カテゴリー「麻生太郎氏・麻生政権(1)」の10件の記事

2008年11月 8日 (土)

理念なき麻生政権の財政政策

金融危機に対応するために、各国政策当局は政策総動員の体制を強化している。財政金融のマクロ経済政策を発動するとともに、公的資金を活用した資本増強策を推進している。

今回の金融危機は約200兆円規模のサブプライムローンが住宅ローン担保証券(RMBS)や債務担保証券(CDO)などに組み込まれ、想定元本が巨大に拡張されたハイリスク・ハイリターン型の金融商品の価格が急落したことに端を発している。

サブプライムローンから直接影響を受ける金融市場の規模は6600兆円と推定されており、こここら金融機関の巨額損失が発生している。また、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる金融保証商品の市場規模も約6000兆円に達していると推定され、潜在的な巨額損失の温床になっている。

金融機関が計上する損失が最終的にどの程度の規模に達するかが明らかでなく、巨額の公的資金を確保しても、それで十分であると言い切れないため、金融市場の疑心暗鬼が広がっている。

金融危機の拡大に伴い、米国経済が本格的な不況に移行した。世界経済は米国に連動し、欧州、日本が景気後退に突入した。さらに、中国、インド、ブラジル、ロシアなど、新興成長国の経済状況も急変している。

資産価格下落-景気悪化-金融不安拡大の悪循環が始動しており、この悪循環を断ち切ることが求められている。金融市場がもっとも強く警戒するのは、金融不安である。大手金融機関が破たんし、金融機関と事業会社の破綻が連鎖して広がる状況を金融恐慌と呼ぶが、金融市場は金融恐慌のリスクを認識している。

政策当局は最大のリスクである金融恐慌リスクに対処するために、公的資金による資本増強の方針を提示した。公的資金を投入する際の金融機関の責任処理が重要な問題として積み残されているが、緊急対応として、大規模な金融機関の経営破綻を回避する政策スタンスが明示されている。

金融恐慌のリスクを排除することと並行して、経済悪化を緩和する施策が順次決定され、実施されている。財政金融両面のマクロ経済政策である。福田政権の大田弘子経財相は国会質疑で「主要国は景気安定化のための財政政策活用を否定的に捉えている」と答弁したが、結局、福田政権と麻生政権は財政政策出動を決定した。

小泉・竹中政権は2001年度から2003年度にかけて財政政策を否定し、超緊縮財政政策を実行して日本経済の崩壊を誘導してしまったが、誤った政策対応であった。金融危機が拡大し、経済の悪化が金融危機をさらに深刻化させるリスクが高い局面では、財政政策を活用して経済悪化を緩和することが求められる。

欧米の政策当局は、現在の経済状況を踏まえて、財政政策の発動を決定しているが、妥当な判断である。経済状況を無視して、やみくもに財政収支改善を追求する「財政再建原理主義」が間違った政策姿勢であったことを、改めて確認しておく必要がある。

日本銀行は、これまで金利引き下げ政策に慎重なスタンスを維持していたが、10月31日の政策決定会合で0.2%ポイントの利下げを決定した。世界の主要国が利下げ実施で足並みをそろえるなか、日本円の急激な上昇、原油価格等の一次産品価格の急落の環境を踏まえれば、妥当な決定を示したと言える。

9月の全国消費者物価上昇率は生鮮食品を除くベースで前年同月比2.3%を記録したが、円高と原油価格急落を踏まえれば、インフレが加速するリスクは存在しない。

追加的な金融緩和政策の経済効果は限定的であるが、政策スタンスを明示して景気心理を鼓舞するとの目的、利下げのシグナル効果を重視するなら、追加的な金融緩和政策が示される可能性は残存する。ゼロ金利政策、量的金融緩和政策の発動は、今後の政策メニューとして温存されていると考えておくべきだ。

麻生政権は財政政策発動を示しているが、政策の腰が定まらず、大きな効果を期待できない状況に陥っている。5兆円の真水を含む追加景気対策が決定されたが、補正予算案の国会提出時期が定まっておらず、機動性を欠いている。

景気対策の目玉は2兆円の給付金支給だが、総選挙向けの利益誘導政策であることが明白で、場当たり政策の典型だ。所得制限についての閣僚発言はばらばらで、政権の体をなしていない。

膨大な事務経費がかかることも「無駄ゼロ政策」などの掛け声と完全に矛盾するものだ。しかも、麻生首相は3年後に消費税増税することを明言した。一人1万2000円の給付金を得ても、3年後に消費税大増税が実施されると考えれば、給付金は完全に貯蓄に向かうだろう。政策対応のちぐはぐなさだけが際立っている。

時代は「市場原理主義」=「新自由主義」=「弱肉強食奨励」=「格差社会創出」指向から、「セーフティーネット重視」=「生存権重視」=「福祉社会創出」指向に大きく転換しつつある。米国大統領選挙は米国国民が“CHANGE”を求めていることの表れである。

財政政策を活用するのなら、新しい政治の方向を示す形で政策を決定するべきだ。人間性と生存権を重視し、すべての国民の幸福を実現するために、①労働行政の規制強化、②教育の機会保証、③国民皆健康保険の拡充、に重点を置くべきと考える。

消費税増税を検討する前に、特権官僚の天下り根絶を実行するべきだ。麻生政権の対応を見ると、地方出先機関の整理と、一般公務員の不祥事争点化ばかりが目立つが、それ以前の問題である、天下り根絶に取り組む姿勢はまったく示されていない。

日本の金融機関のサブプライム金融危機からの影響は相対的には軽微である。個別には、リスクの高い投資行動を採用した結果として財務状況が大きく悪化している機関もあるが、こうした事例に対しては、自己責任を基軸に対応策を検討すべきである。

直ちに日本の金融システムがぐらつくリスクは限定的であり、新しい時代に適応する政治体制の確立が、現時点での最優先課題だ。理念も不明確なバラマキ型の財政政策発動で貴重な財源を浪費することを回避するべきだ。

マスメディアの大半が政権の顔色を見ながら、選挙日程に関する世論誘導を実行しているように見えるが、上述した状況を踏まえて、12月解散、1月総選挙の日程を固める正当な政治日程確定に向けての論議を高めるべきである。

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2008年10月28日 (火)

麻生首相の非正規雇用労働者蔑視発言ほか

麻生首相が10月26日、首相就任後初めての街頭演説を秋葉原で行った。そのなかで麻生首相は非正規雇用の状況で働く多数の国民に対して、極めて侮辱的な発言を行った。また、同日午後、麻生首相の私邸へ徒歩で歩く人々が、突然、警察に逮捕された。

また、首相ぶらさがり会見で、連夜のバー通いについて質問した記者に、麻生首相が逆切れして詰め寄ったことも伝えられている。

ところが、これらの映像がマスメディアでほとんど報道されていない。インターネット情報の発達で、動画が配信されるため、メディアが伝えない真実の一端を知ることができるようになっているが、これらの事実がマスメディア情報の偏向を浮き彫りにしている。

10月26日のフジテレビ番組「サキヨミ」が年次規制改革要望書を報道したのを私も見た。関岡弘之氏が画面に登場するのも初めて拝見した。「神州の泉」主宰者の高橋博彦氏がこの問題を取り上げられた。また、私に対する身に余るお言葉を賜った。心より感謝申し上げる。

また、私の朝日放送に対する訴訟での和解について、高橋清隆氏に加え、ひらのゆきこ氏が貴重な記事を掲載くださった。また、「晴天とら日和」様が詳細な記事を掲載くださった。心より感謝申し上げる。

麻生首相の秋葉原発言については、「カナダde日本語」の美爾依さんが早速ブログで取り上げられ、また、首相私邸へのウォーキング市民逮捕についても伝えられている「きっこの日記」様「BLOG版ヘンリー・オーツの独り言」様も取り上げられた。

これらの問題について、「低気温のエクスタシー」様「雑談日記(徒然なるままに、。)」様「チラシの裏」様などが詳細な情報を提供してくださっている。メディアが伝えない重要情報がネットを通じて伝達されるようになった意義は極めて大きいと思う。草の根から真実の情報を伝播してゆかなければならない。ブログ閲覧者数を拡大してゆかなければならないと思う。ブログ閲覧者数を二ケタ拡大する必要がある。

麻生首相は、秋葉原街頭演説で、非正規雇用から正規雇用への転換を推進する方針を説明するなかで、九州でのある事例で、非正規社員が正規社員に転換されたことで婚姻率が上昇したことを紹介し、次のように述べた。

「やっぱり、女性がもう、結婚する相手が、なんとなーく、食いっぱぐれそうな顔してるとこりゃちょっと、結婚したらあたしが一人で働かないかんと。そら、なかなか結婚したくないよ。そら、女性のほうも選ぶ権利がある。当然のこととして、稼ぎが悪そうなのより、稼ぎがいいほうがいいに決まってる。そう思って結婚しないんだと思いますが、それがこれできちんと証明をされていると思います。」

麻生政権が、日本に存在する非正規雇用者のなかで、正規雇用への転換を希望するすべての労働者を、責任を持って正規労働者に転換することを決定したのなら、この発言も許されるかもしれない。ところが、現実には、非正規雇用者の大半が現状のまま放置されることは明白だ。そのなかでこのような発言を示す神経は尋常でない。

「オタクの聖地」と言われる秋葉原には、非正規雇用労働者が多数存在するはずだ。非正規雇用労働者を蔑(さげす)む麻生首相発言を、彼らはどのように受け止めただろうか。マンガばかり読んでいることで麻生首相は、秋葉原愛好者の一員になったつもりなのかも知れないが、麻生首相が一般国民の視点に立ってものを考えていないことは明白である。また、一般論として言えば、オタクの人々はマンガも読むが、読書好きな人が多く、知的水準が極めて高いのが通例だ。マンガだけ読んでいる人とは異なる。

そもそも、「稼ぎがいい方がいいに決まっていて、結婚はこのことを基準に決定されることがきちんと証明されている」との趣旨の言葉に示される麻生首相の価値観が問われる。麻生首相は「所得の多寡(たか)が人間を評価する基準である」ことを演説で堂々と訴えたのだ。

小泉政権以来の自公政権が「市場原理主義」=「新自由主義」に基づく人間性無視=効率至上主義の政策を推進して、冷酷な格差社会が生み出された。まじめに働いても年収が200万円に届かない「働く貧困層」、いつ「雇い止め」通知が来て、生活の危機に直面するかも知れないという恐怖に直面し続ける「非正規雇用労働者」、危険で過酷な労働に日替わりで対応しなければならない「日雇い派遣労働者」、が日本中を覆い尽くしている。

将来に夢と希望を持てない若者が急増していることは、もっとも深刻な日本の社会問題でもある。麻生首相は景気対策で、非正規雇用労働者の正規雇用への転換をどこまで進展させるのか。本格的な政策対応を示さずに、国民の歓心を買う言葉を並べ立てても、不興を買うだけだ。

麻生首相は九州トヨタの事例を引き合いに出したが、10月7日の衆議院予算員会で共産党の志位和夫議員は、トヨタが巧妙な配置転換により、派遣労働の3年期限規制を回避しているのではないかとの指摘をしている。労働市場の規制緩和が大資本の意向に沿って実施されたために、一般国民が極めて厳しい現実にさらされているなかで、麻生首相の発言は、あまりにも表層的に過ぎる。

「市場原理主義」=「セーフティーネット破壊」の悪政に苦しむ一般国民の視点に立ってものを考えることができないのだと思われる。

首相のぶらさがり記者会見は、政府が政府広報として実施しているものだ。そのなかでの首相の発言は、一部をカットせずに、きちんと放映されるべきだ。首相に都合の悪い部分を報道しないことは、国民の知る権利を妨害するものである。政府が都合の悪い部分を放映しないように圧力をかけているなら、検閲と言われてもやむを得ない。

渋谷駅から麻生首相私邸へのウォーキングを警察が逮捕した事件も、YOU TUBEで配信されている映像を見る限り、不当逮捕のように見える。この事件についても、事実関係を正確に伝える報道は極めて少ない。

民主主義が機能するためには、情報が正しく伝達される必要がある。国民にすべての正しい情報が伝達されなければ、国民が正しい判断を下すことはできない。

ぶらさがり記者会見での記者とのやり取りが、一部カットされず、全体が伝えられることによって、首相の人間性や価値観、哲学が国民に伝わるのだ。検閲され、加工された情報をもとに国民が正しく判断することは不可能だ。

日本が法治国家であるなら、法律は適正に運用されなければならない。警察当局の裁量権の拡大は、暗黒国家への道である。

マスメディア情報が政治権力によって著しく歪められている現状では、ネット情報が、その歪みを糺す役割を担う。

ネット情報が威力を発揮するには、より多くの国民がネット情報に接する必要がある。優良なネット情報が社会全体に浸透するための努力を拡大してゆかなければならないと思う。

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2008年10月23日 (木)

「逃げ回る」醜態を晒す麻生首相

10月13日付記事「デリバティブ金融危機の津波は残存する」に記述したように、世界の株式市場の波乱は残存している。各国政府が公的資金投入の方針を示し、株価は一時反発した。麻生首相は、日本が資本注入を提唱し、各国が方針を決定したと述べ、日本が金融危機打開へのイニシアティブをとったかのような発言を国会答弁で示した。しかし、現実の金融危機対応での日本の存在感はほとんどない。

11月15日にワシントンで開催されることが決まった「金融危機サミット」も、フランスのサルコジ大統領が提唱し米欧の間で協議されて決まったものだ。サミット議長国は日本で、麻生首相は成田での短時間のサミット開催構想を提示したが、主要国から完全に無視された。サミット議長国である日本に打診もなく、ワシントンでサミットが開催されることになった現実は、麻生首相が外交上の存在感をまったく認識されていないことを象徴している。

日本の1990年代から2003年にかけての金融危機処理は、最悪の金融処理の実例でしかない。住専問題が表面化したのは、1992年である。問題処理における「隠ぺい、先送り、場当たり」の三原則が、日本の金融問題処理の特徴だった。

1996年には住専処理に6750億円の公的資金が投入された。1997年に北海道拓殖銀行等の破綻が生じ、1998年に公的資金による資本増強が実施されたが、本格対応には程遠いものだった。その後、長銀破綻、日債銀破綻が生じ、巨額の公的資金投入が実施された。

事態はいったん改善に向かったが、2001年発足の小泉政権が日本経済破壊政策を実施し、株価暴落と金融危機をもたらした。最悪だったのは、小泉政権が「大手銀行の破綻も辞さない」と公言しておきながら、最終局面で大手銀行を税金で救済したことだ。

竹中平蔵氏は10月19日のテレビ朝日番組で、りそな銀行処理に際して、「経営者を入れ替えた」と発言し、責任追及を実施したかのような説明をしたが、まったくの詭弁である。金融機関が破綻する場合、問われるべき第一の責任は「株主責任」である。竹中金融相は株主責任を問うどころか、2兆円の公的資金投入で株主に利益を供与したのだ。

りそな銀行経営陣は、小泉政権の経済政策を堂々と批判する気骨ある優良経営者であった。りそな銀行は監査法人、会計士協会と連携した政策当局に陥れられた疑いが濃厚なのだ。詳細は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に記述したので、是非ご一読賜りたい。竹中金融相はりそな銀行幹部が小泉政権批判を公言していたから、りそな銀行を標的にした可能性が高いのだ。

りそな銀行幹部が追放され、小泉政権近親者がりそな銀行幹部に送り込まれた。その後、りそな銀行が自民党への融資を激増させ、その事実を報道した朝日新聞記者が東京湾で遺体となって発見されたことが伝えられている。朝日新聞は記者の死亡と記事とは関係ないと説明しているが、真相は明らかにされていない。

2003年の金融処理は、日本の金融行政史上最大の汚点と言って間違いない。金融危機が表面化して、責任ある当事者である金融機関を税金で救済すれば、悪い実例が歴史に刻まれることになる。銀行のハイリスク経営、放漫経営は抑制されるどころか、助長されてしまう。これを「モラル・ハザード」という。

世界的な金融危機の拡大に対応して、各国政府が金融機関への公的資金投入策を提示しているが、重大な「モラル・ハザード」を引き起こす可能性を十分に考えなければならない。金融と政治権力とは癒着しやすい傾向を有している。金融資本が政治権力の裏側に存在していることも多い。

10月22日、米国大手銀行ワコビアの2008年7-9月期決算が発表された。最終損益は237億ドル(約2兆4000億円)の赤字になった。サブプライム金融危機の余波が依然として、激烈であることを示している。NYダウは前日比514ドル安の8519ドルに急落した。10月10日の8451ドルに接近した。

日経平均株価も10月10日に8276円まで急落したのち、10月15日には9547円まで反発したが、10月23日午前には、一時8016円まで下落している。株価の底値はまだ確認されていない。

米国の不動産価格下落がまだ4合目程度しか通過していないと見られる。米国の金融危機の原点は不動産価格下落にあり、不動産価格下落がデリバティブ金融商品の拡散によって、巨大損失を発生させている。金融危機の全貌はまだ明らかになっていない。

欧米市場での金融問題拡大を背景に、為替市場では欧米通貨が急落している。また、原油を中心とする商品市況も急落している。日本は、相対的に金融危機の程度が軽微であり、日本円が主要通貨および商品に対して値上がりしている。

円ドルレートは10月23日の東京市場で、1ドル=97円台に上昇している。円は、米ドルだけでなく、ユーロ、ポンド、加ドル、豪ドルなどに対しても急反発している。

1ユーロ=170円(本年7月)が

1ユーロ=124円に、

1ポンド=215円(本年7月)が

1ポンド=157円に、

1加ドル=107円(本年月)が

1加ドル=77円に、

1豪ドル=104円(本年7月)が

1豪ドル=63円に、

急変している。

 日本円は、米ドルに連動して、2000年から2008年にかけて暴落してきた。行き過ぎた金融緩和政策が円暴落の原因だった。米国が超金融緩和政策を実施し、ドル暴落の危機に直面したが、日本政府は50兆円以上の円売り、ドル買い介入を実施して、米ドルの暴落回避に協力した。日本が米国のドル暴落路線に道連れにされたと表現することもできる。

 日本政府は1兆ドル(約100兆円)の外貨準備を野晒(のざら)しにしている。円ドルレートが1円円高になるごとに、1兆円の評価損が発生する。野党は国会で、為替レート変動に伴う外貨準備の損失と、外貨準備を放置した責任について、政府を徹底的に追及しなければならない。

 現存する外貨準備については、早急に残高を圧縮する必要がある。景気対策も社会保障関係支出も、国会で財源を論議している間に、日本の損失が激しく拡大してしまうからだ。

 政府は臨時国会に、地域金融機関に対して公的資金による資本注入を可能にする金融機能強化法改正案を提出する。強化法改正案が農林中金まで対象としており、「信用収縮対策」と「金融機関支援」の二つの関係が問題になる。

 国民の税金を投入するのは、「金融システム」という「社会の公器」を守ることに限定しなければならない。「金融」と「政治権力」は癒着しやすい。現実に癒着している。「金融システムを守る」の言葉を隠れ蓑にして、「金融機関への補助金」が投入され、政治と金融機関の癒着が強められてきた過去が存在する。野党は「責任処理を伴わない公的資金投入」を認めるべきでない。

 麻生首相は、『文藝春秋2008年11月号』の表題に「小沢代表よ、正々堂々と勝負しよう。私は絶対に逃げない」と明記しておきながら、逃げの一手に転じている。一国の首相が、活字にして全国民に明らかにした決意を実行しないのでは、世間の笑いもの以下になる。

 野党は、首相が求めた補正予算成立、テロ特措法議決、に全面協力した。総選挙への買収工作である「追加景気対策」を発表することも容認している。これだけの条件がそろえば、解散総選挙を回避する理由はなくなる。

 金融危機は発生しているが、金融危機は今後、数年間は持続する可能性が高い。米国でも大統領選挙は予定通り実施される。時代は大きな転換点にさしかかっている。国民の審判を仰ぎ、本格政権を樹立して、新しい時代に対応するべきである。

 市場原理主義を基軸に据え、大資本・官僚・外国資本の利益拡大を目指す政府と、セーフティーネットを強化し、すべての国民が健康で豊かな生活を実現できる社会の構築を目指す政府の、どちらを国民が望むのか。国民が政権を選択するのが総選挙の意味である。

 国民の審判を仰ぐことは正しい判断である。民主党の石井一代議士が予算委員会で「明確に書いたなら実行しろ、実行しないなら撤回しろ」と麻生首相に問い質したのは当然だ。これ以上「逃げる」醜態を晒すべきでない。

(追記)

本記事、本文後段に、

(追記)「麻生首相の連夜の会合について、北海道新聞記者とのやり取りを毎日新聞が伝えているので、転載する。」

と記述したうえで、毎日新聞社10月23日付朝刊配信記事

「麻生首相:あす就任1カ月 連夜の「会合」批判にキレる

 ◇有名ホテル、高級飲食店・・・密談説も」

と題する記事を転載して、挿入しておりました。本ブログ記事が首相の行動について記述したものであったため、読者の皆様の参考になると考えて転載させていただきましたが、記事部分を削除させていただきました。

 当初は、転載記事を挿入したのちに、文章を書き加える予定でしたが、ブログ編集サイトでリッチテキストモードに転換することができなくなり、加筆を断念した経緯がありました。そのため、引用部分についての説明が不十分になってしまいました。

 当該毎日新聞記事は、現在は削除されている模様です。

 なお、産経ニュースが

【麻生首相ぶらさがり詳報】「ホテルのバーは安全で安い」(22日昼)

と題する記事をネットに掲載され、ぶらさがり会見部分については、ほぼ同様の内容を記載していているので、リンクを張らせていただきます。ネット記事が削除される可能性がありますので、キャッシュを保存されることをお薦めいたします。

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2008年10月 7日 (火)

国会論戦で表出する麻生政権の問題点

予算委員会での論戦が始まった。「年金」、「資料事前検閲」、「天下り」、「猛毒米流通事件」など、国会で論じなければならない問題が山積している。論戦を通じて麻生政権の問題点が浮き彫りになっている。報道各社は国会論戦を詳細かつ正確に伝える必要があるが、多くのメディアが偏向報道を継続している。

年金データの杜撰(ずさん)な取扱いの問題に対して、国民は怒りと不信の気持ちを強めている。年金データが消滅した「消えた年金問題」に加えて、新たに社会保険庁が組織的に関与して年金データを改ざんした「消された年金問題」が明らかになった。

2007年7月の第21回参院選で安倍晋三首相は

「宙に浮いた年金5000万件は来年の3月までに名寄せして、最後のお一人までしっかりとお支払いします」

と演説した。

参院選で配布された「安倍晋三首相より、国民の皆さまへ」と題したビラは、安倍氏の署名をつけて、

「自民党は責任政党です。出来ることしかお約束いたしません」

「最後のお1人に至るまで、責任を持って年金をお支払いすることをお約束します」

と明記した。

安倍内閣メールマガジン(第31 2007/05/31)は、

「私の内閣においては、年金の「払い損」は絶対に発生させません。
1億人の年金加入者に対して、導入前に3億件あった番号を整理、統合する作業を始め、導入直後にも2億件が残りました。その後、一つひとつ、統合を進めた結果、今残っているのが5千万件です。これらについて、徹底的にチェックを進め、1年以内に全記録の名寄せを完了させます。」

と記述した。

これらの約束が守られなかったことは言うまでもない。

公約を守らなかったことについて町村信孝官房長官は、昨年12月の記者会見で、「来年3月までにやるのは、5000万件の(記録の)解明をすることだ。来年4月以降も精力的にやっていこうということで、最後の一人、一円まで(払うことを)全部、来年3月までやると言ったわけではない」と釈明した。

町村官房長官は、

「選挙中だから『年度内にすべて』と縮めて言ってしまった」

とも発言した。

また、舛添厚労相は紙台帳とコンピューターデータとの突合問題を「社保庁の後継組織ができる時(10年1月)には解決する決意」と表明していたが、公約実現が困難であることが判明すると、

「表明したのはその方向で取り組むとの「決意」であって「公約」ではない」

と言い逃れた。

 「消えた年金問題」を解決するには「紙台帳とコンピューターデータとの突合」を完了しなければならないが、紙台帳のデータは8.5億件ある。10月6日の国会質疑に従えば、これまでのデータ突合のスピードで単純計算すると、データ突合を完了するには25年の時間を要することになる。また、すでにコンピューターに入力されているデータについては、5000万件の問題されるデータのうち、これまでに処理された件数を基準に問題解決の時間を単純計算すると12年の時間を要することになる。

 舛添厚労相は10月6日の国会答弁で、「60年間の社保庁の不祥事の山をこつこつこつ明らかにしているんだ。初めから分かっていれば苦労しない」と逆切れし、問題処理についての見通しをまったく示さなかった。厚労相が社会保険庁の責任を負う立場にあることを認識しない発言である。企業が不祥事を起こしたら、組織のトップが最終責任を負うのは当然である。それを「社保庁の不祥事をこつこつ明らかにしている」と発言するのは、自己の問題と位置付けていない考えの表れだ。「社保庁の不祥事」との表現は、「自分に責任のない他人が引き起こした不祥事」であるとの姿勢を示している。

 野党が霞が関省庁に求める資料請求について、自民党の国会対策委員会が各省庁に対し、野党要求の資料を野党に提供する前に、自民党の国会対策委員会に資料を提出し、了解を取ることを求めた問題も国会で取り上げられた。公務員は行政部門の所属し、政治的な中立が求められる。議院内閣制の下では立法府における与党が内閣を組織するから、行政府と立法府における与党が強い関係を持つのは当然だが、政治的に中立でなければならない霞が関省庁が、与党からの直接的な指示に従うことは、明らかに違法である。

 10月7日の衆議院予算委員会の質疑で、石破農水大臣が自民党による事前検閲が問題であり、問題のある行動に対する謝罪を示したが、自民党による情報隠ぺい、行政官庁に対する違法な介入の実態の一部が明らかにされた。野党の要求を受けて、河村官房長官は与党と省庁の関係、野党やマスコミの省庁への資料請求についての政府統一見解をまとめ、国会に提示することを確約した。

 国会審議を通じて、自民党政権のさまざまなひずみ、歪みが明らかになっているが、麻生政権の政策基本姿勢の一端を明確に示したのが「天下り問題」に対するスタンスである。民主党の長妻昭議員は、2007年4月時点で、霞が関省庁からの政府関係機関への「天下り」が26,632人、4696機関に及んでいる事実を明らかにした。これらの「天下り機関」には、1年に12兆6047億円もの国費が投入されている。

 「天下り」は「官僚主権構造」、「官僚利権」の象徴である。「天下り」を根絶することが日本の統治システムを刷新する「決め手」になる。自民党政権は国家公務員制度改革を謳(うた)いながら、「天下り」を廃止する姿勢をまったく示していない。

 国家公務員法が改正され、「官民人材交流センター」が設立されることになっている。これまで各省庁が斡旋していた天下りを、内閣府に設置するセンターに一元化する構想だが、「天下り」を禁止するのではなく、「天下り」を制度的に確立するものである。センターが設置されると3年以内に各省庁の天下り斡旋は禁止されることになる。

 経過期間については、「再就職等監視委員会」が設置され、監視委員会が各省庁の「天下り」斡旋についてのルールを定めることとされている。麻生首相は、監視委員会の委員人事が国会同意人事であり、民主党が賛成せず、監視委員会を発足できないことを理由に、現状の天下りを容認する考えを示した。

 長妻議員は霞が関省庁が退職職員の2度目の天下りを斡旋し続けていることも指摘し、追及した。民主党は国家公務員の年功制賃金制度を修正し、国家公務員の終身雇用を保証したうえで、「天下り」の全面禁止を主張している。甘利明行革相は公務員には雇用保険が適用されないため、ハローワークを利用した再就職先探しは認められないとの答弁を示した。民主党は公務員にも労働基本権を認め、雇用保険も適用し、一般国民同様に、再就職を希望する場合にはハローワーク等を活用するべきだとの主張を示した。

 長妻議員は麻生首相に対して、各省庁が斡旋している「天下り」の「渡り」の斡旋を即時禁止することを要請したが、麻生首相は拒否した。

 麻生政権が官僚天下りを全面擁護する姿勢が明確に示されている。麻生政権は官僚機構を味方につけて総選挙を戦う戦術を採用していると考えられる。「国際評論家小野寺光一の政治経済の真実」主宰者の小野寺光一氏は、民主党が政権奪取するためには、官僚機構と敵対しないことが必要であるとの主張を示されている。

 しかし、私は「政権交代」により実現しなければならない目標は「官僚主権構造」の打破であり、「政官業外電=悪徳ペンタゴン=利権互助会の利益を追求する政府」を倒し、「一般国民の幸福実現を追求する政府」することだと考える。この意味で、「天下り」根絶は、総選挙における最重要の争点として掲示するべきだと考える。この問題については「カナダde日本語」の美爾依さんと見解を共有する。「政権交代」実現のために、「小異を残して大同に付く」ことが大切だが、「天下り」問題は本質に関わる問題であり、私の見解を改めて明示しておきたい。

 国会論戦の報道姿勢にバラツキが見られ始めている。NHK、日本テレビ、フジテレビの政権迎合姿勢は不変だが、TBSが野党の主張を従来に比べると詳しく紹介し始めた。「機を見るに敏」なみのもんた氏の発言姿勢が急変している。

 政権迎合番組の代表はテレビ朝日「TVタックル」と「サンデープロジェクト」だが、10月6日「TVタックル」では、MCの北野たけし氏が計算し尽くした発言を示したことを見落とすことができない。北野氏は「民主党は魅力的な若手が多いが、人気のない代表が最大の問題である」ことと、「蟹工船ブームの共産党に頑張ってもらわなくては」といった趣旨の発言をした。

 小沢氏のイメージを悪化させることが、「TVタックル」のメインテーマとされていると考えられる。この主題に沿った発言を、北野氏はタイミングを見計らって行ったのだと考えられる。また、反自民票の増加が見込まれるなかで、反自民票が民主党に流れれば、自民党は一段と厳しい状況に追い込まれる。反自民票が民主党ではなく、共産党に流れることを自民党は希望している。「TVタックル」では「共産党」を大きなテーマとして取り上げたこともあった。北野氏の発言はやはり計算され尽くした「政治的」発言と捉えられる。

 他方、同番組に出演している江田氏の発言が激変した。これまでの「自民党寄り」発言から、「民主党寄り」スタンスに激変した。次期総選挙での自民敗北の可能性が高まりつつあることを受けてのスタンス修正と考えられる。同じく「脱藩官僚の会」のメンバーであり、自民党の中川秀直氏と一体化している高橋洋一氏が、懸命に民主党批判を展開していることと好対照を示していた。

 フジテレビは10月7日朝の情報番組で、株価急落を理由に総選挙先延ばしを正当化する主張を全面的に展開し、麻生政権の総選挙先送りに対する援護射撃を積極的に買って出ていた。

 「年金」、「国会が請求する資料事前検閲」、「天下り」、「猛毒米」などの各問題についての国会論戦を通じて、与野党の基本政策が浮かび上がってくる。有権者は国会論戦を直接、じっくりと吟味して視聴し、偏向報道に惑わされずに、与野党の基本政策を正確に把握する必要がある。正しい情報に基づき、正しく「政権選択」しなければならない。

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2008年10月 6日 (月)

麻生政権②「財政政策の中味」が最重要

「政権選択」選挙においては、「一般国民」の利益を優先する政治と、一般国民ではない「特定の利害関係者」の利益を優先する政治、のいずれを国民が選択するのかが問われる。

与党と野党の主張する政策方針の対立軸は以下の三点だ。

①弱肉強食奨励VSセーフティーネット強化

②官僚利権擁護VS官僚利権根絶

③対米隷属外交VS自主独立外交

 政府の活動を知るもっとも分かりやすい資料は「予算」である。財政資金をどのように調達し、財政資金をどのように配分するかを示すのが予算である。

 財政政策の機能には、①資源配分、②所得再分配、③景気安定化、の三つがあるとされている。経済用語にすると分かりにくくなるが、①どのような対象に財政資金を使うか、②経済格差を政策がどのように調整するか、③不況対策に財政政策を活用するか、の三つの機能があるということだ。

 ③の「景気対策と財政運営」の問題について、二つの対立する考え方がある。ひとつは「景気対策は効果がなく、財政運営はひたすら緊縮に努め、財政赤字削減に努力すべきである」との考え方だ。これを私は「近視眼的財政均衡至上主義」と呼んできた。「財政再建原理主義」と言い換えることもできる。

 対立する考え方は、「国の役割は国民生活の安定であり、政府は必要に応じて財政政策を活用すべき。経済成長を維持することが財政再建には不可欠で、経済を無視した緊縮政策の強行は財政再建にも逆行する結果を招く」との考え方だ。

 私は後者の主張を貫いてきた。橋本政権が1997年度の「9兆円の負担増加策」を決めた時も、小泉政権が2001年度に超緊縮財政を強行した時も、私は「行き過ぎた緊縮財政は景気にも財政にも悪い結果を引き起こす」と警告した。実際に、ふたつのケースのいずれにおいても、警告通りの結果が生まれた。2001年度のケースでは、橋本元首相も小泉首相に警告を発したが、小泉氏は警告を無視した。

 小泉政権は結局、2001年度も、2002年度も5兆円の追加財源調達を含む大型補正予算編成に追い込まれた。偏向メディアが、「小泉政権は財政出動を実行せずに景気回復を実現した」との「大嘘」を流布しているが、小泉政権は2年連続で大型補正予算編成を実行している。

 麻生首相は、財政再建原理主義からの訣別を宣言した。また、自民党の中川秀直氏も同様だ。ただ、この主張は私が2001年の小泉政権発足当初から主張してきたもので、麻生氏も、中川氏も、「財政再建原理主義」から、私が主張してきた「経済成長重視主義」に「転向」したものである。

 麻生氏と中川氏は、小泉政権の中枢に座り続けた人物である。小泉氏に異を唱えて、自らの主張を貫いてきたわけではない。麻生氏は小泉政権が超緊縮財政を実行した2001年の小泉政権発足当初から2003年9月にかけて、自民党政調会長の職にあった。政調会長は自民党のおける政策決定の最高責任者である。小泉政権の政策決定責任者として麻生氏が小泉元首相の財政政策運営に強く反対した形跡はない。

 国民生活を重視して、小泉元首相と対峙してでも自らの主義主張を貫くような行動はまったく示されなかった。ひたすら小泉元首相に恭順の意を示して、小泉政権の政策に追従し、要職ポストを得ることに専心したのである。自己の政治的利益のためには原理原則をねじ曲げてしまう、「現世利益優先」の基本姿勢がうかがえる。

 財政政策運営において、「財政再建原理主義」を否定し、「経済成長重視主義」を唱える人々が増えてきたことは望ましいことだが、目先の自己の利害でくるくると変節する人物が多く、信頼することができない。福田政権の経済財政担当相だった大田弘子氏は、「財政政策を活用する国は存在しない」とまで言い切った。権力迎合のマスメディアも財政政策活用を全面批判し続けてきたのだから、麻生政権の景気対策を全面批判するのが順当だが、突然、筆鋒を鈍らせている。

 麻生首相が成長重視の主張を示したのに、私が麻生政権を支持しない理由のひとつは、麻生氏が「信念を貫くことより、ポストなどの現世利益を優先し、小泉政権の経済崩壊政策にすり寄り、加担した」ことだが、より重要な理由は「政府の役割」についての麻生氏の基本スタンスに同意できないことだ。

 「神州の泉」主宰者の高橋博彦氏が、麻生首相に対する不信感を表明されている。高橋氏は郵政民営化問題に対する麻生氏の基本姿勢に強い疑念を提示されている。小泉政権の「売国政策」を糾弾しなければならない、との視点から、私も高橋氏の主張に賛同する。国民新党の自見庄三郎議員が参議院での代表質問で指摘された極めて重大な問題については、改めて意見を提示する。

 「日本経済復活の会」の小野盛司会長は、「経済成長重視」の視点から、麻生氏が提示した方針を歓迎しており、この点については、私も理解できる。しかし、私は、財政の「資源配分機能」、「所得再分配機能」をより重視しており、「景気安定化機能」についての政策スタンスだけを理由に、麻生政権を支持することができない。

 財政活動は政府の行動の中核である。どのような政治理念に基づき、財政資金をどのように配分するかが、「政治そのもの」であると言っても過言ではない。「不況に際して財政政策を活用するかどうか」以上に、どのような理念の下に、どのような目的で「財政資金配分を実行するのか」が、「政治」を評価するうえで不可欠な視点である。

 財政出動をするのに、「不透明な利権に結びつく公共事業」を増額するのと、「子育て支援の給付金」を、ルールを定めて一律給付することは、まったく異なる効果を生み出す。「いくら使うか」以上に、「何にどのように使うか」が重要なのだ。

これまで何度か記述してきたように、政府支出を「裁量支出」と「プログラム支出」に区分することが可能だ。「裁量支出」は利権に結びつきやすい。政治屋と財政当局は「裁量支出」を強く選好する。「裁量支出」は、「さじ加減」で支出を決定できるから、「権力」=「利権」そのものになる。

これに対して、社会保障支出を中心とする「プログラム支出」は、制度を確定すると、制度にしたがって自動的に支出が実行される。透明な「プログラム支出」は「利権」に結びつきにくい。景気対策は透明性の高い「プログラム支出」を中心に実施するべきなのだ。

ガソリン価格急騰に伴う財政政策も、「ガソリン税暫定税率廃止」がもっとも透明で分かりやすい。漁業協同組合を介在させ、細かな基準を設定して補助金を配分する政策には、裁量と恣意が入り込みやすい。政治屋と財政当局は後者の手法を選好する。予算配分の「権力」=「利権」を手にできるからだ。

民主党が提案している諸施策は、「プログラム支出」を基軸にしている。「最低保障年金の全額税源化」、「年金制度一元化」、「子育て手当の支給」、「高速道路無料化」、「公立高校授業料無料化」、「私立高校授業料補助、大学学費補助」、「農家の戸別所得補償制度」などのいずれも、透明性を確保する「プログラム支出」に分類することができる。

破壊されたセーフティーネットを再構築する提案も多く示されている。「後期高齢者医療制度」をいったん廃止し、新しい高齢者の医療保障のあり方を検討するのは正しい手順だ。パートや派遣労働者の非正規雇用者の待遇を正規雇用者と同一にすることも、極めて重要な施策である。

財政政策で重要なことは、「透明な制度で施策を実行すること」と、「国民生活の安定を目的とする施策を実行すること」なのである。

自民党政治は、「市場原理主義」に基づき、「弱肉強食を奨励」し、「格差拡大を容認」し、「セーフティーネットの破壊」を推進するものだった。この施策に対する対極の政策が、「セーフティーネットの再構築、強化」、「高齢者、障害者、若者、労働者を支援し、これらの一般国民の生活を安定化させる施策の強化」なのだ。

日本経団連会員企業が2007年に実施した政党の政治団体に対する寄付総額を見ると、民主党への寄付が8320万円であったのに対し、自民党への寄付は29億1000万円だった。自民党が「大資本」の利益増大に向けての施策に熱心であるのは、自民党が「大資本」から「買収」される構造を有していることからすれば順当である。

また、麻生政権は日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行の、いわゆる「財務省天下り御三家」に対する、財務省からの天下り人事を全面的に擁護している。自民党総裁選でも「天下り利権排除」が大きな論点として提示されたにもかかわらず、麻生政権は「天下り利権」の完全擁護の姿勢を変えようとしていない。

麻生政権が「大資本」、「特権官僚」と癒着し、「大資本」と「特権官僚」の利益保護に軸足を置いていることがよく分かる。対極の政策は「大資本」と「特権官僚」の利権を排除して、「一般国民」の利益を重視する施策を実施することだ。民主党が提示した政策は、「一般国民」の利益重視を鮮明に示すものである。

「外交」の方針についての小沢一郎民主党代表の説明は明快だった。小沢氏は「日米同盟を日本外交の基軸に据える」ことを明確に示したうえで、「日米同盟を基軸に据えることは米国の言いなりになることではない」と述べた。小泉政権以来の自公政権が「米国の言いなり」になり、日本国民の利益ではなく、外国勢力の利益を優先して政策を運営してきたことを、根本から糺(ただ)す必要があることを強調した。

「セーフティーネットの再構築と強化」、「官僚利権の根絶」、「対米隷属を排除し自主独立外交を確立」、の三つの基本方針は麻生政権の基本方針に対する対論である。不況に際して財政政策を活用すべきは当然の判断であり、問題は政策の内容である。「誰のための政治であるか」が最も重要な視点だ。「政官業外電=悪徳ペンタゴン=利権互助会のための政治」を継続するのか、「一般国民の幸福実現のための政治」に転換するのか。「政権選択」で問われるのは、「CHANGE」を望むのか、いずれの政権を選択するのか、についての国民の判断である。

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2008年10月 1日 (水)

麻生首相代表質問VS小沢代表所信表明演説

麻生太郎首相が9月29日、所信表明演説を行ったが、経済運営の具体的方針、目指すべき日本のビジョンがまったく示されなかった。鳩山由紀夫民主党幹事長の論評通り、「野党の代表質問」だった。

所信表明演説の冒頭、麻生氏は次のように述べた。

「わたくし麻生太郎、この度、国権の最高機関による指名、かしこくも、御名御璽(ぎょめいぎょじ)をいただき、第92代内閣総理大臣に就任いたしました。

(中略)

この言葉よ、届けと念じます。ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん方のもとに。」

御名御璽(ぎょめいぎょじ)とは、君主の名前(の署名)および公印のことを指して公的に用いられる呼称で、教育勅語の末尾にも見られる表現だ。時代錯誤も甚だしい。民主主義国家日本の首相に就任したのではなく、大日本帝国憲法下にある立憲君主制国家の首相に任命されたものと考えているのか。皇室と姻戚関係を持つことを、広く国民に知って欲しいとの希望の表明なのだろうか。

麻生首相の所信表明演説の動画を「カナダde日本語」様が掲載してくれているので、ご高覧賜りたい。冒頭のひと言からも、麻生氏の目線の位置が推し量られる。1979年の総選挙に立候補した際の立会演説会で、麻生氏が「下々の皆さん」とあいさつしたエピソードは有名だが、「優劣意識」の強さは「強い劣等感」の裏返しだと感じられる。中島敦『山月記』にある「臆病な自尊心」と言うべきだろう。

小泉政権以来の「市場原理主義政策」によって、日本社会は荒廃した。「非正規雇用や働く貧困層」の激増は、日本の若者の活力と未来への夢を奪っている。戦後の復興と発展に尽力した高齢者は、「姥捨て山制度」の「後期高齢者医療制度」の屈辱に直面させられている。ハンディキャップを背負った障害者に対する「障害者自立支援法」による政府支出削減は、国民の生存権を深刻に脅かしている。

「市場原理主義」は本家の米国でも破綻を示し、世界経済は深刻な不況に突入しようとしている。国民の不安は拡大し、政府に対する不信感は日増しに強くなっている。その国民の心情を、国民の立場に立って考えるのが、リーダーの務めだ。リーダーには、国民の心情を慮(おもんぱか)る「想像力」が求められるが、「下々」とは対極の「高み」にいることを「プライド」と勘違いしている麻生氏に、それを期待することは難しい。

「この言葉よ、届けと念じます。ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん方のもとに」の言葉に、麻生氏の潜在意識が集約して示されている。「届けと念じる」のは、麻生氏が「自分は国民から遠く離れた存在である」と考えているからだ。「国民の一人」ではなく、麻生氏は自分自身を「下々の一般国民とは離れた所に位置する」と考えたいのだと思う。

「ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん」の表現を聞き流すこともできない。

「元気を失いがちな国民」の表現も、「国民の問題」を「自分の問題」とは捉えていないことを如実に示している。福田前首相同様、麻生氏にとっても「国民の生活」は「他人事」に過ぎないことを示している。

また、「元気を失いがちな」の表現は、「国民が元気を失う傾向を有する」との麻生氏の「観察」を示すのだが、国民が原因もなく、勝手に「元気を失っている」わけがない。「国民が元気を失っている」と観察するなら、「国民が元気を失っている」原因は何であるのか、との考察に、なぜ思いを巡らせないのだろう。

麻生氏が中枢に存在し続けた、小泉政権以来の自公政権が国民生活を破壊してきたことについて、最低限の自責の念を抱くなら、「ともすれば、元気を失いがちな」の言い回しを、口にはできないはずだ。

治療に失敗し続けて、病状を悪化させてしまった患者に対して、担当医が「ともすれば、病状が悪化しがちな患者に、この声よ、届けと念じたい。患者は元気にならねばなりません、と」と、発言しているようなものだ。

国民生活に対する政治の責任への自覚が微塵(みじん)も存在しないことがよく分かる。「国民が元気を失っている」なら、「政治のどこに問題があったのか」を自省し、「国民が元気になれる」ために、「何をすればよいか」をじっくりと考えることが政治家の務めであるはずだ。

小泉政権以来の自公政権の政治が、国民生活を疲弊させ、国民を不安と絶望の境遇に追い込んだことに対する自覚と反省が欠如している。

麻生氏は政治の停滞を「民主党の責任」だと言わんばかりの発言を繰り返したが、聞くに堪えないものだった。政治の意思決定が困難になっている原因は、「衆参ねじれ」にある。参議院の野党多数議席は国民が選挙で付与したものだ。野党の主張、行動は国民の声を代弁するものだ。

自公政権が政権として存在できるのも、国民が衆議院で与党に多数議席を付与しているからだ。政治の意思決定権限を持っているのは、国民なのだ。日本国憲法は「国民主権」を明確に定めている。国民の意思表示によって、参議院における野党の過半数確保が生じたことを踏まえれば、衆議院で多数を確保しているとはいえ、政権与党は参議院を支配する野党の意向を最大限、尊重する責務を負っている。

野党に対する礼を失した暴言、批判は、有権者を冒涜(ぼうとく)するものである。民主主義は多様な意見、主義主張の存在を認め、少数意見をも尊重しながら、討論と説得のプロセスを重視し、最終的には多数決で意思決定を実現する政治の仕組みだ。

麻生首相は自公政権を代表して、自公政権の目指す政策の方向、未来への国のビジョンを示すべきであった。総選挙を意識した、品格なき誹謗(ひぼう)中傷の言葉だけを盛り込んだ演説は、民主党の品格ではなく、自民党の品格を著しく引き下げたことを忘れてはならない。

麻生氏は民主党の政権公約の「財源」を問題にする。しかし、民主党は「財源」問題について、具体的かつ詳細な裏付けを明示しつつある。民主党は大きな財源を捻出して、一般国民に対するサービス、施策、プラグラムを充実させることを提案しているが、その基本構造は「政府内部の無駄を排除して、国民生活向上に向けての施策に再配分する」ことだ。

民主党は「官僚の天下り利権根絶」をマニフェストに明記する。自公政権には絶対に示すことができない政策である。これまで官僚が死守してきた「天下り利権」に初めて本格的なメスが入れられようとしているのだ。「天下り利権根絶」は私の20年来の持論である。私の持論を民主党が全面採用してくれたことを、非常に喜ばしく思う。

「政権交代」が実現すれば、初めて「山は動く」のだ。

官僚機構は「天下り利権死守」に向けて、総力を結集してくる。「政官業外電の悪徳ペンタゴン」は「政権交代阻止」に向けて、手段を選ばず、攻撃してくる。解散総選挙日程が先送りされる可能性が高まったのは、自民党の選挙区調査で「政権交代」予測が明らかになったからだ。

総選挙の争点は、

①弱肉強食奨励VSセーフティーネット強化

②官僚利権死守VS官僚利権根絶

③対米隷属VS独立自尊

の三点だ。民主党の①セーフティーネット強化策の財源は、②官僚利権根絶、から捻出される。具体的かつ現実実現性の高い財源論が示されつつある。

偏向NHKをはじめとするマスメディアは、「政官業外電=悪徳ペンタゴン」の広報部隊として、総選挙に向けて、民主党政権公約の財源問題を集中攻撃する。しかし、ひるむことはまったくない。民主党は堂々と財源問題を明確に示すべきだ。

「官僚・大資本・マスゴミ・外資+政治屋」が利権互助会を形成し、一般国民を食いものにしてきた政治を「CHANGE」しなければならない。「CHANGE」は「政権交代」である。10月1日の代表質問では、小沢一郎民主党代表による「所信表明」が示される。日本の新しい時代の幕開けを告げる演説になると考える。

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2008年9月28日 (日)

中山成彬国交相が引責辞任

9月24日に発足した麻生太郎政権で国交相に任命された中山成彬氏が国交相を辞任することになった。一連の暴言が招いた混乱の責任をとる。しかし、中山氏は日教組に関する発言を撤回しておらず、日教組などは「辞任だけでは解決しない」とのコメントを発表している。麻生首相の任命責任が問われることは必至だ。

この問題については、すでに「カナダde日本語」の美爾依さんが、関連記事をまとめて掲載されており、ご高覧賜りたいが、麻生政権の体質を露骨に表わす問題の噴出であるだけに、波紋が広がることは避けられないと思う。

話が横にそれるが、本ブログで私は私が巻き込まれている刑事冤罪事件についての情報も発信してゆきたいと考えている。しかし、日本の政治が歴史的重要局面にさしかかっており、ブログでは、政治問題に焦点を絞って記事を掲載している。刑事事件裁判の重大な事実誤認については、今後、機会を見ながら記事を掲載して参りたい。

こうしたなかで、「植草一秀氏を応援するブログ」様が2004年から、一貫して貴重な情報を提供くださっていることに心から感謝申し上げたい。また、同ブログに、「植草一秀氏の事件」様mojoコメント備忘録」様をはじめとして、多くの心ある方が極めて重要な情報を提供し続けてくださっている。本ブログでは、検索サイトでの情報をもとに、本ブログ紹介記事に対して、謝辞を記述させていただいているが、検索サイトに情報が掲載されないために、日常は当ブログでの言及が少なくなってしまっている。記してお詫びを兼ねて心からの感謝を申し上げたい。

本題に戻るが、中山氏の発言は暴言と言わざるを得ない。小泉元首相の元秘書である飯島勲氏の著書『代議士秘書 永田町、笑っちゃうけどホントの話』に、「敵を欺くにはまず味方を欺く。これ、権謀術数の第一歩と心得よ」(82ページ)との記述が出てくる。

中山氏は麻生政権を打倒するために倒閣勢力が送り込んだ秘密兵器なのか、あるいは、自民党に迷惑な行動に見せかけて、実は総選挙に向けて野党を攻撃するために激しい行動を示しているのか、と思わず勘ぐってしまうような暴言だ。

中山氏の発言を、共同通信配信記事を転載して掲示する。

「国交相、成田反対闘争は「ごね得」 

日本は単一民族発言も」

中山成彬国土交通相は25日、共同通信社など報道各社とのインタビューで、成田空港建設への反対闘争について「ごね得というか、戦後教育が悪かったと思う」と批判。外国人観光客の誘致策に関連しては「日本は随分内向きな、単一民族といいますかね、あんまり世界と(交流が)ないので内向きになりがち」と発言した。

さらに大分県の教員汚職事件にも言及し、日本教職員組合(日教組)と絡め「大分県教委の体たらくなんて日教組(が原因)ですよ。日教組の子供なんて成績が悪くても先生になるのですよ。だから大分県の学力は低いんだよ」と話した。

しかし数時間後の同日夜になり、いずれの発言も「誤解を招く表現であったので撤回します」とのコメントを発表した。成田空港は2010年春に、2500メートルに延伸する2本目の滑走路が供用される予定。供用に向け、国が地元自治体や住民と騒音対策や公共施設整備など地域振興策の話し合いを進める中での新しい所管大臣の発言だけに波紋を広げそうだ。 

2008/9/25 21:53【共同通信】

「ごね得」、「単一民族」、「日教組」の「暴言三兄弟」発言は、当然のことながら、大問題になった。辞任を求める声が自民党内でも強まった9月27日、中山氏は地元の宮崎市で次期衆院選の公認候補を決める自民党宮崎県連の選考委員会に出席した。会合の冒頭で、自民党県連会長は中山国交相の問題発言に対して苦言を呈した。その直後にあいさつに立った中山氏は、改めて暴言を繰り返した。

成田空港などに関する発言を謝罪したが、日教組について「私も言いたいことがある」と切り出し、「日教組を解体したい」「小泉さん流に言えば日教組をぶっ壊せ」と発言をエスカレートさせた。会合を途中退室した後も、記者団に暴言を繰り返した。以下は、時事通信配信記事の転載である。

「大臣にしがみつかない」=日教組は「日本のガン」-中山国交相

中山成彬国土交通相は27日午後、一連の問題発言をめぐり、自らの辞任を求める声が与党内でも出ていることについて「国会審議に影響があれば、(ポストに)きゅうきゅうとしているわけではないが、教育改革、地方の高速道路(の整備)とかをやりたいなという思いがある。しがみつくつもりはないが、(今後の)推移を見守りたい」との考えを示した。宮崎市内で記者団に語った。
 発言に対する野党や世論の反応については「わたしの失言というか、舌足らずというか、言葉狩りに合わないように気を付けんといかん」と述べた。その上で、「日教組が強いところは学力が低い」との発言について「撤回はしない。わたしは日本の教育のガンは日教組だと思っている。ぶっ壊すために火の玉になる」と強調した。 
 自身が支部長を務める自民党宮崎県第一選挙区支部が公共工事の談合で摘発された企業から献金を受けていたことについては「談合にかかわった会社はたくさんあっていちいちチェックしていない。うっかりしていた。返還の手続きに入りたい」と述べた。(了)
2008/09/27 17:51
【時事通信】

「日教組は日本の教育のがん」、「だから大分県の学力は低い」が、文部科学相を経験したこともある現職閣僚が口にする言葉だろうか。大阪府の橋下徹知事が「学力テスト」の結果公表を求め、「くそ教育委員会」と発言した行動と軌を一にしている。中山氏の辞任に伴い、橋下発言がもう一度再検証される必要があるだろう。

各個人がそれぞれに独自の価値観、哲学、政治信条を持つのは自由だ。しかし、日本国憲法の規定に従って行政を司る内閣の閣僚である限り、憲法が定める「基本的人権」を尊重する言動を守ることは、閣僚として最低限の行動規範であるはずだ。

教職員の労働組合は憲法や法律で認められた合法の団体である。日教組の主張や哲学がどれほど中山氏の考え方と異なっていても、その存在や主張は尊重されなければならない。政治権力に迎合しない組織、団体は存在すら認めないのなら、日本は民主主義国家とは言えなくなる。独裁国家になる。

アイヌ民族が日本に古来から在住するなかで、日本を「単一民族国家」と表現することが正しくないことを、中山氏はかつての失言事件で経験済みである。そのなかでの中山発言は、問題を意識しての発言としか考えられない。中山氏の発言は、中山氏が社会のすべての個人がかけがえのない人権を持ち、政府はすべての個人の人権を尊重する責務を負っていることを全否定するものだ。

中山氏は問題が表面化して、辞任が不可避になるなかでも、日教組に関する発言を撤回するどころか、エスカレートさせた。首相が中山発言を問題視するなら、少なくとも問題発言を撤回させ、謝罪することが必要だ。中山氏が発言を正当化している以上、麻生首相の任命責任が厳しく問われることは必定だ。

麻生首相が問題に対してどのような対応を示すかを注目しなければならない。 

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2008年9月24日 (水)

「選挙の時だけ国民目線」政策に要注意

9月24日に召集された臨時国会で参議院本会議は内閣総理大臣の指名選挙を行い、民主党の小沢一郎代表を内閣総理大臣に指名した。一方、衆議院は自民党の麻生太郎氏を内閣総理大臣に指名した。その後、両院協議会が開催されたが意見が一致せず、日本国憲法題67条第2項の規定に従い、麻生太郎氏を内閣総理大臣に指名することが国会の議決とされた。

麻生首相は直ちに内閣を組織し、麻生内閣は9月24日に発足した。麻生氏は自公政権が1年間に2度、政権を無責任に放り出したことに伴い自民党総裁に選出され、首相に就任したが、衆議院選挙によって国民の審判を受けるべきとの世論が高まっており、早期に衆議院の解散総選挙を実施すると見られる。選挙管理内閣の性格を持つ政権が発足した。

kobaちゃんの徒然なるままに」様「飄(つむじ風)」様「こわれたおもちゃをだきあげて」様Japonesian Trans-ApocalypseTrans-Modern New Platonic Trans-Creation, or philosopractical chaosmos」様「へびのように賢く、はとのように素直であれ」様「目からウロコの、ホンモノ探し」様「気がついたことを、感情の任せるままに」様「_~山のあなたの空遠く幸い住むと人のいう~」様「こづかい帳」様、いつもご支援のお言葉を賜り、ありがとうございます。有益なブログ記事をいつもありがたく拝読させていただいております。これからもよろしくお願いいたします。

かつての衆議院選挙で麻生太郎氏は支援者を前に「下々の皆さん」と呼び掛けたそうだが、記者会見で発言するときに、なぜ、もっと柔和に丁寧に話すことができないのだろうか。会見を聞いているだけで不快指数が上昇するのは私だけではないと思う。

「国民の幸福」よりも「自民党が民主党に負けないこと」を優先する本音が節々に表れてしまうのだろう。補正予算審議について、民主党が補正予算成立と解散総選挙を話し合いで決める「話し合い解散」の建設的な提案を示しているのに、「民主党に何度も裏切られてきた」ことだけをカメラの前で強調する「たたずまい」は、首相にふさわしくない。「民主党が裏切った」のではない。自民党が参議院で野党に多数を与えた有権者の意向を無視したために、国会運営が停滞したのだ。

政治は国民のために存在する。自民党のためでも民主党のためでもない。政治家は自らの信念と哲学に従い、正々堂々と自らの主張を述べ、反対意見に謙虚に耳を傾けるべきだ。「建設的な論争」が必要なのであって、敵対勢力を口汚くののしる姿勢で敵対勢力と対峙しても、論争による大きな果実を得ることはできない。麻生氏は「政治家としての品格」を欠いていると感じられる。

発足した麻生内閣では、麻生氏と親しい中川昭一氏が財務相、金融相を兼務した。中川氏も財政出動を主張しており、麻生政権は「財政バラマキ」で有権者の支持を取り付けようとしている。札束で頬をなでて、票を集めようとしているように感じられる。

米国の金融不安が拡大し、日本経済の悪化が進行しているから、多くの国民が「景気を良くして欲しい」と考えている。「景気回復を最優先する」政策方針を適正だと考える有権者は多いと思う。

しかし、早晩実施される総選挙において「景気対策」が「目くらまし」効果を発揮することに、十分な警戒が求められる。有権者は目先の「札束」だけに目を奪われてはならない。

小泉政権が発足してから7年半の時間が経過した。麻生氏は小泉政権の最高幹部の一人だった。小泉政権が実行した政策によって日本社会は、ぼろぼろに崩壊した。民主党の小沢代表が指摘するように、日本は中国、ロシア、米国に次いで、世界で第4位の「格差大国」になった。

国民は「悪政」に苦しんでいる。この「苦しみ」の原因をよく考えなければならない。「不況」によって景気が悪いのは「循環的」な原因による。景気は良くなったり、悪くなったりする。もちろん、不景気の時には景気を良くするための政策が必要だ。しかし、麻生氏が主張する景気対策を打って、国民の生活が本当に良くなるのかをよく考えなければならない。

少し前、昨年の年末まで日本経済は景気回復を続けてきたと言われている。景気回復の期間は戦後最長で、「いざなぎ景気」を超えたと言われた。しかし、国民に「景気回復」の実感はあるだろうか。ほとんどの国民に景気回復の実感は無い。実感の無い景気回復だから「感無景気」(住友生命創作四字熟語入選作)と命名するのが適切だ。「感無」は「桓武天皇」にかけている。これまでの景気回復にはない、一般国民に景気回復の実感がまるでない「景気回復」なのだ。

9月12日付記事「意味不明の「心の通った改革路線」」に記述したように、2002年から2007年までの「景気回復」で、一般国民の懐はまったく温かくなっていない。1998年度から2006年度にかけて、

法人企業統計における法人企業経常利益は21.2兆円から54.4兆円へ156.6%増加したが、

雇用者報酬は274.1兆円から263.0兆円へ4.0%減少した。

景気回復の時期においても、一般の国民の生活はまったく改善しなかった。史上空前の利益に沸き返ったのは、一握りの大企業だけだった。

一般国民の「苦しみ」の原因を考えなければならない。「苦しみ」の原因は小泉政権以来の自公政権が推進した経済政策にある。総選挙では、この点を踏まえて「政権を選択」しなければならない。

「苦しみ」の原因は、「市場万能主義=弱肉強食奨励=格差拡大=大企業優遇=セーフティーネット破壊」の経済政策にある。労働行政の大転換が、「非正規雇用労働者」や「働く貧困層」を激増させる原因になった。「障害者自立支援法」、「後期高齢者医療制度」など、障害者や高齢者をいじめる、冷酷な制度が強行採決で導入されてきた。国民の老後の生活の生命線である年金の記録が杜撰(ずさん)に取り扱われてきたのに、政府は問題を長く放置した。年金記録が改ざんされた問題にも適切に対応していない。「猛毒米」が学校給食や高齢者施設で食事として提供された根本の責任は政府にある。

国民の「苦しみ」は「循環的」な「不況」によって生じているのではなく、小泉政権以来の自公政権が実行した「市場万能主義=弱肉強食奨励=格差拡大=大企業優遇=セーフティーネット破壊」の経済政策によってもたらされているのだ。したがって、いま求められているのは「単なる景気対策」ではなく、「世の中の仕組み」、「政治の仕組み」、「経済運営の考え方」の「転換」=「刷新」である。

9月21日の民主党臨時党大会で、小沢一郎代表が無投票で代表に三選された。小沢代表は民主党の政権構想を明確に示す「所信表明演説」を行った。

「カナダde日本語」の美爾依さんが小沢代表の演説、民主党と麻生氏の政策の比較などを分かりやすく解説してくださっている。また、「生き抜く力」様「晴天とら日和」様も貴重な情報を提供してくださっている。

日本経済が不況に陥り、景気回復の政策が求められていることは確かだ。問題は、どのような政策対応を示すのかだ。小沢代表が示した民主党の政策と麻生太郎氏が提示した政権公約とを比較してみよう。

まず、民主党の小沢代表が示した9項目からなる「新しい政権の基本政策案」の骨子(一部抜粋)を示す。

1.国民が安定した生活を送れる仕組み

 
・「消えた年金記録」問題の解決

・年金制度一元化、基礎(最低保障)年金部分全額税財源化

・後期高齢者医療制度の廃止、医療保険制度の一元化

2.安心して子育てと教育ができる仕組み

 
・子供1人当たり月額2万6千円の「子供手当て」支給 

・公立高校の授業料無料化、大学などの奨学金制度拡充

3.まじめに働く人が報われる雇用の仕組み

4.農業社会を守り再生させる仕組み

・農業者への「個別所得補償制度」創設

5.国民の生活コストを安くする仕組み

 
・全国の高速道路無料化

・ガソリン、軽油の暫定税率廃止

6.税金を役人から国民の手に取り戻す仕組み

・特殊法人、独立行政法人、特別会計の原則廃止

・役人の天下り全面的禁止、税金無駄遣い根絶

7.地域のことは地域で決める仕組み

  
・国の行政は国家の根幹に係わる分野に限定

・国の補助金廃止、地方自主財源一括交付

8.国民自身が政治を行う仕組み

・与党議員100人以上、副大臣・政務官などで政府に配置

9.日本が地球のためにがんばる仕組み

 
・強固で対等な日米関係、アジア諸国と信頼関係の構築

  

一方、麻生氏が示した「日本の底力─強くて明るい日本を作る」と題する基本政策の骨子(一部抜粋)は以下の通りだ。

 
基本政策

1.経済政策

 
・政策減税・規制改革による日本の潜在力を活かす成長政策

・財政再建路線を守りつつ、弾力的に対応

・歳出の徹底削減と景気回復を経て、未来を準備する税制整備。

2.社会保障

 
・安定的な年金財源確保のための国民的議論

3.教育改革

・教員が一人ひとりの子供と向き合う環境整備

4.地域再生

 
・守るだけの農業から外で戦う農業に転換

・食料自給率引き上げ、日本の優れた農産品輸出

5.外交

・日米同盟を強化、アジアの安定

・拉致問題の解決

6.持続可能な環境

・成長と両立する低炭素社会

政治改革:

1.徹底的な行政改革、国の出先機関の地方自治体に移管

2.地方分権推進、道州制を目指す

3.与野党間協議を一層促進、国会審議を効率化

4.自民党が内閣を支える機能強化

麻生氏は、民主党の政策の財源が明確でないと批判するが、小沢代表は「一般会計と特別会計の純支出合計212兆円」の約一割にあたる22兆円を段階的に主要政策の実行財源に組み替えてゆくことを表明した。

「天下り」機関への政府資金投入だけでも年間12.6兆円に達しており、「政府の無駄」を抜本的に排除することによって、財源を捻出することは不可能でないと考えられる。「国民の生活が第一」と訴える民主党の主張が、具体的かつ明確に示されている。

民主党が示す施策は、「子育て支援」、「年金一元化」、「医療保険制度支援」、「高速道路無料化」、「教育費助成」、「雇用者支援」など、透明で、公正な「セーフティーネット強化」策である。

「景気回復」を目的とする財政支出政策を、「国民の生活を第一に考える」、「制度変更を伴う支出」=「プログラム支出」の拡充に充てることが求められる。民主党の政策は、この考え方を実行に移すものである。

これまでの財政政策発動の問題は、「財政政策」が「バラマキ政策」に堕してしまうことだった。麻生氏は「景気回復」、「財政出動」を訴えるが、具体的な方法を明確に示していない。経済政策の基本理念を変えずに、単なる「バラマキ財政」を実行しても、一般国民の生活は改善されない。「いざなぎ景気」を期間で超えた「感無景気」での、一般国民の生活の「苦しみ」持続が、このことを証明している。

これまでの自公政権は、「特権官僚」、「大資本」、「外国資本」の利益だけを追求してきた。メディアが総力をあげて自公政権を支援するのは、「メディア」も「政官業外電の利権互助会」=「悪徳のペンタゴン」に組み込まれているからだ。「利権互助会のための政治」を実行してきた与党が、「選挙の時だけ国民目線」の政策を「付け焼き刃」で陳礼しても、すぐに底が割れてしまう。

「景気対策」の言葉は、「景気対策」の恩恵が広く国民に行き渡るかのような錯覚を生み出しやすいが、「世の中の仕組み」、「政治の仕組み」、「経済運営の考え方」を根本から変えない限り、国民生活の「苦しみ」は消えない。

新たに発足した麻生政権は「官僚機構」が支配する政治の仕組みを強化する側面を併せ持っており、この問題については、改めて記述する。総選挙では、まったく異なる「政治の仕組み」、「経済政策の考え方」を提示する政治勢力が、与党と野党に分かれて激突する。国民はどちらの考え方が政権を担う政治勢力として望ましいかを熟慮して、「政権選択の総選挙」に臨まなければならない。

自民党は現在の政権与党として、低次元の誹謗(ひぼう)中傷中心の選挙戦術を卒業し、自らの政治理念、政権構想、政策構想を堂々と開陳して総選挙に臨むべきだ。主役である有権者が熟慮して「政権を選択」するための情報を提供することが、政権を目指す政党の責務である。

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2008年9月23日 (火)

首相の資質を問われる麻生太郎氏

福田首相が9月1日に突然、「政権を放り出した」ことに伴い実施された自民党総裁選で、総裁に選出された麻生太郎氏は9月24日に召集される臨時国会で第92代内閣総理大臣に指名される見通しだ。麻生氏は9月22日の自民党大会で挨拶に立ったが、9月22日が祖父吉田茂元首相の誕生日であることと、民主党との対決への意欲を表明しただけで、具体的な政策の方針に触れなかった。

1年間に2度も政権を無責任に放り出した自民党に対する国民の目は厳しい。有権者の信を問わずに政権がたらい回しされており、早期の解散総選挙が求められている。麻生政権の第一の課題は解散総選挙実施である。

2001年に発足した小泉政権は、「改革」の名の下に日本社会を根幹から破壊する政策を推進した。

①「市場万能主義=弱肉強食=格差拡大=セーフティーネット破壊」政策を推進する一方で、

②「特権官僚の天下り利権」を死守し、

③「対米隷属=日本売国」の外交政策、

を推進した。麻生政権が誕生しても、この基本路線は維持される。

麻生氏は2001年の小泉政権発足に際して、自民党政調会長に起用され、自民党における政策立案最高責任者として、小泉政権の政策運営を指揮した。その後も、総務相、外務相として小泉内閣、安倍内閣の主要閣僚の地位を維持し続けた。

2007年には安倍政権の下で自民党幹事長、2008年には福田政権の下で自民党幹事長を歴任した。2代続けて時の政権が「政権を放り出した」際の自民党幹事長であり、自民党最高幹部として、「政権放り出し」の連帯責任を負う立場にあった。

日本経済が不況に突入し、米国では金融不安が燎原の火のごとくに広がり、他方、国内では行政の管理不行き届きによって猛毒米が食品として流通する大事件が表面化している。自民党は、国政に一刻の遅滞も許されないこの時期に、「三文芝居」の「出来レース」総裁選を、丸々3週間の政治空白を生みながら、「祭り騒ぎ」に仕立てて実施した。麻生新総裁はまず、国民への「謝罪」を表明するべきだったのではないか。

麻生氏は「安倍氏は病気だった」、「福田氏の場合は民主党の「何でも反対」姿勢に問題があった」と発言し、安倍首相と福田首相の「政権放り出し」を正当化するかのような発言を繰り返しているが、政権与党としての無責任を認め、国民に謝罪する考えがないのか、スタンスを明確にする必要がある。農水省の白須事務次官は「農水省に責任があると考えていない」と発言し、更迭された。麻生氏が歴代政権の責任を否定するなら、麻生氏の進退問題に発展してもやむを得ない。

麻生氏の言動、政策スタンスについて、三つの問題点を提示する。一国の首相としての資質に関わる重要事案だ。国会でも十分な検討が求められる。

第一は政策主張の一貫性だ。麻生氏は小泉政権の発足から2003年9月まで、自民党政務調査会長の要職にあった。政調会長は政策立案についての自民党最高責任者だ。小泉政権の経済政策の最高責任者だった。小泉政権は「景気よりも目先の財政収支改善を優先」した。今回の総裁選での麻生氏の主張とは正反対の政策が実行された。

小泉政権の近視眼的「財政収支均衡優先」政策失敗した。2001年度も2002年度も、5兆円の追加財源確保を含む「大型補正予算編成」に追い込まれた。テレビ司会者がしばしば、「小泉政権は財政出動に頼らずに景気回復を実現した」と発言するが、完全な事実誤認だ。小泉政権は激しい経済悪化に直面して、2年連続の大型補正予算編成に追い込まれている。

麻生氏は後述する1997年度の橋本政権の政策失敗を引き合いに出すが、2001年から2003年にも、まったく同じ失敗を繰り返している。その時の政策最高責任者が麻生氏自身である。「目先の財政収支改善よりも景気回復を優先すべき」ことを、麻生氏が「政策信条」とするなら、なぜ、小泉政権下で、政策最高責任者としてその主張を示さなかったのか。

2003年にかけて、日本経済はまったく意味のない大不況に引きずり込まれた。戦後最悪の「失業」、「倒産」、「経済苦自殺」が日本列島を覆った。「国民目線」でものを考え、「目先の財政収支改善よりも景気回復を優先すべき」との持論を持つなら、この局面で主張を貫けなければ意味がない。

「政治信条」、「国民生活」よりも「ポスト維持」が優先されたのだろう。「国民生活」よりも「政治家としてのキャリア実現」を優先することが「政治信条」なのだろう。また、「目先の財政収支改善よりも景気回復実現を優先すべき」ことを主張するなら、2001年、2002年の自分自身の失敗事例を掲げるべきだ。

第二は、後期高齢者医療制度についての発言、および年金記録改ざん問題についての発言迷走だ。舛添厚労相は福田内閣の閣僚だ。福田首相に何の相談もなく、また、政権与党の公明党にも一切説明せずに、次期総裁に選出されることが確実な麻生氏と会談し、後期高齢者医療制度の抜本見直し方針をテレビで発言した。巨大な血税を投入して導入を強行した制度の最高責任者としてあるまじき対応だが、政策の内容以前に、舛添氏の行動様式の是非について、麻生氏は判断を示すべきだ。

舛添氏は麻生太郎氏が2007年7月19日に富山県高岡市での講演で、中国と日本のコメの価格について、「78,000円と16,000円はどっちが高いか。アルツハイマーの人でも分かる」などと発言したことに対して、激しく麻生氏を非難した。昨年の参議院選挙のさなかでの出来事だ。

舛添氏は7月22日の大阪での自民党候補者の演説会で麻生氏とすれ違いになり、「来るなと散々言っているのに、来やがって。ふざけるんじゃないよ。バカなことを言うようなバカ大臣とは一緒に(選挙戦は)やれないよ」などと発言した。「バカなことを言うようなバカ大臣」というのが、舛添氏の麻生氏に対する評価である。

その舛添厚労相が、福田政権が終焉を迎えると、福田政権の閣僚でありながら、すかさず麻生氏に媚(こび)を売る。媚(こび)を売られた麻生氏は、舛添氏が現職の首相をないがしろにするスタンドプレーを演じているにもかかわらず、新内閣で舛添氏を厚労相として続投させる可能性が高いと伝えられている。

他方、福田首相は「ぶらさがり記者会見」で、猛毒米流通事件について質問を受けると、質問した記者に「じゃあどうすればいいの。あなたはどうしたらいいと思うの。」と詰め寄り、記者から「行政府を監督するのは首相ではないか」と切り返されると、首相は「末端まで全部?大変だな、総理大臣も」と逆切れして、得意の「他人事」発言を繰り返した。

また、麻生氏は年金記録が厚労省の指導によって改ざんされた、いわゆる「消された年金」問題について、「これは個人の犯罪だ」と断言した。しかし、舛添厚労相は「組織的関与はあったであろうと思う。限りなく黒に近いと思う」と発言した。民主党が年金改ざん問題について当事者からヒアリングをしたのは、本年4月だ。野党の追及に対して社保庁は9月9日になって、「年金改ざんが確認されたのは1件」との調査結果を発表した。

ところが、9月17日には「改ざんが6万9000件に達する」ことが公表され、さらに、19日には「6万9000件は一部である」ことが明らかにされた。

麻生太郎氏は9月22日の総裁就任記者会見で、「年金改ざん」は「個人の犯罪」と断言したが、この発言に誤りはないのか。舛添厚労相がすでに「組織的関与」を認めているのだ。

麻生政権は政権発足前から、ほとんど末期的な様相を呈しているが、内閣は国民に責任を負う日本で最重要の組織だ。組織の長が内閣総理大臣で、最終的に全責任を負う。行政機構の末端の不祥事も最終的には組織の長である内閣総理大臣が責任を負うのだ。福田首相はこのことを認識していなかったようだが、「いろはのい」に属することだ。

内閣の閣僚が首相に対する「筋の通った行動」を示さないのでは、組織ががたがたになるのも時間の問題ではないか。内閣のなかで「信義」を貫けない閣僚が、国民に対して「信義」を貫けるとは到底考えられない。「機を見るに敏」、「損得勘定で主義主張を自由に変えられる者」同士で、麻生氏と舛添氏はウマが合うのかも知れないが、「信義」を重んじない「利害と打算」の関係は長続きしないと思う。

第三の問題は、麻生氏が総裁選のテレビ出演で毎回述べていた「目先の財政収支よりも景気回復が大切」の主張についてだ。私は麻生氏が所属していた旧河野派=大雄会の研究会で定例講師を務めていた。大雄会の夏季総会でも講演をさせていただいた。1997年の橋本政権の超緊縮財政政策を最も強く批判したのは私だった。

5兆円の消費税増税、2兆円の所得税増税、2兆円の社会保険料負担増、による「合計9兆円のデフレ政策」を、私が重大な問題として取り上げた。日本経済を深刻な金融不況に陥らせるリスクについて、全力をあげて警告した。懸念は現実のものになった。橋本政権は財政赤字を減らそうとして、結果的に財政赤字を急激に拡大させた。

この失敗の教訓を生かす必要があることを定例研究会でも解説した。麻生氏もこのことを踏まえているのだと思う。だいぶ前のことになるが、ある方の紹介で麻生氏と三人で会談もした。麻生氏は総裁選で、1997年度の事例を引いて性急な財政収支均衡優先政策を排除することを主張している。この主張は間違っていないと思う。

問題は、麻生氏の説明が正確でないことだ。麻生氏は97年度について、「橋本蔵相の時代」と言うが、「橋本首相の時代」の誤りだ。

「消費税で5兆円、社会保障負担増加で4兆円、合わせて9兆円の増収を図ったが、結果的に税収は4兆円減少した。プラスマイナス13兆円も税収の見積もりを誤った」との麻生氏の発言を、私は総裁選期間中に5、6度聞いた。しかし、正確でない。事実は以下の通りだ。

政府の増収策は「消費税で5兆円、所得税増税で2兆円、社会保障負担増加が2兆円で合計9兆円の負担増加策」だった。増税が7兆円、社会保障負担増加が2兆円だった。

税収は当初見積もりが59兆4812億円。実績は53兆9415億円だった。社会保障負担は2兆円程度増加したと見られる。96年度の税収は52兆0601億円で、97年度税収は96年度比で1.9兆円増加した。当初見積もりに対して実績は5.5兆円少なかったが、数値を見ると、「7兆円の増税を実施したが、税収は1.9兆円しか増えなかった」というのが実績である。見積もり違いは約5兆円だった。

どこから、「9兆円プラス4兆円で合計13兆円の見積もり誤り」の数値が得られたのだろうか。根拠を示す必要がある。また、大増税を実施した政権は「橋本政権」である。有名だ。「橋本蔵相」は事実に反する。

麻生氏は総裁選に4度出馬した。総裁就任、首相就任に向けて政権構想を温め続けてきたと推察する。その大切な総裁選での「核となる主張」には、数字の正確さを含めて「万全を期す」ことが求められる。

また、麻生氏は本年3月号の「中央公論」に消費税率を10%に引き上げ、基礎年金を全額税方式に移行する提案を発表している。首相就任を念頭に入れて発表したはずの政策提言を、あっさりと引き下げたことについての説明も十分でない。

私は「景気回復を重視する」政策運営が適正であると考えるが、「財政支出の内容」がより重要な問題であると考える。場当たり的な、いわゆる「バラマキ」型の財政支出、裁量支出は「利権」に結びつきやすい。「国民の生活を第一に考える」、「制度変更を伴う支出」=「プログラム支出」の拡充が求められるのだ。麻生氏の政策を支持しない理由のひとつはこの点にある。

麻生氏は衆議院の解散総選挙に先立ち、臨時国会での補正予算審議を求めていると伝えられている。上記の多くの疑問に対して、麻生氏は明確な回答を求められる。与野党の活発な論争が提示されたうえで「決戦の総選挙」が実施されることが望まれる。

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2008年9月22日 (月)

小沢一郎民主党代表VS麻生太郎自民党総裁

9月21日、民主党は臨時党大会を開き、小沢一郎代表の無投票3選を正式に承認した。小沢代表は所信表明演説で、9項目からなる政権構想打ち出すとともに、自公政権について「市場万能、弱肉強食の政治を進めた結果、日本社会は公正さが失われ、格差が拡大した」と厳しく批判した。「今こそ日本を変えるときだ。変えるラストチャンスと言っても過言でない」と述べ、次期衆院選での政権獲得に強い決意を表明した。

一方、福田首相が9月1日に突然、政権を放り出したことに伴って実施されることになった自民党総裁選は、9月22日に実施され、麻生太郎前幹事長が総裁に選出された。

内外の重要問題が山積するなかで、福田首相が突然、無責任極まりなく政権を放り出したことに伴う総裁選であることを踏まえれば、自民党総裁選は、本来、密やかに、しかも短期日のうちに実施すべきだった。しかし、政権喪失の危機に直面する自民党は、総裁選を支持率回復の広告宣伝活動に利用する戦術を採用した。

自公政権に支配されるマスメディアは自民党総裁選を過剰報道し、総裁選を祭り騒ぎに仕立てたが、有権者に好感されたのかどうかは疑わしい。自民党総裁選報道では、自民党総裁候補者の民主党に対する誹謗中傷の発言が垂れ流されたが、「政治的な中立」を規定する「放送法第3条」に抵触する疑いが濃厚である。

また、石原伸晃氏などは、立会演説会で「衆議院選挙に立候補した石原伸晃です」と挨拶したが、各候補者の行動は総選挙の事前運動の色彩が濃厚であり、「公職選挙法」に抵触するのではないかと指摘されている。

自民党総裁選後に衆議院が解散され、総選挙が実施される見通しが強まっている。しかし、麻生太郎氏は8月29日に決定された「緊急経済対策」を実施するための「補正予算」の早期成立を求めている。自民党総裁選後の9月24日に召集される臨時国会では、9月29日に新首相の所信表明演説が行われる見通しだ。

その後、衆参両院で代表質問を実施し、短期日の補正予算審議を行ったのち、補正予算を成立させたうえで、衆議院が解散される可能性が高まっている。すでに民主党は補正予算を早期成立させたうえで衆議院を解散する「話し合い解散」を自民党に提案しており、自民党は民主党の建設的な提案を受け入れるべきだ。

この場合、11月9日が投票日になる可能性が高い。一部に、麻生太郎新首相が解散総選挙を年明けまで先送りするのではないかとの憶測があるが、新政権発足時の内閣支持率が非常に低くなければ、早期に解散総選挙が実施される可能性が高い。

自公政権は国会で追及される多くの問題を抱えており、国会審議の時間が長くなれば、政権支持率が低下する可能性が高い。また、新政権閣僚の政治資金スキャンダルが表面化することも予想され、与党は早期の総選挙実施が得策であると考えていると思われる。

麻生太郎政権は「景気回復」を前面に掲げ、「財政バラマキ」を政策の基軸に据えて総選挙に臨む可能性が高い。2011年度の財政再建目標達成は棚上げされる見通しだ。

「緊縮財政」から「バラマキ財政」に路線を転換する意味では、「小泉改革」路線から決別することになるが、「小泉改革」路線の基本方針は継承される。具体的には、

①「弱肉強食」奨励=「市場原理主義」=「セーフティーネット破壊」

②「天下り」=「官僚利権」温存

③「対米隷属」外交方針

の基本三方針が堅持される。

財政運営が「緊縮」から「バラマキ」に転換される点が、最大の路線修正点になる。選挙を目前に控え、「バラマキ」により有権者の投票を誘導する発想は「買収」に通じるものがあるが、有権者は麻生氏がどのような「政治理念」を持ち、どのような「政治のあり方」を実現しようとしているのかを見極める必要がある。

麻生氏はかつて、「創氏改名は朝鮮人が望んだ」と発言したことがあった。外交路線において、安倍晋三元首相、中川昭一元自民党政調会長などに近く、中国や韓国に対する強硬路線を示している。

また、麻生氏が野中広務元自民党幹事長に対して差別的な発言を行ったことを野中氏が自民党総務会で指摘したことが知られているが、麻生氏はこの件について、野中氏に明確な反論を示していない。

また、2007年7月には、日本と中国の米の価格について、「どっちが高いかは、認知症患者でも分かる」と発言して物議を醸した。総裁選期間中も、集中豪雨による洪水被害が発生したことについて、「岡崎でよかった」と発言した。首相に就任する者には、当然のことながら、高い人権意識が求められるが、麻生氏の人権意識に対する疑念は強い。

「景気対策」も国民目線からの提案ではなく、総選挙対策として提唱されているとしか考えられない。麻生氏が「財政健全化は手段であって目的ではない。景気回復を実現することが優先される」との主張を政治信条、信念として位置付けるなら、なぜ小泉政権以来の政権の主要ポストに在職しているときに、その主張を示さなかったのか。

小泉政権は「財政再建」を文字通り「目的」に位置付け、「国民生活」を犠牲にしての「赤字削減」に突き進もうとした。麻生氏が小泉首相の政策路線に対して堂々と反論を展開した事実は存在しない。政権内部で重要なポストを維持することが「政治信条」より優先されたのではないか。「公益」よりも「私的な利益」を優先する行動様式が如実に示されている。

麻生氏の頭の中は、「政権を絶対に民主党に渡したくない」との考えで一杯なのだと思う。小泉政権以来の政策方針のどこにどのような問題があったのかをじっくりと考え、政策運営の基本理念を根本から見直す姿勢がまったく感じられない。

「自民党は開かれた政党であり、どっかの政党のように出たいやつを出させないことはしない」との発言に示されるように、対立政党を口汚くののしり、「後期高齢者医療制度」が国民に不人気であると知れば、これまでの政権与党としての行動に対する責任に言及することなく、「制度見直し論」に飛びついてしまう。また、小泉政権の主要閣僚として「弱肉強食政策」、「景気悪化促進政策」を推進してきたことを忘れたかのように、「景気重視・財政政策発動」の方針をふりかざす。

「後期高齢者医療制度」見直し論についても、これまで同制度を絶賛し、とてつもない国費を投入してきた政府が方針を転換するなら、根本的な責任明確化がまず求められる。責任論に言及しない制度見直し論は「勝手気ままな悪たれ二代目三代目」の言動と批判されても反論できないだろう。

麻生氏は安倍氏、福田氏の「政権放り出し」についても「謝罪」の言葉を明確に示さない。安倍氏は「病気」だったと正当化し、福田氏の場合は、政府提案に反対した民主党が悪いと言わんばかりの主張を繰り返した。

安倍氏が病気だったなら、参議院選挙後の適切な時期を見計らって辞任表明すべきだった。施政方針演説を行い、代表質問直前に突如辞任を表明したことを麻生氏は正当化するのか。民主党が民主党の理念と哲学にしたがって政府案に反対するのは当然のことだ。野党が反対するから政権を放り出すのが当然と麻生氏が考えるなら、麻生氏も首相に就任することを辞退するべきだ。

福田首相辞任、総裁選、総裁選出の一連の流れから、「清冽な流れ」がまったく感じられないことが非常に残念だ。自民党が政権喪失の危機に直面して、焦燥感にかられていることはよく分かる。しかし、自民党が窮地に追い込まれているのは、自民党が推進してきた政策に最大の原因がある。

「障害者自立支援法」、「年金記録」、「ガソリン税率」、「後期高齢者医療制度」、「猛毒米流通事件」、「非正規雇用労働者激増」、「ワーキングプア激増」、これらのすべての問題に対する自民党の対応が国民の怒りを招いているのだ。

現実を直視し、非を非として認め、過ちをどのように是正してゆくのかを、謙虚に思慮深く国民に訴えかけるなら、国民の多くが耳を傾けるだろう。しかし、自民党にその姿勢はまったく感じられない。与謝野馨氏の言動には辛うじて政治家としての品格が感じられたが、他の総裁選候補者からは謙虚な姿勢がまったく感じられなかった。

これまでの自民党政治を実行した政権の枢軸に位置し続けた麻生氏が、これまでの政策を「他人事」のように取り扱い、総選挙での得票を誘導するための軽薄な主張を大風呂敷に広げるなら、麻生氏は有権者の厳しい審判を受けることになるだろう。

反対勢力に対する敬意と尊重の姿勢を持ち、建設的な提言を闘わせるのが、政治家による政治論争の望ましい姿だ。自らの誤りを直視もせずに、口汚く敵対勢力をののしる政治手法の延長上に、明るい日本社会の未来は見えてこない。

すべてを刷新すべき時期が来た。自民党にはもはや政権担当能力がない。「格差がなく、公正で、ともに生きてゆける社会」を新たに構築しなければならない。「特定の人々の利権を死守しようとする政治」を排除して、「国民本位の政権」を作らなければならない。

「悪徳ペンタゴン」の一角を占めるマスメディアは「偏向報道」に明け暮れるが、「真実」を見抜く市民が連携して、「真実の情報」を伝達し、「悪政」を打倒しなければならない。本当の戦いはこれから本番を迎える。日本の未来のために、心ある者が全力を注いで戦いに挑まなければならない。

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