菅政権は原発リスクを認識し交通マヒを回避せよ
本ブログでは、福島原子力発電所で発生している事故が最悪の経路を進無可能性を否定し切れないとの警告を発し続けているが、ついに東京電力が原子力緊急事態を宣言するいわゆる「15条通報」を行ったことが報道された。すでに著しく高濃度の放射能が放出されているわけであり、現実が非常事態にあるとの厳然たる事実を十分に踏まえた緊張感のある対応が強く求められている。
原子力事故に際しては、最悪を想定した対応が不可欠である。
“ be on the safe side “
「そこまでしなくてもいいのではないか」との批判を無視して、過剰ともいえる対応を取るべきなのである。対象が原子力である限り、最悪を想定した対応を取ることが鉄則であるが、菅政権の現実の対応は真逆である。
東京電力の記者会見を見ても、緊張感がゼロである。
この意味で、近隣住民の避難については、初動対応として100キロ半径の住民の避難を実施すべきであった。2キロ→10キロ→20キロと、対応が後手後手に回り、無理な時間帯の避難命令で、多数の住民がいまも避難できない状況に置かれている。
枝野幸男官房長官は、楽観論だけを述べ続けながら、段階的な後退を余儀なく迫られてきているのだ。
福島原発から漏出している放射能濃度についても、政府および当局は、正門付近などの定点観測値しか発表してきていない。
福島原発近辺の風向きから判断して、第一原発3号機爆発に際しても、汚染物質は北東ないし北北東の方向に流出したものと考えられ、風上の観測地点の放射能値が低くても不思議はない状況であった。
爆発が発生した際の爆煙を直接採取しなければ、真実のリスクは測定不可能なはずである。爆煙そのものを採取もせずに、風上の定点観測地点の放射能濃度データをもって安全宣言する安易さがまったく理解不能である。
公表されている正門付近の放射能濃度は、爆発や蒸気放出によって放出されている放射能濃度とはかけ離れて低い数値になっているはずであり、東電は、爆発気体や放出ガスそのものの放射能濃度を計測して、隠ぺいせずに公表するべきである。
3号機爆発の際に11人の負傷者が発生しているが、負傷者の負傷の程度、被爆の状況についての情報も十分開示されていない。
また、新たに炉心溶融の恐れが高まっている第2号機の炉心溶融が進展するなら、最悪のケースでは、第2号機の炉心爆発の可能性も否定できない。ここまで事態が悪化すれば、事故現場に人間が接近することすらできなくなり、広範な地域が死の地と化すことになる。
他方、無計画な計画停電が大きな混乱をもたらしているが、停電実施に際しては、国民生活の視点から、鉄道を中心とする公共交通機関への影響を綿密に検討することが最重要である。公共交通機関への電力供給を最優先して、その他の手法での使用電力削減の方策が検討されてしかるべきである。
菅直人氏は東京電力の計画停電の申請を了承したと記者会見で発言したが、東電からの申請を右から左にそのまま了承するのではなく、国民生活防衛の視点から、東京電力と細部の詰めを行うべきであったことは言うまでもない。
当面、4月末までと伝えられている停電が、このような形で公共交通機関を全面的に巻き込む形で強行されるなら、日本経済にこの面からだけでも甚大な影響を発生させることになる。
いまからでも遅くない。公共交通機関への影響を最小限にする形での、使用電力削減の方策を再検討するべきだ。
東京電力からの申請を、内容を吟味もせずに了承しておいて、問題が発生した後で、その責任を東京電力だけに押し付けるのでは、政府など存在する意味がない。
原発事故への対応では、希望的観測を前提にした極めて甘い対応に終始している。希望的観測が実現しない場合、取り返しのつかない人災を招くことになる。
停電実施に際しては、首都圏での公共交通機関の運行大幅削減がもたらす影響をきめ細かく分析しなければ、国民生活を守ることは不可能だ。朝一でヘリコプターに乗って原発を見学しても、このような基本動作を実行し、適切な指示を下せないのなら、何の意味もない。単なるパフォーマンスに過ぎないことになる。政府の指揮体制の抜本的な立て直しが求められている。
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