江田新党と政界再編をメディアが過剰報道する理由
既得権益を打破することは重要なことだが、何が既得権益であるのかを認識しなければ、既得権益を打破することはできない。
日本政治を支配してきた中核は米国である。
米国が支配者で、この支配者に取り入ることで、既得権益を構築してきたのが、官と業である。
これらの既得権益の手先として活動してきたのが、利権政治屋・利権政党と電波産業=マス・メディアである。
米国の既得権益の源泉は「戦勝」にある。
日本は米国にとっての「戦利品」である。
「戦利品」である日本という既得権は、本来、日本の独立とともに消滅するはずのものであった。
ポツダム宣言第十二項に次の記述がある。
十二 前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ
現代語に訳すと次のようになる。
十二 前期の諸目的が達成され、かつ、日本国国民の自由に表明された意思に従って平和的な傾向を有し、かつ、責任ある政府が樹立された場合には、連合国の占領軍はただちに日本国より撤収する。
日本独立とともに、連合国占領軍は日本から撤収することが明記されている。
日本の独立回復を定めたのはサンフランシスコ講和条約である。
このサンフランシスコ講和条約の第六条に次の条文が置かれている。
第六条
(a) 連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。
ここにも、
「この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。」
との記述が記されているのである。
日本の独立回復とともに、占領軍は日本から撤退することが明記されたのだ。
問題は、この条文の但し書きにある。
「但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。」
米国は「戦利品」である日本を手放さないために、サンフランシスコ講和条約第6条に、但し書きを書き込んだ。
日本と協定を結べば、米軍による日本占領状態を維持できるように条文を策定し、これを日本に呑ませた。
米国が「戦利品」としての日本を維持しようとしても、相手のあることである。
日本がこの要求をはねつければ、米国はこの要求を押し通すことはできなかった。
ところが、米国への協力者が日本サイドにいたのである。
それが吉田茂である。
吉田茂は、サンフランシスコ講和条約の調印のその日、単身で米国軍施設に赴き、独断で日米安全保障条約に調印した。
これが、戦後日本が米国に占領され続けている原因である。
吉田茂とともに訪米した日本代表団の一人は、吉田茂に日米安全保障条約への調印を直ちに行う必要はないことを訴えたとされる。
議会の審議もなく、吉田茂は独断で米軍による日本占領維持に同意してしまったのだ。
吉田茂自身が米国によって救われ、米国によって内閣総理大臣の地位に押し上げられたことが背景にある。
吉田茂の養父である吉田健三氏は、アヘン戦争に深く加担したと言われ、明治維新を陰で操ったと見られているイギリスの武器商社であるジャーディン・マセソン商会の横浜支店長をしていた人物である。
吉田茂の立脚点は、日本の側にではなく、米国、米国資本の側にあったのだと考えるべきであろう。
日本の戦後民主化にブレーキをかけ、日本の思想統制を実行したのが吉田茂である。
この吉田茂時代に、米国による日本支配が固められていった事実を見落とすことはできない。
日本の既得権益の中心に位置するのは米国である。
そして、いまなお「終わらない占領」という現実が横たわっている。
したがって、「既得権益の打破」を標榜(ひょうぼう)するには、本来、米国による日本支配のくびきを断ち切ることが必要不可欠なのである。
江田氏、細野氏、松野氏が主導し、12月10日に立ち上げられる「既得権益を打破する会」が抱える致命的欠陥がここにある。
この新勉強会は、対米従属の枠のなかにあり、日本の既得権益の中核に対しては、完全な隷従であると考えられるのだ。
続きは本日の
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