司法に対する批判の説得力は格段に低下してしまう。

この部分が決定的に重要だ。

ゴーン被告にとっての本当の転換点が1月8日の記者会見になった可能性がある。

今後の不測事態発生のリスクが格段に上昇したと言える。

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金利・為替・株価大躍動 ~インフレ誘導の罠を読み解く

2020年1月 3日 (金)

ゴーン被告海外逃亡行政責任説明しない安倍首相

ゴーン被告が逃亡した。

保釈中の海外逃亡には刑法の逃走罪は適用されない。

しかし、出入国管理法違反の疑いはある。

ゴーン被告の海外逃亡について、ゴーン被告を擁護する主張が見受けられるが、問題を混同して論じるべきでない。

日本の刑事司法には重大な問題が山積している。

本ブログ。メルマガでは日本の警察・検察・裁判所制度の前近代性の問題を取り上げてきた。

日本の刑事司法が完全に腐敗しているという重大な現実がある。

しかし、他方で海外逃亡も明白なルール違反である。

保釈を請求する際に細かな条件が付された。

これは保釈を請求したゴーン被告側が付したもの。

日本の司法当局と「契約」を交わしたものである。

「契約」を交わした以上、契約を履行するのが当然である。

まして、ゴーン被告がビジネスで重責を担ってきたことを正統性の証しとするなら、契約を履行するのは当然のことだ。

海外逃亡はゴーン被告が提示した条件に反するもので、背任行為である。

もう一つ問題がある。

それが日本の法の執行体制だ。

裁判所は保釈条件を付して保釈を許可した。

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その条件が守られているかどうかを監視する責任が許可した側にある。

海外逃亡されれば公判維持も困難になる。

犯罪に対しての適正な処罰も不可能になる。

殺人犯を保釈し、海外逃亡を許すことと、本質的な相違はない。

今回の事案は法治国家としての体制が整っていないことを示す証左だ。

出入国管理は行政機構の根幹をなす事務の一つだ。

安倍内閣はテロとの闘いを公言し、違憲の疑いが濃厚である共謀罪法制を強行制定してきた。

テロとの闘いが大義名分であった。

しかし、重大事件の被告人の海外逃亡に気付きもせず、海外逃亡を容認するようではテロとの闘いなど夢もまた夢である。

安倍内閣の責任を問う声に対して、安倍内閣の御用言論人がそこまで問題にする必要がないと政権擁護する姿も醜悪だ。

この手の茶坊主言論人の存在が目に余る。

重大な刑事事件被告人の保釈については、当初から海外逃亡のリスクを指摘する声が強かった。

裁判所はこれらの声が存在するなかで保釈許可を強行した。

この事情を踏まえれば、刑事被告人の海外逃亡を防止するために、出入国管理の出国管理をとりわけ厳正にしておく必要があった。

想定されるケースはプライベート機を利用しての国外退去である。

出国管理体制を強化するべきことは言うまでもなかった。

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日本の刑事司法制度は完全崩壊している。

犯罪が存在するのに犯罪者を無罪放免にする裁量権が警察・検察に付与されている。

逆に、犯罪が存在しないのに、無実の市民を犯罪者に仕立て上げる裁量権も警察・検察に付与されている。

裁判所は法の番人として警察・検察の不正を阻止する役割を担っているが、裁判所が政治権力の番人に成り下がり、警察・検察の無法を放置している。

刑事司法においては基本的人権が守られなければならないが、日本の刑事司法では基本的人権が踏みにじられている。

罪刑法定主義、法の下の平等、無罪推定原則、適法手続きのすべてが無視されている。

この意味でゴーン被告の心情を理解出来る面はある。

しかし、ゴーン被告が企業内での立場を利用して不正に利得を得てきたことは客観的に明らかな面もある。

ゴーン被告は公判において疑惑に答える責務を負っていた。

日本の法体制の下で刑事訴訟手続きを受けているのであり、保釈申請にかかわる契約を正しく履行する責務がゴーン被告にはある。

最大の問題は、重大な刑事事件被告人の海外逃亡という大失態を確認しながら、安倍首相が一切の説明責任を果たしていないことだ。

正月休みにうつつを抜かしている状況ではない。

このことが今回事案の最大の問題点である。

行政の最高責任者失格と言わざるを得ない。

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