「不登校は病気」という暴論
昨年10月4日に発表された
『児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要』(文部科学省)
https://x.gd/9MSGN
によると、小中学生の不登校児童生徒数は前年度から54,108人(22.1%)増の299,048人で過去最多になった。
過去5年間の傾向として、小学校・中学校ともに不登校児童生徒数およびその割合は増加、全体の不登校児童生徒数は10年連続で増加した。
このなかで2016年に「教育機会確保法」という学校以外の場で教育機会を確保する法律が制定された。
文科省の原案には、学校以外の場に普通教育を受ける場、ケースを設けることが盛り込まれたが、与野党がそろってこれに反対した。
理由は、「そんなことを認めればみんな学校に行かなくなる」というものだったという。
それほどまでに「学校というのは嫌なところ」という認識が共有されていたということ。
つまり、学校は嫌々行くところであって、その嫌な学校に行って修行するのが重要との大前提が置かれていて、その「強制」を取り除いてしまえば、皆が学校に行くのをやめてしまうとの認識が持たれていたということ。
しかし、世界では「ホーム・スクーリング」、「ホーム・エデュケーション」を認めているのが主流。
日本の学校は「強制収容所」であり、子供をここに閉じ込めて「修行」、「修練」させる発想で学校を位置付けている。
その学校が子どもにとって居心地の良い場所でないことが極めて多い。
かつて「不登校」は「登校拒否」と呼ばれていた。
「登校拒否」となると、これは「直さなければならない」という話になる。
そんななかで戸塚ヨットスクールのような事例が現れて、子どもが亡くなるような事態まで発生した。
前川喜平元文科省事務次官によると、このような状況下で当時の文部省のなかで反省が生まれて有識者会議で議論が行われ、1992年に通知が出されたとのこと。
このときに「登校拒否」の用語が「不登校」に転換された。
「不登校」もネガティブな響きを持つ言葉だが、「登校拒否」よりは表現が和らげられた。
「不登校」は誰にでも起こり得るものとされ、フリースクールなどに通っている場合も在籍している学校での出席として取り扱うという、指導要録上の出席扱いとする通知が出された。
かつては登校しなければ除籍処分にするという措置まで取られていたが、これが是正された。
そもそも、日本国憲法が定めている「教育の義務」とは次のもの。
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
「義務教育」という言葉に含まれる「義務」の意味は、
「保護する子女に普通教育を受けさせる義務」
のことで、「子どもが学校に行く義務」ではない。
保護者は子女に「普通教育」を受けさせる義務を負う。
ところが、日本では「普通教育」を受ける場が「学校」に限定されてきた。
学校教育法第一条が
「幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」
のみを学校と定め、同法第十七条が、保護者に対して子を学校教育法が定める学校に就学させる義務を課した。
このために、「学校に行くのが義務」との誤解が生みだされてきた。
世界の潮流は普通教育の場を学校に限定しないものになっている。
2016年の「教育機会確保法」制定に際して、文科省が普通教育を受ける場を学校以外に広げることを提案したが、与野党がこぞって、この提案を葬った。
しかし、教育機会確保法ができたことによって文科省の不登校対策の大前提が変わった。
不登校の子どもに対する対応の基本を社会的な自立に導くことに置き、その結果、学校に戻すことを目標としないこととされた。
教育機会確保法が制定されて3年後に「不登校の子どもが学校に戻らなくてもよい」との通知が出されたのである。
子どもは「学校に行かない自由」を有する。
このことを銘記しなければならない。
この状況下で看過できないニュースが報道された。
「不登校は病気である」とする島根県出雲市のクリニック院長の飯島慶郎氏を紹介する記事が報じられた。
極めて不適切な表現であり、直ちに撤回が求められる。
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