カテゴリー「サブプライム危機・金融行政」の12件の記事

2011年9月25日 (日)

世界金融危機に処方箋を示せなかったG20会合

G20財務相・中央銀行総裁会議は9月22日、金融市場安定を目的にした共同声明を採択して閉幕したが、具体策が乏しい。
 
 共同声明では、
「銀行システムと金融市場の安定を保つために必要なすべての行動をとる」
ことが盛り込まれたが、問題は、
「銀行システムと金融市場の安定を保つために」
何が必要であるかが明らかにされていないことだ。
 
 意識不明の重病患者を前にして、医師団が会議して、
「患者の生命を守り、健康を回復するために必要なすべての行動を取る」
ことを決めながら、具体的に、何をすれば患者の生命を守り、健康を回復できるのかが分からない状態と同じだ。
 
 中央銀行が必要に応じて流動性を供給することが提示されたが、具体策が示されたのはこれ位のものだ。
 
「ユーロ圏は10月の次回会合までに、欧州金融安定基金〈EFSF〉の柔軟性を高める」
ことも盛り込まれたが、これも具体策が欠けている。
 
 さらに極めつけは、
「財政健全化と成長の確保を確認」
だ。
 
 世界経済は2012年に向けて厚い暗雲に覆われている。経済活動の停滞が長引き、2012年に向けて、さらに停滞感が強まる恐れが高まっていることが問題だが、現代経済の大きな特徴として、実物経済以上に金融経済の変動の影響が拡大していることを見落とせない。
 
 日本では1980年代後半にバブル経済を経験し、その後、バブルが崩壊し、20年以上に及ぶ経済停滞が持続してしまった。これも、金融市場の激動が主たる原因になって発生した経済全体の停滞現象であった。
 
 2008-2009年にかけて、世界の金融市場を吹き荒れたサブプライム金融危機は、日本が経験したバブル崩壊現象と類似はしたが、その規模、マグニチュードがかけ離れたものであった。
 
 サブプライム危機の嵐がまだ完全には吹きやまぬなかで、今回の不安定性がクローズアップされている。
 
 経済問題にいかにも暗いと見られる安住淳財務相が、今回の欧州政府債務危機について、
「2008年のリーマン・ショックよりも深刻度が増している」
と述べたと伝えられているが、この表現そのものに、安住氏が本質を理解していない現実が示されている。
 
 1992年から2000年にかけて、クリントン政権は米国経済を見事に浮上させたが、クリントン政権は優れたエコノミストを政権内部に取り込んでいた。クリントン政権はS&Lの経営破たんの広がりに伴う金融危機を克服し、巨額の財政赤字を巨額の財政黒字に転換させることに成功した。
 
 経済問題に対処するためには、優れたエコノミスト=経済学者が必要だが、現在の主要国経済政策に積極的に関与する優れたエコノミストが見当たらない。
 
 日米欧が道を踏み外し、「けものみち」に迷い込んでいるように見える。経済問題を正しく把握し、適正な処方箋を提示しなければ、治る患者も治らない。世界経済が重病を患っていることははっきりしているが、医師団会議を開いているメンバーが「やぶ」ばかりでは、患者の命が持たなくなるかも知れぬ。
 
 主要国が集まって会議を開いたからと言って、適正な処方箋が示されるとは限らない。優秀な頭脳が集まってこそ、会議は意味を持つが、今回のG20は単なる時間の浪費にしか見えない。
 
 ・・・・・  
   
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2009年5月26日 (火)

内外経済金融に残存する三つの重大リスク

諸事情があり、『金利・為替・株価特報091号』の発行日が本日5月26日になった。『特報』ご購読の皆様には、ご不便をおかけしたことをお詫び申し上げたい。

日本の1-3月期GDP成長率がマイナス15.2%を記録した。2四半期連続のマイナス成長だ。設備投資と輸出が激減したことが大きく響いている。戦後最悪の不況である。

それでも、失業、倒産に直面する国民は比率にすれば少数派である。経済が大不況に陥って苦しみに直面するのは、経済的な弱者である。昨年末に大きく報道された「年越し派遣村」はその象徴だった。

高齢者、障害者、一人親世帯、非正規労働者、生活困窮世帯、などが、経済が悪化するときのしわ寄せを最も強く受ける。

だが、麻生政権にそのような国民の生活を慮(おもんぱか)る視点は存在しない。彼らが考えるのは、いかにして権力を維持するか。それだけである。麻生首相の祖父である吉田茂元首相も、権謀術数(けんぼうじゅっすう)の人物だったようだ。

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名古屋大大学院教授の春名幹男氏の著書『秘密のファイル-CIAの対日工作』には、戦争加担者としてパージリストに載せられた吉田茂氏がどのような手段を用いてパージを回避したかが詳細に記述されている。

選挙に勝利して首相就任を目前にした鳩山一郎氏が、突然公職追放となり、総理の座を掴(つか)み損(そこ)ね、結果として吉田茂氏が首相の座を手中にした事実も記されている。吉田氏は鳩山一郎氏の危機を知りながら、鳩山氏のパージ回避にまったく動こうとしなかったようだ。

いまを読み解く手掛かりとして、歴史を振り返ることは有益である。2009年の総選挙は、政権交代の是非をめぐって麻生氏と鳩山氏との間で争われる。

このなかで、日本の政治を理解する上で見落とせない存在が「CIA」である。メディアによる情報操作とCIAの関わりを、いずれ明らかにしなければならない。また、核持ち込みに関する日米密約などの歴史的事実を白日の下に晒(さら)し、歴史を再検証しなければならない。

日本経済は深刻な状況にあるが、麻生首相は総選挙での勝利、権力の維持しか眼中にない。そうでなければ13.9兆円もの巨大な補正予算を「バラマキ」だけに充当することはないだろう。

58基金に4.6兆円の国費が投入され、補正予算全体の2割にあたる2.9兆円が天下り機関に注がれるエコポイント、エコカー支援策は、経団連企業の在庫一掃セール支援策であって、環境対策ではない大企業と官僚に対する利益供与がてんこ盛りである一方、一般国民には、一回限りの定額給付金と子育て支援金しか支払われない。

障害者自立支援法、後期高齢者医療制度、介護保険制度、非正規労働者のセーフティネット、生活保護の母子世帯加算、老齢加算、など、根底に広がる問題には手をつけようともしない。

麻生政権は総選挙の日程を検討している。西松事件は6月19日に初公判が開かれる。西松建設幹部は起訴事実を認めており、初公判での検察側冒頭陳述は検察側主張を一方的に展開することになる。

小沢氏秘書の事件は西松建設幹部の事件と別に取り扱われるため、小沢氏サイドの反論を示す場が存在しない。こうした公判までもが政治利用される。元地検次席検事である郷原信郎名城大教授が、不公正な期日設定を大批判している。

麻生政権は大不況を取り繕(つくろ)う姑息(こそく)な方法を検討していると考えられる。日本のGDP成長率が4-6月期に小幅ながらプラスに転じる可能性が高く、これを政権の成果としてアピールしようというのだ。

4-6月期GDPは8月中旬に発表される。8月30日に投票日を設定して、投票日直前にGDP統計を発表し、政策の成功をアピールしようというのである。そのために、いまから、景気底入れを強調するマスメディア報道が創作され始めている。

戦後最悪の不況で日本経済は「未曾有(みぞうゆう)」の苦境に直面しているが、本当の苦しみに見舞われている国民は比率では高くない。選挙のことだけ考えるなら、絶対数は問題でなくなる。比率が重要なのだ。

多数の国民が深刻な苦しみのなかに置かれているのに、その人々を救済する行動が取られない。多数を占める一般国民に、「一回限りの定額給付金」、「一回限りの子育て支援金」をバラ撒き、「高速道路1000円」と「エコポイント、エコカー」の目くらまし政策で投票誘導が図られる。

大資本と官僚には大盤振る舞いの政策を提示し、そのツケを一般国民に対する消費税大増税で賄(まかな)おうというのだ。

しかし、こんな茶番劇が通用するはずがない。通用させてはいけない。

日米株価は3月9日前後の最安値から約30%反発し、金融危機に対する警戒感が大幅に後退した。麻生政権は日本経済がこのまま順調に浮上するとの前提に立っているように見える。

与謝野馨経財相は、5月23日のNHK番組で、「最悪期は過ぎた」、「少し上がってくる局面になったのではないか」と述べた。楽観論に立っていることが分かる。

『金利・為替・株価特報091号』に詳述したが、リスクは決して小さくないと思われる。

いまから8か月前、昨年9月15日に米国投資銀行リーマン・ブラザーズが破たんした。日本経済は2008年夏からつるべ落としに大不況に直進していた。このとき与謝野馨氏は次のように述べた。

「日本経済は揺るぎもしない。蚊に刺された程度だ。」

ところが日本経済は現実に、
あっという間に「みぞうゆうの不況」に陥り、
さらに、「100年に一度の金融不況」に陥った、
と麻生首相が述べる状況に移行した。

与謝野氏から「最悪期は過ぎた、少し上がってくる局面になった」とお墨付きを得ると、逆に心配になる経済人が多いと思われる。

詳しくは『金利・為替・株価特報091号』をご高覧賜りたいが、見落とせぬリスクが存在する。NY株価は反発したが、長期下落トレンドからまだ抜け出したとは言えない状況にある。

①長期金利上昇リスク
②米国財政赤字激増を背景とするドル暴落リスク
③円高リスク

への警戒を怠れない。

投票日を先送りするしかないと考える麻生首相の判断が大きな間違いになる可能性がある。

政治は困難な状況に直面した人々のために存在する。政治の力によって例外なくすべての人を支えることが、政治の果たすべき最大の使命である。この基本を考えもせず、ただ権力の維持だけを優先する麻生政権には大きな試練が待ち受けるのではないか。

内外経済金融を覆い尽くす濃い霧が消え去るには、なお時間を要すると思われる。

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2009年1月 8日 (木)

津波第二波が「ドル暴落」を生み出すリスク

米国の2009会計年度(2008年10月~2009年9月)の財政赤字が激増する。米国議会予算局(CBO)は1月7日、米国の2009会計年度の財政赤字が1.2兆ドル=約110兆円に達する見通しを発表した。オバマ米国次期大統領は1月6日、記者団に対して米国の財政赤字が仮に景気が回復しても、数年間は1兆ドル規模の水準で推移する見通しを示した。

米国の08会計年度の財政赤字は4548億ドルで、09会計年度は一気に2倍以上に拡大する。09会計年度の財政赤字のGDP比は8.3%に達し、過去最悪を更新する。

CBOが7日に発表した財政赤字見通しは、オバマ次期米大統領が準備中の景気対策を反映していない。実際の赤字額はさらに膨らむ。

オバマ次期大統領は2年間で7750億ドル(約72兆円)規模の景気対策を策定しており、09年度の財政赤字は1.5-1.6兆ドル(約150兆円)に達することになる。

問題はこの赤字をどのようにファイナンスするかだ。米国は2007年に7300億ドルの経常収支赤字を計上している。米国国内の個人、法人、政府を合算して7300億ドルの赤字を計上していることを意味する。09年度は財政部門の赤字が4500億ドルから一気に1.5兆ドルに拡大する。

その大半を海外からの資本流入に頼らなければならないだろう。FRBが不足する財政赤字をマネーの供給でファイナンスするなら、過剰なドル供給はドルの信認を揺るがすことになる。

二つの大きな問題が浮上する。

第一は、政府部門の巨大な資金調達が米国の長期金利を急激に引き上げるリスクを発生させること。
 第二は、米国の巨大な財政赤字の発生がドルの先行き下落期待を急激に高めること。

米国の10年国債利回りは昨年6月に5.3%の水準にあった。原油価格が1バレル=147ドルに達する過程で、FRBによる金利引き上げ観測が強まったためだ。

ところが、その後、原油価格が急落し、金融危機深刻化を背景にFRBが大幅利下げに動き、同時に景気悪化が加速したため、米国10年国債利回りは2.0%にまで低下した。

為替レートは2000年から2008年央まで、米ドルが日本円以外の主要通貨に対して暴落していたため、昨年央以降、米ドルは日本円以外の主要通貨に対して反動の上昇を示した。

しかし、今後、米ドルの信認が低下し、米国に対する資本流入が縮小すると、米国ではドル安進行の下で長期金利上昇が発生する可能性がある。景気後退下の長期金利上昇は米国経済にさらに下方圧力を加えることになるため、米国株価はさらに下落圧力を受けることになる。

これが「ドル暴落シナリオ」であり、米国金融市場は株安・債券安・通貨安の「トリプル安」に直面することになる。

日本は小泉竹中政治の巨大な「負の遺産」の処理に苦闘することになる。竹中平蔵氏が金融相に就任して以降、日本政府は巨額のドル買い為替介入を実施して、現在、日本の外貨準備残高は1兆ドルに達している。

ドルの下落は日本の外貨準備の時価評価の減少を意味する。1ドル=95円時点で、すでに外貨準備の為替差損は24兆円に達したことが明らかにされている。財政が逼迫しているなかで、24兆円の損失が日本国民に対するどれだけの背任行為であるか。計り知れないものがある。

2005年から2008年にかけてのドル堅調時に、日本政府はドル資産残高を大幅に圧縮しておくべきだった。為替損失を計上せずに、外貨準備残高を20億ドル程度に圧縮することは十分に可能だった。

ところが、小泉政権は米国政府の要請に基づき、保有するドル資産を売却しない約束をした可能性がある。もし、約束の存在が事実だとすれば、許されざる売国行為である。

1月5日付日本経済新聞は、中国の社会科学院世界経済政治研究所の余永定所長が1月5日付の中国紙『中国証券報』で、世界最大の外貨準備の運用について「米国債をある程度売って、ユーロや円の資産を増やすべきだ」と語ったことを伝えている。中国政府は昨年もGSE(政府支援住宅金融公社)債の信用リスクが高まる局面で、GSE債券を積極的に売却した。外貨準備の運用に際しては、中国の国益を優先して対応していることがよく分かる。

日本の外貨準備の成り立ちが一般によく理解されていないので、簡単に解説する。日本政府は急激なドル安=円高局面で、ドル下落=円上昇を抑制するために、外国為替市場でドルを購入することがある。これが「ドル買い介入」である。ドルを買うのは日本政府=財務省で、その買い付け資金は、全額日銀からの借金である。政府が「外国為替証券」と呼ばれる政府短期証券(国債)を発行して、その全額を日銀が引き受ける。

これまでの累計で、政府は1兆ドルの外貨準備を保有している。ところが、ドルが下落したため、ドルを購入した費用と保有するドルの時価総額の差額において24兆円の損失が生まれているのだ。

この損失は、日本国民の負担になる。24兆円もの為替損失を生み出した小泉竹中政治に財政再建を語る資格はまったくない。外為会計の損失発生については、国会で責任を厳しく追及しなければならない。

これだけ損失を重ねているなかで、麻生政権は11月15日の金融サミットで、さらに10兆円もの資金を金融危機対策のために外貨準備から拠出することを約束してきてしまった。麻生首相はこのことを得意げに語るが、言語道断だ。

外貨準備は麻生首相のポケットマネーでない。日本国憲法第83条、第85条は、財政処理および国費支出について国会の議決を必要とすることを定めている。ポケットマネー感覚の麻生首相の外為特別会計資金の取り扱いは憲法違反である。

米国は日本政府による1兆ドルの外貨準備の売却に対して、強いプレッシャーをかけてくる可能性が高い。しかし、日本政府は日本の国益を基準に判断しなければならない。1兆ドルの損失は日本の死活問題に直結する。

日本経済の悪化のスピードは想像を超えている。鉱工業生産指数は昨年7月の108.3から11月の94.0に急落している。12月、1月の予測指数はそれぞれ、8.0%、2.1%の低下を示している。予測指数に基づくと、本年1月の生産指数は84.7まで落ちることになる。昨年7月比21.8%の減少になる。まさに「みぞうゆう」の生産減退である。

連動して企業収益が激減する。失業率が急上昇し、家計所得も急減する。不況は2009年に本番を迎えることになる。

米国金融市場は、昨年9月のリーマン・ショック以来の諸懸案に対する緊急対応が出揃って、小康状態を回復している。シティグループ、GSE、ビッグスリー、AIGなどへの対応が一巡したためだ。しかし、問題の根源にある不動産価格下落は勢いを低下させていない。財政赤字の急拡大とファイナンスの困難、その際の米国長期金利上昇とドル下落圧力の試練が表面化するのはこれからである。

金融市場の展望と投資戦略については『金利・為替・株価特報082号』に執筆する。米国12月雇用統計の発表が1月9日にずれ込んだため、082号は1月10日発行になる。ご了承賜りたい。

グリーンスパン前FRB議長が「100年に一度のTSUNAMI」と表現したことを重く受け止める必要がある。「津波」の重要な特性のひとつは、津波が「複数回」、時には「10回以上」押し寄せることだ。

スマトラ沖地震の際には、津波が押し寄せる前の引き潮につられて沖に向かった人々が帰らぬ人となった。「デリバティブ金融崩壊津波」を軽く見ることはできない。

麻生政権の遅すぎる対応が日本経済の悪化を加速させている。総選挙を実施して本格政権を早期に樹立することが、最優先されるべき不況対策である。

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2008年11月16日 (日)

成果乏しい20ヵ国金融危機サミット

11月14、15日にワシントンで開かれた20ヵ国による緊急金融危機サミットは、金融市場の改革を柱にした首脳宣言を発表して閉幕した。

首脳宣言が盛り込んだ主要な論点は以下の三点である。第一は景気支持のために各国が今後も財政政策発動を含む政策措置をとること。第二は危機の再発防止に向けて金融機関、金融商品などに対する規制を拡大すること。第三は資金力拡充を含めてIMFなどの機能を強化することである。

日本政府はIMFの機能強化のために10兆円の資金を拠出する方針を示したが、これまで論じてきたように、日本の外貨準備資金の取り扱いが国会の監視外に置かれている根本的な問題が存在しており、国会の同意を得ていない政府の独断による国際機関への資金拠出に対して国内で論議が生じる可能性がある。

米国のサブプライム金融危機の本質は、野放図に拡大したデリバティブ金融がもたらした信用バブルの崩壊である。金融市場がカジノと化した背景に市場原理主義の蔓延がある。市場原理に絶対不可侵の信頼を与えたことが、金融機関による際限のない利益拡大行動と、リスク負担能力をはるかに超えた金融行動を助長した。サブプライム金融危機は市場原理主義がもたらした必然の帰着点だった。

市場原理主義を見直し、金融市場、金融機関に対する規制を強化すべきとの主張は正当性を備えている。市場原理主義を基本にすえて、金融危機を発生させた当事者の米国政府はその責任を率直に認めず、規制の強化に抵抗しているが、主張の説得力は消滅している。

麻生首相は意見対立する米国と欧米の橋渡し役を演じると言うが、米国に対して言うべきことを言えない対米隷属の実態を露(あら)わにしただけだった。日本国民が小泉政権以来の市場原理主義経済政策でかつてない苦しみに直面するなかで、国会の同意も得ないで10兆円の資金拠出を約束したことに対する批判も急激に高まると考えられる。

今回の金融危機サミットでは事前に予想された討議内容以上の提案はまったく示されなかった。上述した三点の結論はすべて事前に予想されたものである。20ヵ国もの国家の首脳が集結したにもかかわらず、具体的な新提案は示されなかった。

米国政府はすでに1兆ドル(100兆円)の公的資金投入方針を提示しているが、金融市場の安定感はまったく確保されていない。ビッグスリーの経営も危機に直面しており、米国経済の混迷の根は極めて深い。

日経平均株価の下落が進行すると、日本の金融機関の財務状況が劇的に悪化する。国際機関に10兆円もの資金支援する余裕など存在しないのが現状である。麻生政権は二次にわたる景気対策を決定しているが、補正予算の措置が完了したのは第一次景気対策だけである。補正予算の規模は1.8兆円で、GDP比0.4%にも満たない。

第二次景気対策を裏打ちする5兆円規模の補正予算については、予算案の国会提出が来年に先送りされる可能性が高まっている。2009年初頭に向けて、日本経済の混迷が急激に強まる可能性が高い。「政局より政策」と発言するなら、まず臨時国会の会期を延長し、今国会会期中に補正予算を成立させることが最低限求められる。

小泉政権以来の市場原理主義経済政策によって、非正規雇用が激増し、社会保障政策が徹底的に切り込まれた。その結果、日本は世界でも有数の格差社会に変質してしまった。定額給付金はホームレスの人々や非正規雇用労働者のなかで住民登録を行っていない国民には支給されないと見込まれる。本当に困窮する国民に手を差し伸べない政策に「生活支援」の名は値しない。

雇用の安定、医療不安の除去、教育機会の提供、経済的弱者の支援が何よりも優先されるべき施策だ。衆議院の解散総選挙が実施されれば、抜本的な政策が提示され、国民が政策方針を選択できる。しかし、解散総選挙が先送りされ、政策決定も先送りされたのでは、国民は不況深刻化のなかで見殺しにされるだけだ。

10兆円もの国民資金が国会の同意を得ずに政府の独断で海外に拠出される事実、「政局より政策」と言いながら、補正予算審議を来年に先送りする政策姿勢。このような不正を押し通している麻生政権に対して、一般国民と野党が糾弾ののろしを上げなければ、なし崩しで不条理がまかり通る。

総選挙を先送りするなら、補正予算を臨時国会で成立させるべきだ。補正予算を来年に先送りするなら、年内に総選挙を実施するべきだ。国民に責任を負う政府は、筋の通らない党利党略=政局優先の行動をとるべきでない。

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2008年11月 6日 (木)

日米株価反落と金融機能強化法審議への監視

10月24日に発行した『金利・為替・株価特報2008年10月24日号』(077号)タイトルを「木枯らし前の小春日和に惑わされるな」とし、第1節「急落した日米株価」に次のように記述した。

「2008年7-9月期の金融機関決算が発表されて、株価は急落した。各国政策当局は10月10日から11月15日にかけて、あらゆる政策努力を示すと考えられる。巨額の公的資金も用意され、使われるだろう。金利引き下げと財政政策発動も迅速に決定されると考えられる。

10月下旬から12月初旬にかけて、金融市場は小康状態を取り戻す可能性がある。世界の株価が10-15%程度、反発することもあり得ると考える。

しかし、中期的な楽観は許されないと思う。季節で言えば、厳冬はこれから到来するのではないか。政策当局の対応により、一時的な安定がもたらされても、春が到来するのではないと思う。小春日和とは、木枯らしが吹く前に、春でも来たかのような穏やかな天候が訪れることを言う。小春日和につられて、冬仕度を中止すると、厳冬の到来に対応できない。先行き警戒感を緩めぬことが求められる。」

NYダウは10月27日に8175ドルまで下落し、2003年4月1日以来、5年7ヵ月ぶりの安値を記録した。日経平均株価は10月27日に7162円と1982年10月7日以来、26年ぶりの安値を記録した。

10月29日に日銀の利下げ観測が報道され、内外株式市場で株価が反発した。NYダウは11月4日に9625ドルに反発、日経平均株価は11月5日に9521円に反発した。安値からの上昇率はNYダウが17.7%、日経平均株価が32.9%に達した。

しかし、11月5日、NYダウは前日比486ドル安の9139ドルに、11月6日、日経平均株価は前日比622円安の8899円に反落した。急ピッチの株価反発に対する警戒感が強まったことが背景であると考えられる。

11月14、15日に米国ワシントンで20ヵ国による首脳会議が開催される。首脳会議に先行して13日には財務相会議が開催されることになった。首脳会議は米国のブッシュ大統領が主催者であるが、米国では11月4日の選挙でオバマ民主党上院議員が次期大統領に選出されることが確実になった。首脳会議にオバマ次期大統領が出席するかどうかがひとつの焦点だが、現段階では流動的である。

11月7日には10月米国雇用統計が発表される。米国経済は2008年7-9月期にマイナス成長に転落したが、2009年1-3月期までマイナス成長が持続するとの見通しが有力である。

デリバティブ金融商品の一類型であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場だけでその規模は60兆ドル(約6000兆円)に達しており、デリバティブ金融バブル崩壊に伴う金融機関損失が最終的にどこまで拡大するかは、現段階で特定されていない。

米国政府は10月3日に成立した金融安定化法によって7000億ドルの公的資金枠を確保し、そのなかの2500億ドルを資本増強に充当することを決定した。また、政府系住宅金融公社(GSE)支援に2000億ドル、保険会社AIG救済に850億ドルの公的資金を活用することをすでに明らかにしている。

合計1兆ドルを超す公的資金枠を確保して金融危機に対応する姿勢が示されているが、金融市場の不安心理は消滅していない。

日本でも金融機関の資本増強策として、期限の切れた金融機能強化法を改正する法案が国会で審議されているが、金融機関の責任追及と金融システムの安定確保とのバランス確保についての国会での同意が成立していない。

日本の場合、民主党を中心とする野党は、農林中金と新銀行東京に対する監視を強化することを強く求めている。農林中金はJAバンク(旧農協)、各都道府県の信用農業協同組合連合会(信連)を下部組織に持つ系統金融機関の中央組織であり、歴代理事長に農水省事務次官経験者が就任する官民癒着を象徴する金融機関である。また、自民党の有力な支援組織としての性格も備えている。

農林中金は系統金融機関から預託された資金の多くを内外の有価証券で運用する代表的な機関投資家のひとつである。1992、93年に問題になった住宅金融専門会社(住専)の不良債権処理では、6850億円の公的資金を農林系金融機関に投入することが大きな政治問題になった。

米国の金融危機で焦点となっている政府系住宅金融公社(GSE)のファニーメイとフレディマックが発行、保証する債券は5.9兆ドルに達しており、米国財務省証券発行残高を上回っている。米国金融危機の中核がこのGSE経営危機にあると言っても過言ではない。

農林中金は日本で最大のGSE債券保有金融機関である。2008年6月段階で保有債券の額面は5.3兆円に達している。11月6日の日経新聞報道によると、農林中金は2009年3月期通期決算の経常利益予想を当初の3500億円から1000億円程度に引き下げるもようである。また、2009年9月中間期の経常利益は200億円程度に激減する見通しである。

農林中金は米国の金融危機が表面化した当初から、日本の金融機関でもっとも大きな打撃を受けることが予想されてきた金融機関である。ハイリスク・ハイリターンを追求する投資行動を展開し、その結果として巨額損失が発生する場合、その責任は当事者である金融機関自身に帰せられるべきであることは当然だ。

自民党は総選挙で有利な結果を得るために農林系金融機関への責任追及なき公的資金投入をごり押ししようとしていると見られるが、こうした公的資金投入は金融機能強化法の基本目的から逸脱しており、まったく正当性を有していない。

また、新銀行東京については、設立当初より、政治家による融資斡旋の不透明性が指摘されており、現在捜査が行われている詐欺事件に象徴される、不祥事がまだ多く残されているとの見方も強い。

先の都議会では新銀行東京の損失を穴埋めする追加出資が与党の賛成多数で強行されたが、さらに損失が拡大している。新銀行東京の経営危機は米国の金融危機とは独立した重要な問題であり、金融危機対応に名を借りた公的資金投入が認められるはずがない。

農林中金に対する公的資金投入について、国会の事前承認を求めること、新銀行東京を金融機能強化法の対象から外す、との野党の要求は当然であり、政党である。

自公政権は11月6日に法案を衆議院で通過させたが、参議院では野党が主導権を握り、法案が修正される見通しである。麻生政権が金融システム安定と金融機関の自己責任の両者を重要視するなら、参議院で修正される法律案を承認するべきだ。

麻生政権が金融危機への対応を総選挙に向けての利益誘導策に悪用するとの姑息な姿勢に固執して、野党が求める正当な法案修正を拒否するなら、11月14、15日の首脳会議までに、日本の資本増強政策を確定することは困難になる。

金融システムの安定確保と、適正な責任追及の両立は、今回の世界規模の金融危機を打開するうえで、どうしても解決しなければならない関門である。欧米でも金融危機の切迫感が強まり、責任追及を伴わない公的資金活用が横行している傾向が強いが、最終的には、両者が満たされる問題処理スキームが示されなければ、危機対応策は立ち往生することになるだろう。

各国政策当局は財政・金融政策を総動員して世界経済の悪化緩和に注力することになる。こうしたマクロ経済政策と公的資金を活用した金融システム安定化策の全面的な発動により、危機は回避されることになると考えられるが、本格的な公的資金活用が認められるためには、責任ある当事者の責任追及が不可欠でなる。この問題が現段階では解消されていない。

日本政府は首脳会議で日本の外貨準備の流用を求められる可能性があるが、安易な協力を約束することは許されない。外貨準備の源泉が国民の税金であるにもかかわらず、現状では外貨準備に対する国会の監視が十分に行き届いていない。政府・財務省の一存で外貨準備の取り扱いを決定する法的正当性は存在しない。政府・財務省の独断による外貨準備の流用は財政法に違反する行動だと考えられる。

今後の金利・為替・株価の見通しについては、『金利・為替・株価特報2008年11月8日号』に記述する。内外株式市場は12月にかけて安値圏内でのもみ合いを示す可能性が高いが、2009年に向けての中期的な展望を的確に保持することが重要である。

金融機能強化法改正論議は、やや専門性の高い法案審議だが、金融問題処理における極めて重要な問題を内包している。与党が数の力によって、不正と欺瞞に満ちた法案成立を強行することを断固阻止しなければならない。

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2008年11月 4日 (火)

金融機能強化法改正論議を厳重に監視しよう

金融機関に公的資金を資本注入する金融機能強化法改正案が11月5日にも衆議院の財務金融委員会で採決され、与党多数で可決される見通しが広がっている。民主党は農林中金に関して資本注入前の国会承認を要求、「新銀行東京」については、改正法の対象外とするよう主張したが、自民党は特定金融機関の狙い撃ちは認められないとして、法案修正を拒絶している。

9月下旬以降、本ブログをご紹介くださり、また、貴重なコメントをいただきましてありがとうございます。大変遅れましたが、一部ご紹介させていただき、お礼申し上げます。

カナダde日本語様、生き抜く力様、晴天とら日和様、チラシの裏様、BLOG版「ヘンリー・オーツの独り言」様、kobaちゃんの徒然なるままに様、飄(つむじ風)様、カイザルのものは、カイザルへ様、目からウロコの、ホンモノ探し様、植草一秀氏の事件様、株式日記と経済展望様、自公政権打倒のために集まろう様、格差階級社会をなくそう様、Japonesian Trans-Apocalypse:Trans-Modern New Platonic T ...様、サラリーマン活力再生様、『海舌』 the Sea Tongue by Kaisetsu様、タクシードライバーの資格(司法書士&社労士)挑戦日記+α様、_~山のあなたの空遠く幸い住むと人のいう~様、いつも記事をご紹介くださり、また貴重なコメントを賜り、ありがとうございます。

平和維新様、私たちは見ている様、ギャラリー酔いどれ様、新生活日記 TETSUONO様、ユナイト・ゼロ 政治・社会刷新共同体公式ブログ様、一口食べたら幸せメッセージ様、地獄少女HIROSHI@BLOG様、黄昏て爺放談様、ほねやすめ様、治療・病状日誌様、Saudadeな日々様、ワンチャンのつぶやき・・様、椅子は硬いほうがいい様、ラーゲリのブログ様、美容師・hideチーフのブログ様、この国の社会のバランスを維持するために様、日々思うこと様、ぐう、ちゃんの一言!!様、量子場的 女神発掘の旅様、ブーゲンビリアのきちきち日記、記事のご紹介ならびに貴重なコメントをありがとうございます。今後ともよろしくお願い申し上げます。

農林中金は自民党の有力な支持組織の一つであり、歴代理事長職は農水省事務次官経験者の天下りポストになっている。政官の癒着構造、官僚利権温存の代表事例の一つである。11月2日付記事「金融機能強化法改正での不正を許すな」に記述したように、農林中金は経営危機が表面化した米国政府系住宅金融公社(GSE)ファニーメイ、フレディマックの債券の、日本最大の保有金融機関である。

また、農林中金は各都道府県の信用農業協同組合連合会(信連)および、JAバンクを下部組織に有する系統金融機関の中央組織である。個別JAバンク、都道府県信連のいずれも、政治と密接な関わりを有している。

また、新銀行東京は石原慎太郎都知事の積極的な誘導によって設立された銀行だが、無担保無保証融資が大規模に焦げ付き、巨額損失を生み出している金融機関である。

米国発の金融危機が日本に波及し、日本の金融システムを混乱させることを回避することは重要だが、個別の経営責任に基づく財務状況の悪化を、金融機能強化法で手当てするのは筋違いである。自民党は農林中金と新銀行東京を法律から除外することに抵抗しているが、このことが、自民党が二つの金融機関に公的資金を投入して救済しようとする意向の表れであると推察することができる。

日経平均株価が9000円台を回復して、国内金融市場は混乱一服の状況を示している。個別問題を抱える、いわくつきの金融機関を金融機能強化法の対象に置き、経営責任を問うことなく公的資金を注入することを認めるべきでない。

「危機」の名に借りて、不正と欺瞞に満ちた公的資金による金融機関救済をこれ以上、認めるべきでない。

今回の金融危機は、「市場原理主義」のいかがわしさを鮮明に示している。市場原理を基軸に据える立場は、個別主体の自由な経済行動を認める一方で、結果に対する責任を当事者に負わせることを基本原則に置く。ハイリスク・ハイリターンの投資行動を実行した主体には、リスクが顕在化して投資行動で失敗した局面で、厳しく結果責任を問わなければならない。

ところが、いざ、失敗が明らかになると、慌てふためいて、政府が公的資金による尻拭いをするのでは、「自己責任原則」など存在しないのも同然だ。「市場原理主義」の底の浅さ、いい加減さが如実に示されている。

結局、「市場原理主義」は、経済強者が経済的利益を極大化するための大義名分にすぎなかったのだと考えられる。「市場原理」を盾に、利益をむさぼり、バブルを謳歌したことと引き換えに、バブル崩壊に際して本来は、結果に対する責任を当事者に負わせなければならないはずだ。

金融機能強化法改正にあたり、農林中金への公的資金投入に国会の議決を求めること、新銀行東京を法律の対象から除外すべき、との民主党の主張は、正当性を備えている。金融危機の名の下に両金融機関への資本投入をどさくさに紛れさせて実行し、金融機関の責任を隠ぺいする、あるいは、金融機関への公的資金投入を政治的に利用することを遮断すべきであるのは当然だ。

法案審議は参議院に移る。参議院では、十分な審議を行い、適正な法案修正を実行するべきである。自民党は、金融危機の下で、野党が法案成立を妨害しているとの誹謗中傷を示す可能性が高いが、与党と野党のどちらが正論を示しているのかを、国民が十分に理解できるように、論点を明確にして国民の前に示す必要がある。

金融システムの安定を確保することは重要だが、経済行動の結果に対する責任を当事者に負わせることも重要なのである。2003年のりそな銀行処理に際しては、政府はりそな銀行の株主責任を一切問わずにりそな銀行を救済した。

実行したのは、政府の経済政策を堂々と批判していた気骨ある経営者を追放し、政府の近親者を新経営陣に送り込んだことだった。りそな銀行はその後、自民党に対する融資を激増させた。

大手銀行の自民党に対する融資残高推移は以下の通りだ。

(年末値、億円、千万円以下を四捨五入)

     02  03  05

東京三菱  5   5   4

UFJ  10   9   8

みずほ  10   9   8

三井住友 10   9   8

りそな   5  24  54

合計   38  54  80

この事実は2006年12月18日付の朝日新聞朝刊1面トップで、「りそな銀行、自民党への融資残高3年で10倍」の見出しを伴ってスクープされた。記事を執筆したのは同社の鈴木啓一論説委員であると見られているが、鈴木氏は前日の12月17日に東京湾に浮かんでいるところを発見されて、「自殺」として処理されたとのことである。事実関係については、確認されていない点も残されているが、一般的にはこのように理解されている。

朝日新聞記事は、他の大手銀行が融資を圧縮する一方で、りそなだけが自民党への融資を激増させたことを指摘。また、この後3大メガバンクが自民への献金再開を準備し、これらの献金がりそな融資の穴埋めになる図式も解説された。記事がもっとも問題にしたのは、りそな銀行が事実上、自民党の私有銀行(機関銀行)化している疑いだった。

「融資」と「贈与」の実質的な線引きは難しい。日本は外貨準備で米国に100兆円の資金を提供しているが、日本政府が米国政府に米国国債を売らないと約束しているなら、100兆円は融資ではなく、贈与になってしまう。

金融機関を介在させる資金詐取が水面下に隠れていることは極めて多い。金融機関が破たんして初めて、不正融資が表面化することも多い。中小企業に対する信用保証は、不況下の中小企業支援策として大きな効果を発揮するが、巨大な資金詐取の温床になりやすい点については、十分な警戒が求められる。

「金融危機」に名を借りた、公的資金の不正流用を見逃してはならない。金融機能強化法改正案に野党が反対するのは当然である。法案審議における争点を明確にして、国民が理解できる説明を十分に示す必要がある。

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2008年11月 2日 (日)

金融機能強化法改正での不正を許すな

ブログへのアクセス禁止措置に際しましては、多くの皆様にご心配をおかけしまして、誠に申し訳なく存じます。ココログ様からのメール確認が遅れたことが、ブログ一時閉鎖の原因になりましたが、若干の補足説明をさせていただきます。

ブログへのアクセス禁止措置が取られた後で確認できた内容ですが、10月28日付のココログ様からのメールには、以下の記述がありました。

「毎日新聞社より著作権に関するご連絡をいただいた内容について、権利者の許諾を得ていない場合は速やかに該当箇所を削除いただくよう弊社より連絡させていただきましたが、あらためて確認いたしましたところ、現在も状況に変化が見受けられませんでした。

つきましては、1030日(木)正午までに、下記の項目についてご対応いただきますようお願いいたします。期限までに対応を行っていただけない場合には、弊社会員規約に基づき、やむを得ず弊社側で該当記事を削除させていただきますので、ご承知おきください。」

ところが、その後、期限日時経過とともに、突然、ブログへのアクセス禁止措置が取られ、事後的にブログを閲覧できない状況にしたとの通知がありました。

ココログ様の事前通知通りに、該当記事が削除されたのであれば大きな混乱は生じなかったはずですが、事前予告なく突然、ブログへのアクセス禁止措置が取られたために、皆様に大変なご心配をおかけしてしまうことになってしまいました。当日午後は、朝日放送で民事訴訟和解に基づく「お詫び放送」が実施されましたので、ブログへのアクセス数が急増することが予想されておりましたが、そのタイミングに合わせてブログへのアクセス禁止措置が取られたことについては遺憾に感じております。

 

世界的な金融危機深刻化を背景に、日本でも地域金融機関などへの公的資金による資本注入を可能にする金融機能強化法改正案が国会で論議されている。

民主党などの野党は、農林中央金庫(農中)および新銀行東京への資本注入に反対の意向を示している。

米国発の金融危機が拡大して政策当局による資本投入が進展している。自由主義経済の基本原則のひとつが「自己責任原則」である。自由主義経済の下では経済活動の自由を認めているが、結果に対する責任は自己で負わなければならない。

今回の金融危機は「市場原理主義」=「新自由主義」のなれの果てである。資金余剰主体から資金不足主体への資金の循環を担うべき金融が、その本分から逸脱し、金融工学の技術を活用してデリバティブと呼ばれる金融派生商品を生み出し、自己増殖的に拡大させた。杜撰(ずさん)なリスク管理の下でデリバティブの想定元本を、制御不能な規模に拡大させてしまった。

米国の不動産格は2006年6月のピークから本年8月までで、22%しか下落していない。問題とされているサブプライムローンもその残高は200兆円に満たない金額でしかない。200兆円の20%が損失になったとしても、損失額は40兆円で、経済規模との比較では、さほど大きな金額ではない。

それにもかかわらず、世界の金融市場では「大恐慌の再来」が真剣に懸念されている。米国政府はすでに100兆円以上の公的資金枠を確保した。それにもかかわらず、金融市場の安定は確保されていない

その理由は、デリバティブ金融が想定元本を幾何級数的に拡大させているためだ。欧米の金融機関は四半期決算ごとに兆円単位の損失を計上している。米国の不動産価格下落は4合目に差しかかった段階であり、2010年にかけて価格下落の持続が予想されている。金融市場の不安定性は持続することが予想される。

市場原理主義の名の下に経済のカジノ化が進展した。拡大した虚業が生み出すバブルの利益に多くの金融機関が膨大な不労所得を蓄積した。破綻したリーマン・ブラザーズ社のCEOが2000年以降に490億円もの報酬を受け取っていたのは、その氷山の一角である。

経済状況が変化してデリバティブ金融のバブルが破裂した。その影響が世界経済に金融恐慌の危機をもたらしている。金融システムが崩壊すれば、その影響は金融バブルとは無縁の一般国民にも及ぶ。したがって、金融システムの安定を確保することは重要な課題になる。

だが、このときに忘れてならないことは、守るべき対象が金融システムの安定性であって、金融機関そのものではないことだ。金融機関の責任によって生じた経営上の困難の責任は当事者である金融機関自身が負わなければならないのだ。

金融システムの安定を確保するために、公的資金投入は必要になりつつあると考えられる。しかし、公的資金は税金であり、その使用は公共の目的に限定されなければならない。金融機関に公的資金を投入する際には、適正な責任追及が不可欠なのである。

麻生政権が提案している金融機能強化法改正案では、当初、経営責任を問わない資本注入が認められていた。この点について、野党が反対するのは当然だ。与党は必要な責任を追及することに同意したが、問題はその運用である。

農林中金は農林系金融機関の中央組織であり、その系列下に各都道府県の信用農業協同組合連合会、個別農協が連なっている。これらの農林系金融機関は政治との関わりが深く、金融機関への資本注入が政治的に利用される可能性が高い。

米国の金融危機の中心に、ファニーメイ、フレディマックと呼ばれる政府系住宅金融公社(GSE)の経営危機がある。2社が発行する債券残高は2008年6月末時点で1兆6308億ドル、2社が発行、保証するMBS(住宅ローン担保証券)残高は4兆2689億ドル存在し、両者合計5兆8997億ドルは、米国財務省証券発行残高5兆2506億ドルを上回る。日本円に換算すれば、600兆円近くに達する。日本のGDPの規模を上回る。その2割強を海外投資家が保有する。

このGSE関連債券の日本での最大の保有金融機関が農林中央金庫なのだ。その保有残高は5兆5000億円に達すると見られている。一般的に日本の金融機関は米国の金融危機との関わりが欧米金融機関と比較して大きくないが、個別金融機関によっては、リスクの高い資産を大量に保有しているケースが存在する。

大和生命が破たんした際、中川昭一金融相は、大和生命は資金運用におけるリスク管理に問題があり、日本の金融機関一般の動向とは切り離して評価するべきであるとの趣旨の発言を示した。この文脈からすれば、農林中金に対しても、行政府および立法府は、同金庫のリスク資産の内容を十分に吟味したうえで対応策を検討する必要がある。

また、新銀行東京は石原慎太郎東京都知事の強い誘導によって設立された銀行だが、杜撰な経営により巨大な損失を発生させてきた。今回の金融危機とは無関係に経営危機が生じており、改正される金融機能強化法の対象から除外することは当然の措置である。新銀行東京の杜撰な経営実態の詳細が明らかにされる必要があり、当然、責任が追及されなければならない。

すでに、新銀行東京を舞台にした不正融資が刑事事件として表面化しており、これまで指摘されてきた政治家による口利き、融資斡旋に関わる疑惑が解明されなければならない。

金融危機の名の下に安易な公的資金投入論が横行していることに対して、立法府は歯止めをかけなければならない。「金を出さなければ金融恐慌が起こるぞ」との言葉で、「責任追及なき公的資金投入」がごり押しされるのは、「恐喝」と言わざるを得ない。

金融システムの安定確保は不可欠だが、公的資金を活用する以上、適正な責任追及が不可欠なのだ。政治権力は金融資本と癒着しやすい傾向を有している。立法府が毅然とした姿勢で監視しなければ、「金融危機」の名目の下に、「公的資金による金融機関救済」が横行することになる。

りそな銀行の事例では、政府が不正と欺瞞に満ちたりそな銀行救済を実行したのち、りそな銀行は自民党に対する融資を激増させた。この事実を指摘した朝日新聞記者の鈴木啓一氏はスクープ記事掲載と同時に原因不明の死を遂げたと伝えられている。

麻生政権は金融機能強化法改正に民主党が反対すると、民主党が政府の金融危機対応を政局の視点から反対していると誹謗中傷すると予想されるが、野党は筋の通らない麻生政権の歪んだ主張に対して、毅然とした姿勢で対応するべきだ。

「金融システムは守る。しかし、責任ある当事者には適正な責任を求める」の基本を崩してはならない。

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2008年10月13日 (月)

デリバティブ金融危機の津波は残存する

10月10日に開かれたG7主要7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議は行動計画を決定し、公表した。共同通信が配信した行動計画の要旨は以下の通り。

一、現在の状況は緊急かつ例外的な行動を必要としている。世界経済の成長を支え、金融市場の安定と資金の流れを回復するため共同作業を続けると約束。

一、金融システムで重要な金融機関の破たんを避けるため断固とした行動を取り、あらゆる利用可能な手段を活用。

一、金融市場の機能を回復し、金融機関が資金調達するのに必要な手段を講じる。

一、金融機関が信用を回復し、家計や企業への貸し出しを継続できる十分な量で、公的資金と民間資金により資本を増強できるようにする。

一、預金者が預金の安全性への信認を保てるよう、各国の預金保険制度を強化する。

一、証券化商品市場の再開に必要な行動を取る。適正な資産評価、透明性の高い情報開示、質の高い会計基準が必要。

一、マクロ政策手段を活用。金融危機の影響を受ける国を支援する国際通貨基金(IMF)の役割を強く支持。金融安定化フォーラムの提言実行を加速。

一、計画完遂へ協力を一層強化、他国と協働。

G7行動計画を受けてユーロ圏15ヵ国は10月12日にパリで緊急首脳会議を開催し、包括的行動計画を決定した。以下は共同通信配信の報道内容だ。

【パリ13日共同】

欧州で拡大する金融危機への対応をめぐり、ユーロ圏(15カ国)首脳は12日、パリで緊急会議を開き、経営難の金融機関に公的資金などを使って資本注入することや、来年末まで金融市場での銀行間取引を政府保証することを明記した包括的な共同行動計画を策定した。

欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領は会議後の記者会見で「例外的な金融危機にためらいは許されない」と述べ、ドイツ、フランス、イタリアのユーロ圏主要国が今回の計画に沿った個別の対応策を13日中に公表し、各国が早期に実施に踏み切るとの見通しを強調した。

サルコジ大統領はブリュッセルで15、16の両日に開くEU首脳会議後に、主要国(G8)に中国、インドなど新興国を加えた緊急首脳会議を開くことで米国の理解を得ていることも明らかにした。

行動計画は金融機関の資本増強に関し「民間資本による増強を優先する一方、政府自身も資本注入に関与する」と表明。資金繰りが苦しい金融機関の資金調達支援や、資本注入を受けた金融機関の経営責任の明確化、リストラ計画策定も盛り込んだ。

(ここまで転載)

金融危機が深刻化すると、「金融恐慌」と「自己責任原則放棄」の二者択一を迫られることになる。「究極の選択」である。通常の政治判断では「金融恐慌」を選択できないから、「自己責任原則放棄」が選択されることになる。

金融機関に対する「破綻前資本注入」がモラルハザード(=倫理の崩壊)を引き起こすことを見落としてはならない。一般の事業会社が経営に失敗し、破たんの危機に直面しても、政府から資本増強の支援を得ることはない。米国のGMなどの大企業が今後どのように取り扱われるのかは不透明だが、企業の経営破たんの責任は、当事者が負うことが基本原則である。

金融機関に対する無制限、無尽蔵の資本注入が実施されれば、金融危機は回避される。しかし、この措置が「自己責任原則の崩壊」をもたらすことを忘れてはならない。

各国当局の資本増強策推進についての合意を受けて、世界の株式市場は一時的に株価反発の反応を示すことが予想される。金融機関の破たんの連鎖が、当面は、政府による資本増強策によって回避されるとの見通しが広がるからだ。

しかし、事態を楽観視することはできない。理由は三つある。

第一は、問題の根源である米国の不動産価格下落が今後も持続する可能性が高いことだ。米国の住宅価格はS&Pケースシラー住宅価格指数によると、全米主要10都市で、2006年6月から本年7月までに21.1%下落した。しかし、米国の住宅価格は本年7月までに1994年2月から3倍に、2000年1月からは2.26倍に上昇しており、価格下落はまだ4合目に差しかかったところである。

2010年にかけて、米国の不動産価格はさらに2-3割程度下落する可能性が高く、住宅価格下落に伴う証券化金融商品価格下落に伴う損失が拡大し続ける可能性が高い。10月8日付記事「日米株価急落と金融危機の深層」10月10日付記事「日米株価暴落と公的資金投入のあり方」に記述したように、「デリバティブ金融」で創出された「バーチャルな投資元本」は幾何級数的に拡大しており、金融機関の最終損失の規模がどこまで拡大するのかが、現段階では十分に把握されていない。巨大損失の津波到来が、幾重にも残されている可能性が高い。

第二は、金融機関に対する「破たん前資本注入」が金融機関救済を意味するため、議会や国民の反発を生む可能性が高いことだ。国民は金融システムの安定確保を望むけれども、責任ある当事者を税金で救済することには賛成しないからだ。

実質破たん金融機関を存続させる基本手法は一時国有化である。金融危機に対する対応の基本原則として、かつては“TOO BIG TO FAIL”=「大きすぎるから潰せない」の原則が掲げられた。1984年のコンチネンタル・イリノイ銀行の救済はこの考え方に基づいた。

しかし、この原則では、責任ある当事者が税金により救済されることになるため、「モラルハザード」を引き起こすとして、強い批判が生まれた。

“TOO BIG TO FAIL”に代わり、新たな基本原則とされた考え方は、“TOO BIG TO CLOSE”=「大きすぎるから閉鎖できない」の原則である。「経営体としての金融機関の破たんを容認するが、金融システムに組み込まれている金融機関の活動は存続させる」との考え方である。

株式価値を「ゼロ」として、政府が金融機関を国有化し、必要な資本増強等の措置を講じたうえで、金融機関の活動を存続させる。「一時国有化」の措置は、自由主義経済の根本原則である「自己責任原則」を維持するとともに金融システム崩壊を回避するための方策である。

米国では、コンチネンタル・イリノイ銀行救済への反省から、“TOO BIG TO FAIL”の原則が放棄されてきたはずである。3月のJPモルガン・チェースによるベア・スターンズ社買収に際しても、買収価格は下落した株価を基準に設定されており、株主責任が問われている。

米国において「破たん前資本注入」が実際に実施されるのかどうかは予断を許さない。仮に実施されるとしても、その手法決定には、十分な論議が必要になるだろう。

第三は、銀行間信用に政府保証を付けることが打ち出されたが、この措置も、典型的なモラルハザードの問題を引き起こすことだ。信用リスクの高い金融機関は短期金融市場での資金調達が困難になっている。資金を調達しようとすれば高い金利を支払う必要が生じる。

政府保証がつけば、政府の信用リスクに見合う金利で資金を調達できることになる。たしかに、資金繰り倒産発生のリスクは低下するが、金融機関の経営健全化への努力は不要になってしまう。これを「モラルハザード(=倫理の崩壊)」と呼ぶ。

個人に置き換えれば分かりやすい。多重債務を抱えて、普通の金融機関ではお金を借りることのできなくなった個人の借金に、政府が保証を付けるというのだ。多重債務者で、返済に対するリスクが限りなく高くても、貸金業者は政府が保証してくれるなら、無制限、無尽蔵に融資を実行するだろう。多重債務者は政府保証による借金を激増させるだろう。これで、金融市場の健全性は確保できるのか。

世界の主要国は「金融恐慌」のリスクに怯(おび)えて、税金による金融機関救済の道に大きく一歩足を踏み入れた。「金融システムの安定」を確保しなければならないのは当然だが、「モラルハザード天国」を創り出すことの弊害も大きい。両者を両立させる対応策が十分に検討されていないことが、重大な問題である。このことが、今後の金融問題処理において大きな障害になることが予想される。

日本政府は1兆ドルの外貨準備を活用した問題解決への取り組みを表明しているが、外貨準備は国民資産である。政府の私有物ではない。米国は問題処理に際して、日本の拠出する資金を念頭に置いていると考えられる。日本政府が米国の言いなりになって、外貨準備を国民の同意を得ずに流用することは許されない。

学費や渡航費として預かった顧客資金を、破たんしそうな企業経営の運転資金に流用した外国留学斡旋会社が破たんしたが、同じような行動になる。

小泉政権以来、日本外交は対米隷属、対米従属を基本路線に据えてしまっているが、この政策路線が日本国民の利益を喪失させてきた。郵政民営化、大義なきイラク戦争への加担、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の米国独断での決定、など、日本は米国に隷属するだけで、重要問題での連絡も受けず、協議にも関与できす、国民の利益を喪失させ続けている。

米国は、日本の350兆円の郵貯・簡保資金、日本郵政保有の巨大不動産、日本の1兆ドルの外貨準備に食指を動かしている。米国に隷属し、日本国民が米国に搾取される構造に対して、早急に歯止めをかけなければならない。この点に関しては、民主党内部にも対米隷属勢力が存在することを指摘しておかなければならない。

日本の外貨準備の位置づけ、これまでの経緯、今後の方策については、十分な論議が強く求められる。この問題については、改めて論じる。 

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2008年10月10日 (金)

日米株価暴落と公的資金投入のあり方

株価暴落が止まらない。先の見えない不安心理が株式売却を加速させている。10月3日に米国議会は7000億ドル(約70兆円)の公的資金投入を柱とする金融安定化法を成立させた。10月8日には、世界の10の中央銀行が同時金利引き下げを実施した。英国政府は10月8日に、最大500億ポンド(約9兆円)の公的資金を銀行の資本を増強するために注入する方針を発表した。

米国政策当局がこれまでに提示した公的資金投入金額は1兆ドル(約100兆円)を突破している。それにもかかわらず、金融市場は安定を取り戻していないNYダウは10月9日、前日比678ドル安の8579ドルに下落した。2003年5月以来、5年5ヵ月ぶりの安値を記録した。

日経平均株価は10月10日、前日比881円安の8276円まで下落した。日経平均株価も2003年5月以来、5年5ヵ月ぶりの安値を記録した。日経平均株価のバブル崩壊後最安値は2003年4月28日の7607円だが、この水準が視界に入ってきた。

問題の震源地は米国で、発端は不動産価格下落である。米国の住宅価格はS&Pケース・シラー住宅価格指に従うと、全米主要10都市の場合、1994年2月から上昇が始まり、2006年6月までにちょうど3倍になった。2000年1月を起点とすると、2006年6月までに2.26倍になった。

2006年から住宅価格は下落に転じたが、本年7月までの下落率は21.1%である。金融危機が広がって、大混乱が生じているから、不動産価格が半値、3分の1、10分の1に下落したのかと考えてしまうが、下落率はわずかに21%にすぎないのだ。

サブプライムローン残高は1.3兆ドル(約130兆円)だったから、住宅を最高値の2006年6月にすべて購入したとしても、26兆円の損失しか生まれない。住宅購入の時期はばらけているから、130兆円の評価損は限定される。

日本の1990年代では、3倍に上昇した資産価格が元の水準以下に暴落して、大混乱が生じた。200兆円融資して購入した資産の時価評価が50兆円程度になり、150兆円規模の損失処理が必要になった。その過程で、金融機関の破綻が広がった。

この日本の事例を念頭に入れたのでは、米国の金融危機は説明できない。謎を解く鍵は「レバレッジ=てこ」なのだ。「デリバティブ」と呼ばれる金融派生商品の世界が際限なく広がった。その機能を一言で説明すると、「少額の投資資金で巨額の金融取引が可能になる」ということだ。債券先物取引の例で示すと、証拠金比率1%での取引を認めると、投資家は100万円の元本で、1億円の債券を買うことができる。額面100円の債券価格が1円変動すると、100万円の損益が生まれる。100万円の元手が1日で倍になったり、ゼロになったりする。

金融工学と表現すると聞こえが良いが、金融市場が「カジノ」になったのだ。デリバティブを扱う金融マンは億円単位の高額報酬を獲得した。破綻したリーマンブラザーズの最高経営責任者は2000年以降に494億円もの報酬を得ていた。

「市場原理主義」の終着点は「カジノ経済」だったのだ。26兆円の損失が100倍に拡大されれば、2600兆円になる。最終的な損失金額は不明であるが、100兆円の公的資金では、問題処理には程遠いことを認識しなければならない。

日本の政府関係者が、日本の経験を元に、金融機関への資本注入を提言するべきだなどと発言しているが、問題の本質をまったく理解していないと言わざるを得ない。米国の不動産価格は2割下落したが、理論価格=長期のトレンド上の価格に回帰するには、さらに2割から3割程度の下落が必要である。不動産価格調整はまだ4合目に差しかかったところだ。

この意味で、今回の金融危機に対しては、強い警戒感をもって対処する必要がある。デリバティブの想定元本の全体を把握し、最大で損失がどこまで膨張するかを予測し、その予測に見合う対応策を検討しなければならないのだ。

デリバティブ金融の想定元本は600兆ドルに達すると見られている。6京円の想定元本の1%が損失になるとしても、6兆ドル(約600兆円)の資金が必要になる。手元にはデータがないから、確かな推計はできないが、問題が途方もなく大きなものに膨れ上がってしまっている可能性は低くない。

サブプライム危機で常に取り上げられるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる、債務保証を商品化した金融商品だけでも、その残高は60兆ドルに達すると見られている。「市場原理主義」=「新自由主義」=「自由放任主義」は、取り返しのつかない「過ち」を犯してしまったのかも知れない。

米国の経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスは、著書『バブルの物語』(原題はA Short History of Financial Euphoria)に、「暴落の前に天才がいる」と記した。バブル生成には常に「神話の存在」と「金融の支援」が存在することを洞察した。日本のバブル生成の際も、銀行の過剰融資が存在した。過剰流動性による巨大な信用創造が生み出され、バブルが生成された。

2000年代の米国では、「金融」が「魔界」に突入してしまった。金融工学が人類の管理能力を超える「巨大宇宙」を創出し、その「巨大宇宙」で「ビッグバン」を発生させてしまった。

問題を処理するためには、巨大な資金が必要になるだろう。問題処理に際して不可欠なことがらは、「自己責任原則の貫徹」と「金融システムの安定性確保」の両立だ。損失の規模によっては、「金融システムの安定確保」が困難になることも否定はし切れない。しかし、最善の努力を注ぐ必要はあるだろう。

自己資本不足に陥る金融機関は、まず自己の責任で資本調達を実行しなければならない。自助努力での経営維持が不可能になれば、「実質破たん」状態になる。そのまま「破たん」させると、「破たん」が連鎖する可能性が高まる。「破たん」を連鎖させないために、公的資金が必要になる。問題は、どのような手順、ルールに従って公的資金を注入するのかだ。

答えは一つしかない。「実質破たん」金融機関を「一時国有化」することだ。実質破たん状況に陥った時点の株価で、政府が問題金融機関を買い取るのだ。問題金融機関の株主は、株価が下落した分だけ、有限責任を負う。「破たん」状態に至れば、株価評価は基本的に「ゼロ」になる。株主は出資した資金だけの責任を負う。

国有化した金融機関に、必要な資本を注入し、経営を再建させる。これが、「金融システムの安定確保」と「自己責任原則」を両立させる唯一の方法だ。破たん金融機関の経営者は免職させると同時に、適正な私財提供を求めるべきだ。経営破たんにより、公的資金が投入されるのである。責任ある当事者が、責任能力に応じて資金負担するのは当然である。

2003年の「りそな銀行」の処理は、これとまったく違う。「実質破たんさせたりそな銀行」の株主の株式にまったく手を付けずに、2兆円の公的資金を注入して、りそな銀行を救済したのだ。もっとも大きな利益を獲得したのは、「りそな銀行の株主」だった。経営者だけは入れ替えられ、政府の近親者が新経営陣に送り込まれた。新経営陣も巨大な利得を獲得したはずである。そして、「りそな銀行」は自民党の「機関銀行」になった。この問題をスクープしたと言われる朝日新聞の鈴木啓一記者が、記事発表と同時に疑惑の死を遂げていると伝えられている。私は命を落としていないだけ、ましかも知れない。

米国の金融危機に直面し、2003年の「りそな銀行処理」がいかに、「欺瞞と不正」に満ちていたのかを改めて検証する必要があるだろう。詳細を拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に記述したので、是非ご高覧賜りたい。

私は「金融システムの安定確保」と「自己責任原則の貫徹」の両立を一貫して主張し続けた。自民党政権と金融業界は「責任処理を伴わない銀行救済」を一貫して主張し続け、結局、ごく一部のスケープゴートを除けば、「責任処理を伴わない銀行救済」が広範に実行されたのである。

長銀の粉飾決算事件では、財務省から送り込まれた最高裁判事が中心になって、経営者に対する司法の責任追及を放棄してしまった。日債銀に財務省OBが天下りで送り込まれ、刑事責任を追及されている。高裁有罪判決ののち、現在上告審で係争中だ。長銀事件逆転無罪最高裁判決は、日債銀に天下りした財務省OBの刑事責任を免責にするための工作である可能性が限りなく濃い。

資本注入論議が浮上すると、金融界と自民党は常に「責任追及のない資本注入」を主張する。小泉政権は「自己責任原則」を重視すると言いながら、「自己責任原則」を放棄した。この「不正」が糺されることなく、現在まで存続するのが「政官業外電=悪徳ペンタゴン」による利権政治=自公政権なのだ。

米国でも金融界は「責任追及のない資本注入」を強く求めているだろう。しかし、それは「公正と正義」に反する政策対応であると言わざるを得ない。

「大火が広がっているときは消火を優先しなければならない。失火の責任を追及している場合ではない」との主張をよく聞くが、このような発言を大声で主張した人物が、鎮火後に責任追及したことを見たことがない。

金融システムを守るために、公的資金の注入は不可欠だろう。しかし、それは、社会の「公器」である「金融システムを守るための方策」であって、「責任ある当事者を救済するための方策」ではない。米国が「金融システムの安定確保」と「自己責任原則の貫徹」の両者を両立させる政策対応を示すのかどうかを注視しなければならない。

「欺瞞と不正の金融処理」を実行した日本政府に、発言権などあるはずがない。日本の事例を説明するのなら、日本政府が「自己責任原則」を崩壊させた事実を正確に伝えるべきである。

「市場原理主義」=「自由放任」=「新自由主義」は金融危機とともに終焉する。新しい時代が幕を開けるが、その前に「市場原理主義」の「負の遺産」を解決しなければならない。その目的は「罪なき国民の生活を守ること」であって、「責任ある当事者の救済」ではない。関係者の私財提供にまで責任追及が及ばなければ、問題処理スキームは動き出さないだろう。

「こづかい帳」さんが指摘するように、日本でも米国でもいずれかの時点で新しい「ペコラ委員会」を設置して、問題を総括すると同時に、問題解決の基本形を定める必要がある。

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2008年10月 8日 (水)

日米株価急落と金融危機の深層

10月8日の日経平均株価が前日比952円下落して9203円に達した。2003年12月以来、4年10ヵ月ぶりに1万円の大台を割り込んだ。10月7日のNY株式市場ではNYダウが508ドル下落し、9447ドルに達した。2003年9月以来、約5年ぶりの安値を記録した。

日米市場だけでなく、アジア、欧州を含め、グローバルに株価下落が連鎖している。米国では10月3日に7000億ドルの公的資金投入を柱とする金融安定化法が成立したが、株価下落に歯止めをかける効果を発揮していない。

日本円に換算して70兆円もの巨額の公的資金を注入する方針が示されているのに、株価が下落し続けているのはなぜか。日本では、米国のような金融不安が広がっていないが、株価は米国に連動して下落している。
 日経平均株価は昨年7月9日の18261円から、本日10月8日の9203円まで、9058円、49.6%下落した。NYダウの下落は、昨年10月9日の14164ドルから10月7日の9447ドルまでの4717ドル、33.3%である。日本の株価はピークから半値になり、米国の株価はピークから3分の1下落した。金融不安の震源地の株価下落率が小さい。

グリーンスパン前FRB議長は、100年に一度の金融危機であると述べている。1929年に始まったNYの株価暴落では、株価が約9割下落した。今回の金融危機が1920年代の危機の再来になるのだろうか。

現段階では、目に見える混乱は株式市場に限定されているが、金融恐慌の恐ろしさは、金融市場の混乱がタイムラグを伴って実体経済に確実に波及する点にある。「資産価格下落-金融不安-経済悪化」が、断ち切れない「魔の悪循環」を形成する。実体経済の悪化は、倒産、失業、所得減少の形で、一般国民の生活をも直撃する。

「責任ある当事者が責任を負う」ことが、自由主義経済の基本ルールであり、問題発生源の金融機関が破たんするのは「自業自得」、「因果応報」ではあるが、金融恐慌の連鎖が罪なき一般国民の生活を直撃することに十分留意しなければならない。「責任論」を重視しながら、「一般国民を守る対応策」を考えなければならない。

米国の金融危機の基本背景は住宅価格の下落である。S&Pケースシラー住宅価格指数によると、全米主要10都市の住宅価格は1994年2月から上昇し、2006年6月までに、ちょうど3倍になった。2000年1月を起点とすると、2006年6月までに2.26倍になった。

米国の不動産価格は名目GDPの成長率に連動して上昇するトレンドを描いてきたが、2000年代に入ってからの上昇速度は極めて速かった。米国の政策金利であるFFレートは2003年から2004年にかけて、1%の低水準で推移した。2004年6月から、FRBは金利引き上げを開始したが、利上げのスピードは遅く、2006年にかけて、巨額の住宅融資が実行され、不動産価格が急騰した。

1980年代後半の日本と類似する「不動産価格バブル」が生まれたのだ。「バブル」は破裂する宿命を負っている。米国の住宅価格は2006年6月から下落し始め、本年7月までに21.1%下落した。

この不動産価格の下落に連動して問題が噴出している。

日本では1980年代の後半に株価、地価が急騰した。株価は1986年の年初から89年の年末までに、約3倍に上昇した。不動産価格は株価に対して約1年遅れて、87年年初から90年の年末にかけて、やはり3倍程度に上昇した。商業用不動産では5倍から10倍に上昇したものも多かった。

1987年から1990年までの4年間に金融機関の融資残高は100兆円から200兆円増加した。「銀行」と名の付く金融機関からの融資が100兆円、銀行と名の付かない金融機関およびノンバンクからの融資が約100兆円増えた。

この200兆円の資金が不動産や株式などの資産の取得に向けられた。ところが、1990年代に入り、資産価格が暴落した。200兆円で購入した資産が100兆円になれば、100兆円の損失が発生するし、70兆円になれば130兆円の損失が生まれる。

日本の場合、100兆円から150兆円の損失が発生したと考えられる。不良債権の処理が一段落したのは2005年ころで、仮に損失合計額が150兆円だったとすれば、1年あたり10兆円の資金を投入して問題を処理したことになる。それでも日本の株価は2003年まで下落し続けたから、2003年までは新たな不良債権が生まれ続けた。株価や地価が上昇に転じて、初めて不良債権処理は加速する。

この意味でも小泉政権が2001年から2003年にかけて景気悪化を推進して資産価格を暴落させたのは、最悪の政策対応だった。この政策で、日本経済は激しいいエネルギー消耗に直面し、日本の優良資産の大半を外国勢力に掠(かす)め取られてしまった。正確に言えば、小泉竹中経済政策は、外国勢力に日本を贈与するために、上述した経済破壊政策を実行したのだと考えられる。

話を本題に戻すと、資産価格下落に伴う損失処理額は、バブル価格での資産購入総額と資産価格下落率で、およその見当をつけることができるのだ。私は1996年段階で、不良債権の規模が100兆円から200兆円存在し、損失処理として50兆円から100兆円程度の資金が必要になるとの概算を念頭に置いて、問題処理の方策を提言した。

1997年2月のNHK「日曜討論」でも、この見解を表明した。番組に出演した吉冨勝経済企画庁調整局長(当時)は、「不良債権の規模が100兆円などとの冗談を言ってもらっては困る」、と鼻先でせせら笑った。当時の大蔵省は不良債権の規模を20兆円程度としていたのだ。

しかし、1997年に北海道拓殖銀行、山一証券などの経営破たんが表面化したのち、政府は不良債権規模が100兆円であることを認め始めた。

こうした基準に照らして考えると、米国の金融問題噴出を簡単には説明することができない。米国の住宅不動産価格は2006年6月をピークに下落に転じたが、本年7月段階でも、21%しか下落していない。サブプライムローンの残高は1.3兆ドル、約140兆円であり、すべてをピークで購入したとしても、その損失は30兆円に満たないのである。

米国政策当局は、ベア・スターンズ社買収に290億ドルの特別融資を実行、政府住宅公社救済に2000億ドル、AIG救済に850億ドル、金融安定化法で7000億ドルの公的資金枠をすでに用意した。これだけで100兆円を優に上回る。また、アブダビ、クウェート、サウジアラビア、シンガポール、中国などの政府系ファンドも昨年11月以来、兆円単位の資金を米国金融機関に投入してきている。

それにもかかわらず、金融市場の動揺がまったくおさまらない。その最大の理由は、「レバレッジ」である。「レバレッジ」とは「てこ」のことだ。「デリバティブ」と呼ばれる金融派生商品が急激に拡大した。「デリバティブ」の最大の特徴は、「投資元本」に対する「想定元本」が幾何級数的に大きいことである。サブプライムローンを原商品として、デリバティブが組成されることによって、巨大なポジション=想定元本が生み出されたのだ。その結果、金融商品の価格下落に伴う発生損失額が幾何級数的に拡大しているのだ。

「デリバティブ」に順風が吹くときに問題は顕在化しない。途方もない巨大利益を金融機関、トレーダーが謳歌したのだ。しかし、逆風が吹けば、惨事が発生する。その惨事がいま、少しずつ姿を表し始めている。

日本政府が日本の経験をもとに、「資本注入」を提言すべきとの意見が散見されるが、問題の属性が日本の金融危機と欧米の危機とで、まったく異なることを認識しなければならない。巨額の公的資金も「デリバティブ」の幾何級数的な損失の海においては、「大海の一滴」にしか過ぎない危険がある。

ゴールドマン・サックスの会長を務めたポールソン財務長官が、資本注入の必要性を認識していないはずがない。CDS(クリジット・デフォルト・スワップ)の市場規模だけでも60兆ドルに達していると見られる。金融派生商品の大海に、どれだけの魔物が棲み、潜んでいるのかが定かでないことが、問題解決の道筋を不透明にしている

2003年の日本で意図的に作られた金融危機では、問題が非常に単純であるなかで、最終的に「税金で銀行株主を全面救済する」との、「不正と欺瞞」に満ちた「自己責任原則を完全に放棄する」金融処理策がまかり通ってしまった。その結果、金融行政に取り返しのつかない「汚点」が残されたが、「金融恐慌」発生が回避された。

米国議会が安易な銀行救済を認めないことは、健全である。米国の問題処理に際しては、今後も「金融システムの安定確保」と「適正な責任処理」の両者が重視されながら、対応策が検討されてゆくものと考えられる。

しかし、金融問題の闇は深く、問題解決は容易でない。「市場原理主義」は「市場における自由放任」を容認してきた。この「自由放任」がコントロール不能の「デリバティブ金融商品の大海」を生み出す原因になった。

「市場原理主義」は「弱肉強食」を奨励し、金融市場の特殊な技法を活用して、労力を使わない「濡れ手に粟」の「一獲千金」の巨大利益獲得を「賞賛の対象」に祭り上げてきた。日本における「六本木ヒルズ族」に対する賞賛も同じ文脈上に位置付けられるだろう。

破たんしたリーマン・ブラザーズ社の旧経営者が2000年以降に494億円の報酬を得てきたことが明らかにされているが、こうした状況に対する素朴な疑問が否定されるところに、「市場原理主義」による「感覚の麻痺」が広がっていたことが表れている。

法外な巨大利得の裏返しが、逆境における、処理不能の巨大損失の発生なのだ。本来、自己責任での処理が求められるが、当事者に処理能力が存在しない。米国の金融危機に対して、米国政策当局は、時間をかけて、個別問題に丹念に対応してゆくしかないと考えられる。証券化商品の時価評価を緩め、問題を先送りしつつ、処理を進めてゆかなければならないのではないかと考える。問題解決の道筋は見えていない。

「市場原理主義」がもたらした「強者」と「弱者」の二極分化が問題発生時の利害調整を困難にしている点も見落とせない。納税者である「弱者」は、バブルに踊り、利得にとっぷりと浸かってきた「強者」のために公的資金を使うことを、決して許せないはずだからだ。

米国金融危機が「市場原理主義」=「新自由主義」に終焉をもたらす契機になることは間違いないだろう。しかし、その前に、いま存在する問題に対処しなければならない。米国の問題処理には、まだ多くの時間と多くのプロセスが求められると考えられる。株価下落がさらに進行するリスクは依然、小さくない。

日本が米国の言いなりになり、尻拭いさせられることを、十分に警戒しなければならない。安易なドル買い介入が巨額の国民負担を生み出してきた事実を忘れてはならない。日本の金融市場は現段階では相対的には安定しているが、世界の金融市場が不安定化すれば、当然強い影響を受けることになる。また、ドル建て金融資産の動向には最大の警戒が求められる。

 日本経済の悪化が加速している。不況深刻化の下での国民生活支援が政策の急務である。総選挙を早期に実施し、民主党中心の本格政権を一刻も早く発足させ、国民生活を防衛する万全の政策を早急に実行することが望まれる。

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