企業が耐えられなくなる円安誘導
激しい円安が進行している。
背景は日銀の円安誘導。
2013年春に現在の日銀執行部体制が発足した。
背景にあるのはアベノミクス。
アベノミクス第一の矢はインフレ誘導。
インフレにすることを政策目標に置いた。
インフレを実現するために超金融緩和政策が実行されてきた。
しかし、インフレ誘導は失敗に終わった。
これは不幸中の幸い。
インフレは日本の労働者、消費者にとって害悪でしかない。
日銀がインフレ誘導に失敗したことは労働者、消費者にとっては幸いだった。
日銀の黒田東彦総裁と岩田規久男副総裁は2年以内に消費者物価上昇率を2%以上に引上げることを約束した。
国会同意人事審議で岩田規久男氏は公約を実現できない場合は職を辞して責任を明らかにするのが妥当と述べた。
しかし、公約は実現しなかった。
実現しなかった公約はこれだけでない。
公約を実現できなければ職を辞して責任を明らかにするとした公約も実現しなかった。
まったく責任感がない。
物価が上昇すると消費者の所得は実質的に目減りする
受け取る給与収入もインフレ分だけ目減りする。
保有しているなけなしの預貯金も目減りする。
百害あって一利なし。
他方、企業の側はインフレを歓迎する。
従業員に支払う給与の実質負担がインフレ分だけ減少する。
また、一般的に企業は債務者で、銀行から借りているお金の実質価値はインフレ分だけ目減りする。
そもそも、インフレ誘導は企業に利益を与えるための政策目標。
世界の競争が激化して大企業の経営が難しくなった。
この大企業に利益供与するためにインフレ誘導が計画された。
消費者や労働者にとって、元々筋の悪い政策目標だった。
したがって、黒田日銀がインフレ誘導に失敗したことは日本の消費者、労働者にとっては不幸中の幸いだった。
しかし、そのインフレがついに日本においても現実のものになり始めている。
円安が進行して日本の物価が目に見えて上昇し始めた。
このことについて黒田東彦氏は6月6日の講演で、
「家計の値上げ許容度も高まってきているのは重要な変化と捉えられる。
日本の家計が値上げを受け入れている」
と述べた。
日本経済は過去30年間成長していない。
このなかで、資本の取り分が増えて、労働の取り分が減った。
大多数の労働者が下流に押し流されて生活苦にあえいでいる。
生活苦に拍車をかけたのが消費税大増税。
その消費者が値上げを受け入れているわけがない。
御用学者のでっち上げた報告をそのまま鵜呑みにして述べたもの。
インフレ誘導=円安誘導政策の影響で日本円は暴落している。
日本円の実質実効為替レートは50年前の水準に暴落している。
1971年まで1ドル=360円に固定されていた。
海外に出れば日本円の価値の低さに泣かされた時代。
その水準まで円が暴落している。
日本円を防衛する策を打ち出す必要がある。
具体的には超金融緩和政策を中止するしかない。
黒田氏は金利引き上げ政策が住宅ローン金利を押し上げ、家計にマイナスの影響を与えると述べたが、金融政策は住宅ローン金利を低位に抑制するために存在するものではない。
2021年3月末時点で家計は230兆円の住宅貸付残高をかかえているが、同じ時点に、1057兆円の現預金を保有している。
現金は102兆円だから955兆円が預金だ。
金利が上昇すると住宅貸付の利払い負担が増えるが、他方でこの5倍ある預金の金利収入が増える。
日銀総裁が木を見て森を見ない論議を提示しては失格。
黒田東彦氏は早晩必ず政策修正に追い込まれる。
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