カテゴリー「後期高齢者医療制度」の3件の記事

2008年9月20日 (土)

舛添厚労相は即刻辞任すべし

舛添要一厚労相が後期高齢者医療制度の抜本見直しの私案について発言した問題につき、舛添氏は9月20日朝のTBS番組で、「麻生太郎自民党幹事長が首相になれば政策としてきちっとやる。(臨時国会冒頭の)所信表明演説で言うことになる」との見通しを明らかにした。

後期高齢者医療制度は「姥捨て山制度」の悪評を持つ制度だ。私は制度を廃止したうえで、新しい制度を創設すべきであると主張してきた。国会では野党が制度の白紙還元を主張してきた。舛添厚労相は制度を強引に導入して発足させた政府の責任者として、制度の意義を訴え、制度の存続を主張し続けてきた。

後期高齢者医療制度の問題点は6月9日付記事「沖縄県議選与党惨敗と後期高齢者医療制度」に概略を記述したが、簡単に整理しておく。

後期高齢者医療制度は75歳以上の高齢者だけを対象とする医療保険制度だが、そもそも疾病の罹患率の高い年齢層だけによる医療保険制度が、「保険」としての機能を果たさない点に根本的な問題がある。

この制度では、高齢者の医療機関窓口での負担以外の費用の、5割を公費、4割を現役世代、1割を高齢者に負担させる。高齢者は医療機関窓口で1割以上の負担を強いられるから、保険料負担と医療費負担の合計は極めて高水準になる。

問題は今後、高齢者の医療費全体が急増すると見込まれることだ。そうなると、高齢者の窓口負担と保険料負担は激増し、高齢者の生活を著しく圧迫することが予想される。その結果、高齢者に対する医療の水準を引き下げる論議が生じることになる。

現実に厚労省が発表している試算では、高齢者の保険料負担の増加率は2015年までで比較しても、現役世代の約2倍になる。この制度設計全体が「姥捨て山制度」と呼ばれる所以(ゆえん)である。

また、高齢者の子の世代の被扶養家族となっている高齢者は、これまで、子が加入している医療保険制度を利用することができたため、追加的な保険料を支払う必要がなかった。後期高齢者医療制度では、新たに保険料負担が発生するため、子世代との同居を子の世代が敬遠する傾向が生まれる懸念がある。家族関係に大きなひびを入れる可能性があるのだ。

制度の名称、制度設計、終末期医療についての意思確認に対する医師への報酬制度、など、高齢者の尊厳を無視した冷酷無情な制度設計者の精神構造も批判の対象になっている。戦後の混乱期に努力し、日本の発展のために尽力されてきた高齢者に対する敬意と愛情が皆無の政府の姿勢が、批判の対象になってきた。

後期高齢者医療制度を廃止して、今後の医療制度設計をじっくりと論議し、持続可能な新制度を構築するべきだ。この意味で舛添厚労相の現行制度廃止の方針は当然のものだ。

しかし、国民が舛添提案を喝采(かっさい)するのは大きな間違いだ。政府は国会で野党の強い反対を押し切り、「強行採決」で新制度を導入した。新制度の実施、運営にあたって、どれだけの「血税」が投入されてきたのかを考えなければならない。政府が野党ととことん協議して、野党も同意する持続可能な、合理性を備えた制度を設計し、導入したなら、無駄な費用はまったく生まれていない。

政府は膨大な広告費を投入して、「長寿医療制度について改めてご説明させてください」と題する全国紙全面広告、テレビ広報などを展開したのではないか。「君子豹変」して、「過ち」を「過ち」として改めることは正しい。しかし、そのことによって、これまでの「過ち」が免責されるわけではない。

「大量破壊兵器を保有している」ことを論拠に、国連の制止を振り切って軍事侵略を実行し、大量殺人を実行しておいて、「大量破壊兵器は見つからなかった。軍事侵略は間違っていた。撤退する」と言う場合、犯した罪に対する責任は厳正に問われるのだ。

猛毒米流通事件やイージス艦漁船衝突事件でも、責任ある当事者の責任に対する対応が極めていい加減に取り扱われている。厚生労働行政の最高責任者である厚労相が、「責任問題」に言及することなく、安易に制度廃止を口走ることは許されない。

10月15日に保険料の年金天引きが実施される。総選挙に「後期高齢者医療制度」に対する批判が悪影響を及ぼすことを警戒して、舛添厚労相は十分な根回しも、責任問題に対する適正な対応をも欠いて、制度廃止方針について言及したのだと思われる。また、麻生内閣発足を目前に控えて、厚労相ポストを維持するための猟官(りょうかん)活動の意味も濃厚だ。

総選挙が近づくと、さまざまな「偽装」が繰り出される。「政官業外電=悪徳ペンタゴン」は利権互助会の利権を維持するために必死になっている。自公政権は次の総選挙で敗北すれば「利権死守」の至上命題が潰(つい)える。有権者に対して、口八丁手八丁の攻勢がしかけられる。

しかし、「選挙の時だけ有権者に媚(こび)を売る政治屋」を信用してはいけない。年金記録問題が最大の争点になった2007年の参議院選挙のときに、自民党政権の責任者は有権者に何を約束したか。

6月28日付記事「政治不信を打破するための国民の責任」に記述したが、改めて提示しておきたい。

2007年7月の第21回参院選で安倍晋三首相は

「宙に浮いた年金5000万件は来年の3月までに名寄せして、最後のお一人までしっかりとお支払いします」

と演説した。

参院選で配布された「安倍晋三首相より、国民の皆さまへ」と題したビラは、安倍氏の署名をつけて、

「自民党は責任政党です。出来ることしかお約束いたしません」

「最後のお1人に至るまで、責任を持って年金をお支払いすることをお約束します」

と明記した。

安倍内閣メールマガジン(第31 2007/05/31)は、

「私の内閣においては、年金の「払い損」は絶対に発生させません。
1億人の年金加入者に対して、導入前に3億件あった番号を整理、統合する作業を始め、導入直後にも2億件が残りました。その後、一つひとつ、統合を進めた結果、今残っているのが5千万件です。これらについて、徹底的にチェックを進め、1年以内に全記録の名寄せを完了させます。」

と記述した。

これらの約束が守られなかったことは言うまでもない。

公約を守らなかったことについて町村信孝官房長官は、昨年12月の記者会見で、「来年3月までにやるのは、5000万件の(記録の)解明をすることだ。来年4月以降も精力的にやっていこうということで、最後の一人、一円まで(払うことを)全部、来年3月までやると言ったわけではない」と釈明した。

町村官房長官は、

「選挙中だから『年度内にすべて』と縮めて言ってしまった」

とも発言した。

また、舛添厚労相は紙台帳とコンピューターデータとの突合問題を「社保庁の後継組織ができる時(10年1月)には解決する決意」と表明していたが、公約実現が困難であることが判明すると、

「表明したのはその方向で取り組むとの「決意」であって「公約」ではない」

と言い逃れた。

自民党政治家が言葉に対する責任感を決定的に失ったのは、小泉元首相が次の発言を示してからだ。

2003年1月23日の衆議院予算委員会総括質疑で小泉首相は、国債発行額を絶対に30兆円以上発行しないとの公約を果たせなかったことを追及され、

「その(公約)通りにやっていないと言われればそうかもしれないが、総理大臣としてもっと大きなことを考えなければならない。大きな問題を処理するためには、この程度の約束を守らなかったというのは大したことではない」

と答弁した。結果に対する責任、「責任倫理」が日本中で失われる契機になった。子に「約束は守れ」と教育しようとしても、子が「この程度の約束を守れなかったのは大したことではない」と堂々と反論するようになる。

「偽装消費税増税封印」、「偽装無駄ゼロ政策」、「偽装景気対策」、そして「偽装後期高齢者医療制度廃止」など、次から次に選挙用「政策偽装」が示される。後期高齢者医療制度にしても、選挙で政権が維持されれば、制度の部分修正でお茶を濁されるのが関の山だ。自民党政権は「信用されない十分な実績」を積み上げているのだ。

消費税も直ちに引き上げられることはないが、2-3年内に官僚利権を温存したままで消費税率大幅引き上げが実施されることは、火を見るよりも明らかだ。有権者は前回総選挙からの3年間、小泉政権発足からの7年半の、すべてを評価して審判を下さなければならない。

「選挙の時だけ国民目線」の「悪徳ペンタゴン政権」を延命させてはいけない。「悪徳ペンタゴン」から独立した、「一般国民の幸福実現を、全精力を注いで追求する政府」を樹立しなければならない。自民党があの手この手で「目くらまし」してくるのは、目に見えている。「偽装」を見抜く人々が正しい情報をしっかり伝達し、国民を「偽装政策詐欺」から守らなくてはならない。

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2008年6月 9日 (月)

沖縄県議選与党惨敗と後期高齢者医療制度

 「自由自在」様「中米のそば放浪」様「自公政権打倒のために集まろう」様「階級格差社会をなくそう」様、ブログでのご紹介ありがとうございました。また、これまでのご紹介のなかに、私の単純なケアレスミスで、ブログ名の表記に一部誤りがありましたことをお詫び申し上げます。

  

 多くの心あるみなさまの真理を追求する姿勢から大きなエネルギーをいただいております。これからもよろしくお願いたします。

  

  

 6月8日、沖縄で県議会選挙が実施され、即日開票された。与党である自民、公明両党などが過半数を割り込み、県議会の与野党が逆転した。県議会の定数は48で、中立を含む野党が26議席を獲得し、与党の22議席を大きく上回った。

  

  

 後期高齢者医療制度の見直しや米軍普天間基地の移設問題などが争点に浮上し、与野党とも幹部が現地入りする、県議会選挙としては異例の与野党激突の総力戦が展開された。

  

 自民党の古賀誠選挙対策委員長は、「国政上非常に重要な地域だ。できる限り支援しなければならない」と述べ、自民党として全力を挙げて選挙応援する方針を示した。一方、民主党の鳩山由紀夫幹事長は記者会見で「国民の声を代弁する大きな選挙で国政の将来を占うことができる」と指摘していた。

  

  

 4月27日の山口2区衆院補欠選挙に引き続いて、与野党激突の総力戦で与党が敗北し、野党が勝利を収めた意味をしっかりと受け止める必要がある。また、直近の全国規模の国政選挙であった昨年7月29日の第21回参議院議員通常選挙でも、自民党は大敗して民主党が第1党に躍進し、野党が参議院の過半数を制することになった。

  

 福田政権は2005年9月の郵政民営化選挙で小泉政権が獲得した衆議院での与党多数を活用して、参議院での意思決定を日本国憲法第59条の3分の2条項を濫用して相次いで否定、無視しているが、有権者の意思を無視した暴挙と言わざるを得ない。

  

  

 民主、共産、社民、国民新党の野党4党は後期高齢者医療制度廃止法案を参議院に提出し、参議院はこの法律案を可決した。自民、公明の与党は衆議院でこの法案を否決する方針を示しているが、そのなかで今回の沖縄県議選が実施された。

  

 福田政権は沖縄県議選直前の6月4日に、後期高齢者医療制度で7割の高齢者の保険料負担が減少したとする調査結果を発表し、また、テレビ映像に沖縄の夏季軽装である「かりゆしウェア」を着用した閣僚の姿を繰り返し登場させて沖縄県議選に臨んだが、与党惨敗の結果に終わった。

  

  

 参議院が可決した後期高齢者医療制度廃止法案を衆議院が否決した場合、野党は参議院で福田首相に対する問責決議案を可決する見通しである。問責決議に法的な拘束力はないが、「国権の最高機関」(日本国憲法第41条)である国会の一翼を担う参議院が、「首相として失格である」との意思を決議によって示す意味は重大である。

  

 1998年10月には当時の額賀福志郎防衛庁長官に対する問責決議案が野党の賛成多数で戦後初めて可決された。額賀長官は当初、問責決議に法的拘束力がないことを理由に辞任を拒んだが、野党による審議拒否が長引き、約1ヵ月後に額賀長官は辞任した。

  

 福田首相に対する問責決議が可決された場合、福田首相は直ちに総辞職ないし解散総選挙の決定を下すべきである。それが憲政の常道である。

  

  

 後期高齢者医療制度は、小泉政権の「弱者切り捨て・弱肉強食礼賛・市場原理主義」政策の一環として制定された制度である。法律制定時にも野党は強く反対したが、与党が強行採決によって成立させた経緯がある。

  

  

 後期高齢者医療制度の問題点を改めて整理しておきたい。

  

 第1の問題は、新制度を生み出した原点に「敬老・高齢者尊重の精神」が欠落していることだ。新制度のねらいを端的に示しているのが、厚生労働省国民健康保険課課長補佐(本年1月当時)土佐和男氏の次の言葉だ。

  

 土佐氏は本年1月に石川県後期高齢者医療広域連合が主催した「後期高齢者医療フォーラム」で講演し、そのなかで「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自ら自分の感覚で感じ取っていただくことにした」と新制度のねらいを説明した。

  

 政府は新制度について、①複数の病気にかかり、治療が長期化する、②認知症が多い、③いずれ避けることのできない死を迎える、という「後期高齢者の心身の特性」をあげたうえで、それに「ふさわしい医療」を実現することを目的としていると説明している。

  

 日本が急速に高齢化社会に移行してゆくなかで、最も大切なことは、高齢者がいかに生きがいをもって日々を充実させて暮らしてゆけるかである。戦後の復興、経済発展期を支えてきてくれた高齢の方に対する敬意と愛情が、制度構築の根幹に置かれなければならないはずだ。

  

  

 第2の問題点は、今後の医療費増大の流れのなかで、高齢者の負担だけが突出して高くなる構造が新制度に組み込まれていることだ。保険が保険として機能するためには、リスクが分散されていなければならない。罹患率の高い人々と、罹患率の低い人々が同じ制度に組み込まれていなければ保険は機能しない。

  

 ところが、「後期高齢者医療制度」は高齢者のみによる医療制度であり、当初から制度の存続が困難であることが明白なのだ。政府は制度を維持するための高齢者の負担を1割に定めたと説明するが、その1割負担の絶対金額が若い人々と比較しても突出して激増することは間違いない。

  

 厚生労働省は、2015年時点での高齢者の保険料増加率が非高齢者の保険料増加率の約2倍に達するとの試算結果まで発表している。高齢者は制度を維持するための拠出金以外に医療窓口での負担を負う。どうしても病気にかかりがちの高齢者の負担は生活を困難にするほどに激増するだろう。

  

  

 第3の問題は、政府が真実を語らず、その場しのぎの取り繕いで制度持続を押し通そうとしていることだ。制度に対する国民の否定的な意思は、各種世論調査だけでなく、直近の国政選挙や今回の沖縄県議選の結果に如実に表れている。さらに参議院は後期高齢者医療制度廃止法案を賛成多数で可決したのである。

  

 「新制度で7割の高齢者の負担が減少」などの、誤解を招きやすい現実とかい離した説明を流布して、間違った制度定着をごり押しすることを国民は許してならないと思う。

  

  

 高齢化社会に急速に移行するなかで、すべての国民が安心して、そして幸福を感じながら生きてゆける社会を構築するために、医療、年金、介護を中心とする社会保障制度を再構築することは不可欠である。国民負担のあり方も再検討しなければならない。

  

 しかし、このことは高齢者の尊厳を踏みにじり、高齢者いじめを制度的に確立してしまう「後期高齢者医療制度」の存続を肯定する理由にはならない。国民多数の怒りと不信の声を謙虚に受け止めて、政府は後期高齢者医療制度の廃止を決断するべきだ。

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2008年6月 6日 (金)

誤解招く「負担減少7割」政府説明と沖縄県議選の関係

 「カナダde日本語」「神州の泉」「雑談日記(徒然なるままに、。)ならびに「国際評論家小野寺光一の「政治経済の真実」」の主宰者様、早速、ブログ等で私のメッセージをご紹介くださいましてありがとうございました。深く感謝申し上げます。本当の意味で日本をCHANGEさせるために、心ある者が結束、協働することがとても重要な意味を持つ時期にさしかかっていると思います。それぞれに考え方や主張に違いがあるのは当然だと思いますが、小異を捨てて大同につき、力を合わせて腐敗した現状を打破してゆくことが大切だと思います。私も微力ではありますが、より望ましい社会を構築するために努力してまいる所存です。今後ともご指導ならびにご支援賜りますよう謹んでお願い申し上げます。

 

  

 財務省職員のタクシー業者からの利益供与がニュースとして伝えられている。私は1985年から1987年まで大蔵省に勤務した。当時からタクシーチケットは多用されていた。私がタクシーで帰宅することは極めて少なかったが、私が見聞した状況を含めて問題を考えてみたい。

  

 当時の状況と現状がどこまで共通しているのかは分からない。私なりに感じたことを記述しておく。タクシーチケットを使うのは主にキャリア職員だった。たしかに、遅くまで仕事をする部署は多かったが、問題もあった。

  

 若手職員の残業代は全体の予算金額の制約があるために比例按分されていた。比例按分の根拠に用いられていたのが、退庁時刻記載表だった。タイムカード管理ではなく、ノートに本人が記載する簡便なものだったが、残業代の算出根拠がノート記載の退庁時刻とされていたために、どうしても退庁時刻を遅く記載しようとのインセンティブが働いてしまっていた。また、役所に遅くまでいること自体が、一種の義務であるような空気も支配していた。

 その結果、夕刻5時を過ぎて、各種会合などに出席したのちに、いったん役所に戻る職員が圧倒的に多かった。宴会などが終了した後に役所に帰る官僚を見て、一般の人々は仕事熱心だと思ってしまうことが多いが、その理由が残業代の確保だったり、タクシーでの帰宅であったりすることも多いのが実態である。もちろん、仕事が残っている場合もないわけではない。キャリアでない職員はそれでも電車のある時刻に退庁することが多かった。しかし、キャリア職員のなかには帰宅のほとんどにタクシーを使用する者もいた。

  

 キャリアでない職員の登庁時刻は正規の始業時刻だが、キャリア職員の登庁時刻はほとんどが午前10時前後であった。部署によっては職員がもっと早く登庁するところもあったかも知れないが、多くの部署で上記の勤務状況が実態であったと思う。

 電車がなくなる深夜にタクシーで帰り、朝10時に登庁する勤務スタイルは、生活のリズムの面でも経費の面でも合理的でないと思う。予算審議の時期は、翌日の国会での質問事項が明らかになるのが夕刻以降にずれ込み、深夜に想定問答が作成され、さらに文書課が総括して政府答弁案を確定するまで待機しなければならないから当該部署では深夜勤務が強制されるが、そのような事情がないのに深夜まで職員が役所に居残るケースが多く、役所のなかで酒盛りをしている部署もあった。

  

 タクシー券は各部署に無制限に配分されているわけではないが、特別会計を所管している部署ではタクシー券が潤沢に用意されていたようだった。朝、一般企業と同様の時間帯に始業し、昼間の時間帯に集中的に仕事をこなし、夜電車が走っている時間帯に退庁する勤務体系に改めることは十分に可能だと思う。その方が国民負担も少なく、職員も健康的な生活スタイルを享受できるはずだ。官僚は昼間も集中的に仕事をし、しかも深夜まで激務をこなしていると思われがちだが、実情はかなり違っていた。

 予算審議、法案提出、税制改正などの特殊事情が発生すれば当該部署は激務になるから、上記の事情が全面的にあてはまるわけではないが、非効率、不合理が広範に広がっているのが実情だった。

  

 タクシー代は国民の税金から賄われている。業務の事情でやむをえずタクシーを利用するのなら、その費用を税金から捻出することは正当だが、現在支出されているタクシー代の大半は、勤務慣行の改変によって削減できると思われる。

  

 障害者自立支援法、後期高齢者医療制度、高齢者や母子世帯への生活保護費圧縮など、本当に財政支出を必要とする人々に対する政府支出が冷酷に切り込まれている。人口構成の高齢化に伴って、社会保障財政が深刻な状況に直面することは十分に理解できる。国民負担の増大は将来的には避けて通れないと思う。

 しかし、国民に負担増加を求めるなら、まずは官の部門の無駄を排除することが先決である。官の無駄の中心は天下り利権であり、天下り利権の根絶がどうしても必要だと思うが、それ以上の問題が、官僚部門が国民の幸福をまったく考慮せずに官僚部門の利害ばかりを考える思考回路にあると思う。 

  

 中央官庁に勤務するキャリア職員のなかには、すべての帰宅に役所のタクシーチケットを利用しているケースもあると思われる。社会保障支出を切り込み、増税や社会保障負担の増加などで、国民負担を増大させる前に、官僚部門の膨大な無駄を排除することが先決である。

  

  

 こうしたなかで、後期高齢者医療制度導入に伴う高齢者の負担増減に関する政府の調査結果が報告された。民主党、共産党、社会民主党、国民新党の野党4党は、参議院で後期高齢者医療制度を廃止する法案を可決する見通しである。政府試算は制度存続を主張する政府が、野党に対抗するために提出したものである。

  

 後期高齢者医療制度の問題を3点指摘しておく。

   

 第1は、高齢の国民を「後期高齢者」として切り分けたことだ。罹患率の高い高齢者だけで構成される医療制度を構築し、制度を運営する経常経費の1割を高齢者に負担させることになれば、高齢者の負担金額が絶対額として激増することは目に見えている。負担には限界があるから、当然医療水準を切り詰める結果がもたらされることになる。終末期医療についての高齢者本人の意思を確認すると国から報酬が支払われる制度にも、この政府の狙いが如実に表れている。高齢者を敬い、高齢者の尊厳を重視する姿勢が完全に欠落している。「姥捨て山制度」との批判は正鵠を射ている。

  

 第2は、第1の点と重なるが、高齢者の保険料負担増大速度が非高齢者の保険料負担増大速度をはるかに上回ると試算されていることだ。この点は民主党の長妻昭議員が繰り返し訴えている。厚生労働省が示している試算によれば、2015年時点での高齢者の保険料増加率が非高齢者の負担料増加率の約2倍に達するのだ。高齢者に過大な負担を強いると同時に、必要な医療が大幅に切り込まれることは火を見るより明らかである。また、高齢者は制度を維持するための拠出金以外に窓口での負担を負うのである。罹患率の高い高齢者の負担は激烈なものになる。「高齢者いじめ」としか言いようがない。

  

 第3は、新制度と現行制度を比較すると「7割の高齢者の負担が減少する」との政府説明が誤解を生じさせかねないことだ。6月8日の沖縄県議会選を控えて、政府が試算根拠の詳細を十分に示さずに「7割が負担減少」のコピーだけを流布しているとすれば極めて悪質だ。

   

 この問題点を3つ指摘しておく。①まず、政府が「7割が負担減少」と言うからには、詳細な積算根拠が提示されなければならない。政府が選挙に際して虚偽を述べた実例が存在しているだけに、詳細な根拠の示されない試算結果を鵜呑みにするわけにはいかない。

 ②後期高齢者に該当する人口は約1300万人だが、そのうち約200万人はこれまで所属する世帯の被扶養家族として、保険料負担を課されていなかった。この200万人の負担は確実に増大する。この200万人を含めると「7割の高齢者の負担が減少」が「55%」に急低下することが判明している。新制度での負担を論じる際にこの200万人を含めていないのは、意図的な情報操作と言われてもやむをえまい。

   

 ③新たな制度における負担水準は、新たな制度の定常状態での負担水準で計算しなければ意味がないことだ。テレビでよく見られる「歴史雑誌シリーズ創刊」などの広告では、1冊700円の価格が「創刊号だけ200円」などというケースがある。新築賃貸住宅の賃料が「当初2ヵ月は無料」などのキャンペーンも見かける。住宅ローンの返済が当初の5年間は少額であるなどの事例も、日本での「ゆとりローン」、米国での「サブプライムローン」などで存在する。

   

 制度間の比較は、定常状態での比較でなければ意味がない。「激変緩和措置」や政府の見直し案などの影響で当初のみ負担が少ない場合、この低水準の負担と旧制度を比較して「負担が減少する」などと表現するのはミスリーディングである。仏を装った制度発足当初の姿が、時間の経過とともに鬼の形相に変化するのでは困るのだ。

  

 積算根拠の詳細が示され、新たに負担が発生する200万人を含み、当初の激変緩和措置を除いた定常状態での負担金額について、旧制度と比較した数値が明らかにされなければ、論議は成り立ちようがない。野党は詳細な数値を政府に求めるべきで、政府は速やかにすべてを公開する責務を負っている。仮に新制度での高齢者の負担が当初は低下するとしても、中期的に高齢者の負担が突出して拡大するなら、本質的な問題は解消しない。制度を白紙に戻して中期的な制度設計を再構築する必要がある。

   

   

 後期高齢者医療制度をいったん白紙に戻し、医療制度改革を抜本的に再検討するべきだ。野党の後期高齢者医療制度廃止の主張は筋が通っている。福田政権が直近の有権者の意思を反映している参議院の決定を、3分の2条項を用いた3たびの衆議院での再議決に引き続いて否定、無視するなら、参議院がその行為を問責決議可決で糾弾しても、いささかの反論の余地もないはずだ。その場合には、福田政権が直ちに総辞職ないし解散総選挙の決定を下すべきである。それが憲政の常道である。

  

  

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