カテゴリー「経済政策」の83件の記事

2024年6月18日 (火)

日本経済衰退主因の政策運営

「骨太の方針」と呼ばれるものがある。

あまりにも陳腐なネーミング。

本来の名称は「経済財政運営と改革の基本方針」。

このなかにも意味不明な言葉が用いられている。

「改革」だ。

何かを変えることを「改革」と表現しているのだが、何をどう変えるのかによって「改正」にもなるし「改悪」にもなる。

「改革」という言葉にはプラスのニュアンスが含まれているから、いかなる改悪であっても「改革」の言葉をかぶせてしまえば良い制度変更であるかのように偽装できる。

だから名称は単純に「経済財政運営の基本方針」とすべきである。

方針が良いものであるか悪いものであるのかを判定するのは主権者である国民。

運営側が「改革」と称して「良い制度変更をする」と、判定を強要するのは不当だ。

2001年1月、省庁再編で内閣府に経済財政諮問会議が設置された。

このとき、当時の宮澤喜一財務相が「諮問会議では骨太の議論をする」と発言したために、「経済財政運営と改革の基本方針」の通称が「骨太の方針」とされたといわれる。

骨太の議論をすることは構わないが「経済財政運営の基本方針」に「骨太の」と付すのは奇妙。

言葉が陳腐であるだけでなく、基本方針に対する評価を発表する側が名称に盛り込むことがおこがましい。

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企業が経営計画を発表する際に

「素晴らしい経営計画」、「立派な経営計画」、「最高の経営計画」などの修飾語を付すようなもの。

実際に日本経済は25年間、凋落を続けてきた。

2001年に小泉内閣が「骨太方針」を発表し始めてから、現在まで経済の凋落が続き、日本国民の生活は悪化の一途を辿っている。

その原因は三つ。

第一は市場原理至上主義が採用されてきたこと

第二は大企業利益だけが追求されてきたこと

第三は財政収支均衡主義が根幹に置かれたこと

大資本と富裕層の利益だけが追求された。

このことは、裏を返せば一般国民=労働者=消費者の利益が踏みにじられてきたことを意味する。

大企業の利益を拡大するために諸制度が改変された。

これを「改革」と称してきた。

「改革」は大資本利益を増大させる制度変更で、同時に、一般労働者の不利益を増大させる制度変更だった。

このことを端的に示しているのが労働者一人当たりの実質賃金推移。

1996年から2023年までの27年間に労働者実質賃金は16.7%も減少した。
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労働者分配所得が減少した一方で、大企業利益は激増した。

株価上昇は日本経済好調の反映ではなく大企業利益好調の反映。

大企業利益は労働者所得減少を踏み台にして達成されたもの。

「改革」の代表は労働規制の撤廃。

派遣労働が拡大し、正規労働者が激減して非正規労働者が激増した。

「働き方改革」という名の「働き方改悪」も強行された。

長時間残業が合法化され、定額働かせ放題労働プランも拡大された。

経済財政運営の歪みの象徴が税制の改変。

消費税大増税と法人・個人大減税が同時並行で進められた。

消費税が導入された1989年度から現在までに消費税で500兆円が吸い上げられたが、同じ期間に法人と個人の税負担が610兆円も軽減された。
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庶民から税金をむしり取り、この税収が大企業と富裕層の減税に充てられた。

個人消費の推移を見ると個人消費の停滞が消費税増税を連動していることが一目瞭然だ。

この日本経済がいま、景気後退の入り口に立っている。

経済政策運営を根底から刷新しなければ日本経済は深刻な不況に転落する。

「骨太」という陳腐な名称の政策方針を全面撤回することが強く求められる。

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2024年6月 2日 (日)

政府は保有米国債全額売却すべし

日本の経済政策について歪んだ議論が多い。

日銀はいま金融政策運営を大きく変化させている。

背景にあるのはインフレの進行。

2022年から24年にかけて激しいインフレが進行した。

この現実に対して日銀がインフレ抑止を基軸に対応するのは当然のこと。

ところが、日銀の政策軌道修正を批判する声が聞こえてくる。

日本経済は超停滞を続けている。

昨年の4‐6月期に実質GDPがコロナ前のピークをようやく超えた。

コロナ前のピークは2019年4-6月期。

この水準を超えるのに丸4年かかった。

その間にコロナ禍が日本経済を襲った。

政府の対応がまずかった。

コロナを2類相当から5類に変えたのは昨年5月。

対応が1年遅れた。

そのために、日本経済の回復も1年遅れた。

しかし、昨年7-9月期から実質GDPはまた落ちた。

昨年7-9月期から本年1-3月期まで実質GDPは減り続けている。

日本経済は景気後退に陥っている。

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この状況下で対応するべきは財政政策である。

金融政策はインフレ対応で「超緩和」を修正するのが正しい。

インフレ進行下でインフレの旗を振る中央銀行は存在しない。

狂気の沙汰だ。

諸外国がインフレ対応しているのに日本銀行だけが超金融緩和の旗を振り続けた。

そのために日本円が暴落している。

日銀の政策修正は正当であり、必要不可欠なもの。

このなかで景気後退が発生しているなら財政政策を活用するしかない。

また、日本円暴落に対してどのような対応策を示すのかも考える必要がある。

金利を大幅に引き上げれば景気後退が深刻化する。

いま実行可能な有効性のある対応を取るべきだ。

それがドル売り為替介入。

財務省が本年4月~5月のドル売り為替介入が9兆7885億円だったことを公表した。

日本政府は約1兆ドルの米国国債を保有していた。

円換算金額で155兆円ほど。

10兆円の介入は保有米国国債の10分の1にも達しない。

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円暴落を是正するために、まずは保有米国国債を全面売却するべきだ。

4~5月の為替介入で160円/ドルが151年/ドルまで円高回帰した。

金利差が残存しているから米ドルの基調は強いが為替介入には一定の効果がある。

何よりも重要なことは、現在のドル円水準で日本政府が保有する米国国債を売却すれば為替利益を獲得できること。

しかも、日本政府がドル売り介入をして、大きな弊害は発生しなかった。

数日の介入で10兆円のドル資産売却ができるのだから、1兆ドルのドル資産売却は十分に可能。

これを実行するべきだ。

ところが、米国政府がクレームをつけた。

主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席するためにイタリアのストレーザを訪れた米国のイエレン財務長官が、日本政府のドル売り為替介入について、

「介入はまれであるべきで、実施には事前の伝達が適切だと考える。そして介入するのであれば、主に為替市場のボラティリティーへの対応であるべきだ」

「介入は決して日常的に用いられるような手段ではない」

と述べた。

米国は日本政府の米国国債売却に不快感を示した。

日本政府の保有米国国債売却は、米国に貸したお金を回収することを意味する。

米国政府は日本政府からお金を借りたと考えていない。

日本政府の米国政府への上納金だと考えている。

だから、日本政府が米国国債を売却して貸したお金の回収に動くことを不快に感じるのだ。

貸したお金を返してもらうのは当たり前。

日本政府は毅然とした姿勢で必要に応じて米国国債を売却する方針を明言するべきだ。

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2022年5月10日 (火)

国の長期債務1000兆円超の意味

国の長期債務残高が2022年3月末で1000兆円を超えたことが報じられた。

報道は財務省発表通り

「税収で返済しなければいけない国の長期債務残高」

と説明する。

メディアの不勉強は悲しむべき水準だ。

日本経済新聞
「国の長期債務、初の1000兆円超え 21年度末」
https://s.nikkei.com/3LZRJrJ

「財務省は10日、税収で返済しなければいけない国の長期債務残高が3月末時点で1017兆1072億円になったと発表した。18年連続で増え、初めて1千兆円を超えた。新型コロナウイルス感染症の対策の財源を確保するため国債発行を増やしたことが響いた。「賢い支出」で成長力を底上げしないと経済が停滞し税収が増えないまま債務が膨らむ懸念がある。」

記事は、

「2002年3月末の長期債務残高は485兆4180億円で20年間で倍増した。21年3月末からは約44兆円増えた。」

と記す。

だが、「国の長期債務残高を税収で返済しなければならない」とは限らない。

発行した国債の返済については、償還ルールが定められ、償還に必要な資金の国債整理基金への繰り入れが行われているが、税収によって国債の残高を最終的にゼロにする定めはない。

赤字国債=特例国債は、当初、現金での償還が定められていたが、資金繰りがつかないため、建設国債同様に借換債発行による債務返済を認めた経緯がある。

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国債発行で調達した資金は60年で返済することとされてきた。

財政支出は税収で賄うこととされたが、投資的な経費については国債発行による財源調達が認められた。

支出見合いの資産が残存するため、借金による財源調達が合理的と考えられたからだ。

これを建設国債と呼ぶ(財政法4条債)。

住宅ローンを組んで家を購入するのと同じこと。

政府支出の対象を土地20%、建物80%とし、それぞれの資産価値発揮年数を100年、50年とすると、政府支出全体の資産価値発揮年数(耐用年数)は60年になる。

そこで、国債発行(建設国債)の返済は60年で終えることとされた。

これに対して財政法が認めていない経常的な支出の財源が不足したことから赤字国債が発行されるようになった。

財政法は経常的支出の財源調達のための国債発行を禁じているため、特例にかかる法律を各年度ごとに制定し、この法律を根拠にして国債を発行してきた。

これが赤字国債(特例国債)である。

この赤字国債(特例国債)は満期が到来した際に現金で償還することが義務付けられたが、資金繰りが立たず、借換債の発行による償還が認められるようになった。

この特例国債についても建設国債と同様に、60年で償還を終えることとされてきた。

要約すれば、建設国債も赤字国債も償還ルールに差異がない。

資金繰りの状況によってなし崩しで国債の発行、借換債発行による償還が行われてきた。

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したがって、今後においても、ルールはあってなきがごとし。

無い袖は振れないのであって、資金繰りがつかなければ借金=国債発行による財源調達が続く。

同時に考えるべきことは、政府発行の長期債務残高をゼロにする必要など存在しないということ。

財務省が「政府が借りたお金は必ず税金で返済しなければならない」とするなら、まずは日本政府が米国政府に貸しているお金を米国の税収によって返してもらうべきだ。

日本政府の外貨準備高は2022年3月末時点で1兆3561億ドル。

そのうち、外貨建て証券は1兆894億ドルだ。

1ドル=131円で換算して142兆7114億円の外貨建て証券を保有している。

この大部分が米国国債である。

日本政府は143兆円もの巨額資金を米国に貸している。

長期債務は税金で返さなければならないと言うなら、米国からこのお金を返してもらうべきだ。

これを市場経由で実行するのが米国国債の売却。

円安が進行している。

日本政府の米国国債売却を「ドル売り介入」と呼ぶ。

日本政府は堂々と保有米国国債を金融市場で売却するべきだ。

他方、巨額の債務を抱える巨大企業を見るがよい。

債務をゼロにしようと考える企業はほとんど存在しない。

長期債務は適切に管理すれば良いものであって、債務残高をゼロにする必要はない。

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2022年5月 1日 (日)

円安是正に失敗し続ける日銀

円安進行に歯止めがかからない。

理由は単純明快。

日銀が円安誘導政策を実行しているからだ。

円安が進行する最大の理由は内外金融政策の非対称性にある。

米国が金融引締め政策を推進するなかで日本銀行が頑なに金融緩和政策を維持している。

長期金利は本来、金融市場が決定するものだが、この長期金利を日本銀行が人為的に定めようとしている。

「人為的低金利政策」が長期金利決定において遂行されている。

日銀の政策決定は「安心して円売り投機を行ってください」というものになっている。

この政策誘導によって円売りが殺到。

順当に円安が進行している。

ドル円レートは20年ぶりに1ドル=131円台に突入した。

実質実効レートでは50年ぶりの円安水準である。

円安で利益を得るのは輸出企業。

消費者は輸入製品が値上がりして損失を蒙る。

円安の理由は「人為的低金利政策」。

「人為的低金利政策」で利益を得るのは債務者。

預金を保有する一般庶民は「人為的低金利政策」で損失を蒙る。

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つまり、円安誘導政策は輸入品を購入し、預金を保有する一般庶民から所得をむしり取り、これを、債務を抱える輸出企業に補助金として投下することを意味する。

円安誘導政策を実施する正当性が存在しない。

円安誘導政策には、もうひとつ重大な問題がある。

それは日本の実物資産所有権を外国資本に移転することを促進することだ。

「経済的安全保障」が論議されているが、最大の「経済的安全保障」の問題が外国資本による日本資産の買い占めだ。

1986年から1989年にかけて円高が進行した。

日本では円高の下で金利が低下し、資産価格が急騰した。

巨大な資金力を保有した日本の投資家が米国市場に殴り込みをかけた。

米国の主要な資産が日本資本によって買い占められた。

ニューヨーク・マンハッタンの巨大ビルディング、米国の映画会社、米国を代表するゴルフコースや名門ホテルの所有権が日本に移転した。

ドル安が日本資本による米国買い占めのリスクを顕在化させた。

1988年の米大統領選でブッシュ父大統領候補が掲げたスローガンが

「ストロングダラー・ストロングアメリカ」

だった。

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ドル下落は米国弱体化の象徴。

強いアメリカを取り戻すには強いドルを回復させなければならない。

大統領選を契機に円安が始動した。

ドル円は1ドル=120円から1ドル=160円に変化し、これに連動して日本のバブルが崩壊。

日本凋落がスタートしたのがこのときだった。

超円安の進行によって外国資本による日本資産買い占めが進行している。

これが最大の「経済的安全保障」問題なのだ。

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で円安問題も論じている。

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ぜひご応募賜りたい。

日銀の黒田東彦総裁は2013年の就任以来、一貫して超金融緩和政策=円安誘導政策を実行してきた。

これがアベノミクス核心を構成していた。

しかし、アベノミクスは失敗した。

日本経済は超低迷を続け、格差拡大だけが加速した。

挙げ句の果てに外国資本による日本資産買い占めの危機を招いている。

黒田日銀の「人為的低金利政策」により円安進行に拍車がかかる。

最終的に長期金利の人的抑制政策は破綻する。

長期金利が跳ね上がり、金融市場に大きな混乱がもたらされるだろう。

黒田東彦氏は金融市場に強制されるかたちで政策変更を迫られることになる。

間違った政策運営に固執すればするほど、最後に受ける傷は大きくなる。

速やかな政策転換が求められている。

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2018年9月13日 (木)

「ふるさと納税」の根本的欠陥がどこにあるのか

ふるさと納税についての議論がかまびすしい。


しかし、ふるさと納税に関与した人以外では、制度の詳細すら知らないことが多いのではないか。


街頭インタビューでの市民の声が流されるが、マイクを振り向けられて、「制度をよく知らない」という声はカットされて伝えられていない。


返礼品が高額すぎるとの指摘があり、総務省が高率の返礼品を贈る自治体への寄付については税控除を認めない方針を示して論議を呼んでいる。


ふるさと納税の制度は、大まかに整理して言えば、自治体への寄付を行った場合に、その金額から2000円を差し引いた金額が住民税から控除されるという制度である。


自治体は寄付受け入れに際して、寄付をどのような財政支出に回すのかを示す。


寄付を行う人は、どの自治体の、どのような事業に寄付を行うのかを選択した上で寄付を行う。


表向きの説明は、人々が自分の意思で、寄付を行いたいと思う特定の自治体の特定の事業を選択して、寄付を行う、というものだ。


特色ある地方自治体の事業が当該自治体以外に居住する人の寄付によって支えられるという説明がなされている。


返礼率を低くして、災害復旧事業などへの寄付が行われることが「ふるさと納税」の本来の趣旨に沿う行動であるとの説明も聞かれる。


しかしながら、表向きの説明、建前としての説明は、ふるさと納税の現実をほとんど説明していない。


納税者の現実の行動、自治体における対応の現実を踏まえると、この制度は、きわめて「歪み」の多い、劣悪な制度であると言わざるを得ない。

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自治体に「ふるさと納税」という「寄付」を行う者の動機は、単純に「節税動機」=「利潤動機」である。


住民税として支払う税金を、地方自治体に「寄付」すると、2000円の費用はかかるが、返礼品が返ってくる。


そうなると、この人の納税負担は本来の納税額よりも、[返礼品-2000円]分だけ低いものになる。


現状では返礼品が現金ではなく、財・サービスになっているから多少分かりにくいが、分かりやすくするために、返礼品を現金に置き換えてみよう。


そうなると、ふるさと納税を行うことによって住民税負担を軽減できるということになる。


返礼の金額は高額納税者ほど大きくなる。


「ふるさと納税」を行っている人は、このような「節税」=「納税額圧縮」の動機でこれを行っているケースが圧倒的多数である。


「歪みがある」と指摘したのは、この制度が現行の所得税・住民税制度の構造を歪めるものであるからだ。


とりわけ問題なのは、高所得者=高額納税者ほど返礼品による税還付の金額換算値が大きくなることだ。


消費税増税が強行推進されているなかで、高額所得者に著しく偏る実質的な減税措置が取られていることになる。

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「歪み」を生むもう一つの理由は、各自治体での「返礼品取り扱い事業者」の選定が、一種の利権になり得ることだ。


公的企業がすべてを取り扱うなら特定事業者への利益提供となることを回避できるが、その場合でも、特定事業者が取り扱う返礼品を供給する事業者をどのように選定するのかという問題が生じる。


地域の特産品を返礼品にすると言っても、当然のことながら、そこには品目選定というプロセスが発生する。


「政治」が関与して、「特産品」や「返礼品供給事業者」、「返礼事業実施事業者」が選定される可能性が高いことは明白だ。


高額所得者は「ふるさと納税」制度によって、実質的に巨額の「減税効果」を享受する。


地方自治体においては、返礼品供給事業者、返礼事業取り扱い事業者は極めて大きな利益機会を得る。


その事業者選定等の過程が、まさに政治が介入する利益配分、利権配分の不透明なゾーンになり得るのである。


納税者が利潤動機なしに、自分が居住する自治体への納税分を、自分が支援したい自治体への寄付に振り向けていることは稀であると思われる。


納税者は、自分の実質的な納税額を少しでも減らすために、返礼率の高さ、返礼品の種類、内容を比較して、経済合理的に行動しているだけに過ぎない。


返礼がなければ、他の自治体に納税額を移転させようとするインセンティブは働かない。自分の居住する自治体に積極的に納税するだろう。


高額所得者への巨大な実質減税であること、自治体における返礼品選定、返礼事業者選定のプロセスに利権が入り込む余地が極めて大きいことに根本的な問題がある。


この根本の論議がまったく抜け落ちている。

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2018年1月 4日 (木)

想定通りの株価上昇下での国民生活困窮

株価上昇とともに2018年が実質的に始動した。2016年年初には中国初の世界経済危機が警戒されたが、2年たって状況は一変している。私は2016年初が陰の極と判断した。中国、新興国、資源国が緩やかに底入れして世界経済が緩やかな改善に進む。圧倒的少数見解であったが、そのように世界経済を展望した。現実に2016年初を境に中国、新興国、資源国は底入れを実現していった。


2016年11月に米国大統領選があった。メディアはクリントンの当選が9割以上の確率であると言い切った。私はトランプ勝利の可能性が十分にあると判断した。そして、金融市場はトランプが当選すれば米ドルとNYダウは大暴落すると宣言した。果たして大統領選で勝利したのはトランプだった。私は2016年12月に刊行した年次版TRIレポート『反グローバリズム旋風で世界はこうなる』のサブタイトルを「日経平均2番3000円、NYダウ2万ドル時代へ!株価再躍動!」と記した。内外株価の本格上昇を予測する見解は圧倒的少数見解だった。1年たって日経平均株価は2万3000円台に乗せた。NYダウは2万5000ドルに迫っている。


振り返って考えると、2016年の年初が大底だった。中国の株価が急落したのは、その直前に中国株価が大暴騰したからだった。大暴騰した株価が反落するのは当然のことで、急落しても株価暴騰が始まった時点と比較すれば3割以上も高い水準に株価は位置していた。したがって、このことが中国経済のメルトダウンをもたらすとは到底考えられなかったのだ。

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世界経済は2016年初を転換点に、緩やかな改善基調をたどり、連動してグローバルな株価上昇が観察されている。世界経済の流れは概ね順調であると言ってよいだろう。しかし、経済の内実に目を転じると、そこに重大な問題が横たわっている。言うまでもない。際限のない格差拡大が広がっているのだ。大企業の収益は拡大し、資本のリターンは高まっている。株価は経済全体の変化を反映して変動しない。株価は株式の利益変動を反映して変動するのである。日本経済全体は決して好調と言えないが、上場企業の収益だけは絶好調を維持しているのである。


株価が1万円から2万3000円になって何の文句があるかなどの言葉が聞かれるが、「経世済民(けいせいさいみん)=世を經(おさ)め民を濟(すく)う」の意味で「経済」を捉えるなら、これではまったくだめだ。株価が上昇しても恩恵を受けるのは一握りの人々に過ぎない。圧倒的多数の普通の労働者がどうなるのかが何よりも大事なのだ。労働者一人当たりの実質賃金指数が厚生労働省から発表されている。賃金には固定給、時間外手当、ボーナスがあるが、現金給与総額というのはこれらをすべて合わせたものだ。その現金給与総額の変化から物価上昇分を差し引いた実質賃金指数が発表されている。

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実質賃金指数は2009年10月~2012年12月の民主党政権時代にはほぼ横ばいで推移した。ところが、2012年12月の第2次安倍政権発足以降に約5%も下落した。下落の最大の要因は消費税増税の影響だが、消費税率は5%から8%へと3%ポイント上昇しただけだが、実質賃金指数は約5%も減少した。最近になって、実質賃金指数はやや持ち直す傾向を示しているが、おおむね横ばいの域を出ていない。


株価上昇で経済全体が良くなったかのような報道が多いが、株価が表示される上場企業というのは約4000社で、日本の法人数約400万社の0.1%にしか過ぎない。経済全体の上澄みの0.1%の大企業の利益が史上最高を更新し、この利益拡大を反映して株価が上昇しているだけなのだ。


経済全体のパフォーマンスを示すのは実質経済成長率だが、民主党政権時代の実質GDP成長率平均値が+1.8%だったのに対して、2012年12月の第2次安倍政権発足以降のGDP成長率平均値は+1.5%で、あのパッとしなかった民主党政権時代よりも、第2次安倍政権発足以降の日本経済の方がさらに低迷が深刻化しているのだ。安倍政権はそれなのに、消費税を増税して法人税を減税するという経済政策を推進している。主権者である国民の生活を向上させるのではなく、主権者である国民の生活を踏みにじって大企業の利益だけを膨らませる政策を遂行している。


だから、この政権をできるだけ早くに退場させるべきなのである。民を虐(しいた)げて巨大資本を潤わせる安倍政治を終焉させて、大資本に応分の負担を求めて、民の暮らしを向上させる政権を樹立することが、日本の主権者の幸福をもたらす方策である。

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2016年9月 4日 (日)

G7サミットより重要性高いG20サミットのゆくえ

昨年来、世界の金融市場は大きく動揺してきた。


その激動の震源地は中国だった。


中国の代表的な株価指標である上海総合指数は2014年7月の2000ポイント水準から2015年6月の5178ポイントへ、1年間で2.6倍の大暴騰を演じた。


いわゆる「バブル」が発生したわけだが、このバブルが2015年6月以降に弾けた。


上海総合指数は2016年1月に2638ポイントにまで下落した。わずか半年で半値水準に暴落したのである。


中国の株価急落に連動して2015年8月以降、世界の株価が急落した。


上海総合指数は8月にかけて3000ポイント割れにまで急落したあと、11、12月にかけていったんは3700ポイント近くにまで反発したが、12月から1、2月にかけて2600ポイント近くにまで再反落した。


米国株価は昨年8月に一時的な急落を演じたほかは、総じて堅調に推移したが、日本や欧州の株価は中国株価に連動するかたちで激しい変動を演じたのである。


昨年末から本年前半にかけては、


「中国メルトダウン」


の言葉が一世を風靡した。


この種のタイトルの著書も数多く刊行された。


エコノミストの多くが中国メルトダウンと世界金融危機の再来を予測したのである。


これに対して私は、逆に中国経済の底入れ可能性を指摘し続けた。


「メルトダウン」の断定は時期尚早であることを指摘し続けたのである。

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現実には上海総合指数は本年1月の2638ポイントを底に、その後は堅調な推移をたどってきた。


7月以降は3000ポイント上回る水準で推移している。


また、6月23日に英国の国民投票がEU離脱の意思を示した際にも、金融市場は動揺し、やはり「世界金融危機」の到来を唱える者が続出したが、この英国国民投票ショックも、これまでのところ一時的な影響しか示していない。


「金融危機到来」はキャッチ―なコピーであり、本を売るにはうってつけの言葉かも知れないが、そんなに頻繁に金融危機に到来されても困る。


2016年は世界金融危機の年とされてきたが、少なくとも、現時点までの期間においては金融危機は到来していない。


『金利・為替・株価特報』


http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html


においては、本年2月26‐17日に中国の上海で開催された


G20財務相・中央銀行総裁会議


が極めて重要な意味を有したと指摘し続けてきた。


本年5月末には伊勢志摩サミットが開催され、安倍晋三氏はこれを懸命にアピールしたが、伊勢志摩サミットでは政策合意は形成されなかった。


安倍氏が述べた「リーマン危機時と類似している」の指摘はサミット参加首脳から否定され、安倍氏が取りまとめようとした財政政策発動も他国の首脳に受け入れられなかったのである。

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これに対して、2月開催のG20会合では、声明において


「世界経済の下方リスクと脆弱性が高まっている。世界経済の見通しが更に下方修正されるリスクへの懸念が増大している」


ことが明記され、


「世界経済の成長という共通の目的を実現するため、更なる行動が必要であることに合意する」


と記述された。


さらに、この認識の上に、


「成長、投資及び金融安定の強化の目標を達成するため、すべての政策手段‐金融、財政及び構造政策‐を個別にまた総合的に用いる」


とも明記された。


世界経済の潮流は本年2月のこのG20会合を転換点に、緩やかな転換点を形成している可能性がある。


私はこの可能性を指摘し続けてきた。


日本のメディアは意図的に大きく取り扱わないが、この9月4日から中国の杭州でG20首脳会議が開幕した。


こちらが本当の意味でのサミットである、。


G7サミットは以前はG8でロシアが参加していたが、ロシアも排除された。


G20にはロシアも中国もブラジルもインドも南アフリカも含まれる。


韓国、オーストラリアもメンバーである。


世界経済全体の方向を考えるなら、もはやG7ではなくG20が重要である。


そのG20の首脳会議が中国で開幕した。


5日に採択される首脳宣言では持続的な成長の実現に向けて、各国が「金融・財政、構造政策といった全ての政策手段を活用する」との決意が盛り込まれる見通しである。


日本の経済専門紙と呼ばれる媒体はG20サミットを詳しく報じないが、世界経済動向を洞察する上では、G7サミットよりもG20サミットを重視するべき時代になっている。


こうした視点の遅れが経済の洞察力を失う原因になっている。

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2016年5月 5日 (木)

安倍首相は独でなく日の超緊縮財政を是正すべし

安倍首相はゴールデンウィークに外遊し、5月26-27日の伊勢志摩サミットでの政策合意形成を目論んでいる。


ドイツのメルケル首相との会談では、ドイツによる財政出動の合意を得ることを目指していることを表明している。


主要国による政策協調を安倍首相がリードするとの思い入れがあるのだとメディアは伝えている。


ところが、安倍政権の足元にある日本経済は、とても他国に範を示すどころの状況ではない。


第2次安倍政権は2012年12月にスタートして、3年半の時間を経過したが、「アベノミクス」の掛け声が虚(うつ)ろに響くだけで、その実績は惨憺(さんたん)たるものである。


そして、安倍首相は伊勢志摩サミットで主要国による財政出動の政策合意を形成しようと意気込んでいると仄聞(そくぶん)されるが、当の日本の財政政策そのものが、全体として超緊縮になっていることが、あまりにも皮肉である。


つまり、安倍首相は日本の経済政策の現状さえ正確に把握することなく、他国に行って、他国の経済政策に注文をつけるという失態を演じているのである。


さらに、日本では2017年4月の消費税再増税の旗をまだ降ろしていない。


消費税10%見送りを、サミットで発表するために温存している可能性はあるが、日本の財政政策が全体として超緊縮の状況にありながら、他国に積極財政を求めるのは、あまりにもぶざまと言わざるを得ない。


他国の経済政策に注文をつける前に、アベノミクスを総括し、根本的な反省をすることが先決である。

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2012年末にスタートした「アベノミクス」は


1.金融緩和強化によるインフレ誘導


2.財政出動による日本経済回復


3.成長戦略による成長の誘導


の三つの方針を明示した。


しかし、


1.インフレ誘導は結局のところ、失敗に終わった。


2.財政政策は2013年に積極策が実施されたが、2014年以降は超緊縮に転じ、日本経済を不況に逆戻りさせた。


3.成長戦略とは、資本の利益の成長であって、主権者国民の所得の成長を目指すものでなかった。


要するに、アベノミクスの評点は


ゼロ


に近い。


2012年11月から2015年6月にかけて、


円安が進行し、日本株高が実現した。


一般的には、これがアベノミクスの成果だとされるが、本質は違う。


米国金利が上昇して円安が生じ、この円安が日本株高をもたらしただけである。

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2015年6月を転換点にドル円レートは円高に転じた。


これに連動して日本株価も下落に転じた。


こうなると、安倍政権にはなす術がない。


円高が進行して日本株価が下落に転じて、日本経済が最悪の状況に移行しつつある。


事態悪化を食い止めるには、日本の財政政策を「超緊縮」から「中立」ないし「積極」に転換する必要があるが、安倍政権はその政策転換の方針すら示していない。


国の財政政策を示す一般会計の推移を調べると、2016年度は強度の緊縮財政を示しており、この緊縮を是正するには7兆円規模以上の補正予算編成が必要である。


安倍政権は熊本地震に対応して、急遽、補正予算を編成する方針に転じたが、その補正予算の規模は1兆円程度であり、この程度の補正予算編成では、2016年度の超緊縮財政政策運営は変化しない。


主要国に財政出動を求めるなら、日本が率先して範を示す必要があるが、その姿勢はまったく示されていない。


「財政出動」の言葉を聞くと、直ちに「利権支出バラマキ」、「コンクリート投資=公共事業バラマキ」を連想する人が多いが、その発想を転換する必要がある。


財政支出が求められているのはプログラム支出=社会保障支出なのだ。


「保育所落ちた」の声が日本中に響き渡っている。


所得の少ない世帯の大学生の多くが多額の奨学金による多重債務者に追い込まれる現実がある。


1人親世帯の子どもの貧困はOECD加盟国のなかでも最悪の状況にある。


日本の主権者の生活最低保障水準を引き上げるために、積極財政を展開するべきなのだ。


他方、利権支出=天下り関連予算=利権公共事業予算は徹底的に切り込むべきなのだ。


日本の経済政策が零点の状態にあるのに、他国の経済政策に注文をつけるのは100年早い。

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2016年2月29日 (月)

上海G20声明政策総動員の有言実行が鍵

中国の上海で2月26‐17日、G20財務相・中央銀行総裁会議が開催された。


27日に発表された声明には、


均衡の取れた成長や市場の安定などG20の経済目標の達成に向けて


「個別および集団的に、金融、財政、構造上のあらゆる政策手段を活用する」


と明記された。


金融、財政、構造上の政策手段を総動員する


方針が明記されたのである。


しかしながら、具体策は明記されなかった。


総論賛成だが、各論は明示できなかったのが実態である。


G20会合を受けた週明けの東京市場では、日経平均株価が寄り付き後、250年高まで上昇したが、大引けは161円安と沈んだ。


G20での合意に切実感がないことが影響したと考えられる。


『金利・為替・株価特報』2016年2月29日号


http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html


タイトルは、


「アベノミクス失政明白で政策は抜本修正へ」


である。


アベノミクスは


金融緩和、財政出動、成長戦略、の三つを提示したものである。


そのアベノミクスの失敗が明らかになり、政策の抜本転換が強く求められているのである。

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アベノミクスという固有名詞が使われているが、その内容は目新しいものではない。


マクロ経済政策において、


財政金融政策の同時発動


を示しただけなのである。


成長戦略は、大資本の利益拡大を追求するものだが、短期的に大きな変化を引き起こすものではない。


したがって、中短期の日本経済に影響を与えるのは財政・金融のマクロ経済政策であり、この点に関してアベノミクスは当初、金融緩和・財政出動のポリシーミックスを示していた。


金融緩和政策はインフレ誘導を目指すものであったが、結局、インフレ誘導は成功しなかった。


日本の消費者物価上昇率は現在、前年同月比ゼロの水準で推移している。


「インフレ誘導は可能である」


と主張した論者は、現実のデータの前に、敗北を認めるほかはない。


日銀副総裁の岩田規久男氏は、2年度に公約を実現できなければ、辞任して責任を明らかにすると国会で明言したのだから、まずは、職を辞してけじめをつけるべきである。

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インフレ誘導派は量的金融緩和政策によってインフレ率を上昇させることが可能であると主張した。


しかし、短期金融市場残高をいくら積上げたところで、金融機関の与信活動が活発化しなければマネーストック=マネーサプライは増加しない。


マネーストックの増加なくして、インフレ率の上昇は生じないのである。


黒田東彦氏が1月29日に、突然のマイナス金利導入を打ち出した最大の理由は、量的金融緩和政策ではインフレ誘導ができないことを認識したことにある。


日銀執行部は確約した公約を実現できず、その責任を明らかにする前に、インフレ誘導に向けての手段を変えた。


こうした責任回避、無責任体質が日銀に対する信認をさらに低下させることになる。


しかし、あまりにも準備不足であった。


日銀政策決定会合での評決では、5対4の僅差でのマイナス金利導入決定になったが、賛成票5票は、安倍政権が起用した政策決定会合メンバーだけだった。


安倍政権発足以前に起用されたメンバーは全員が反対票を投じた。


政策論議が十分に行われず、「数の力」で決定を押し通す姿勢は、日銀の政策決定プロセスとして大きな問題を残すものになった。


政策論議の的がずれているのだ。


いま必要なことは、財政政策の路線転換である。


超緊縮の財政政策が日本経済の悪化を加速させている。


この本質に気付かず、この本質を是正する措置が必要であるのに、そこに対処しない。


これが今回G20会合における日本政府の対応のまずさである。


機動的、積極的な対応が求められているが、安倍政権の対応は遅すぎる。

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2016年2月12日 (金)

安倍政権は結局政策大転換に追い込まれる

円高と日本株価下落が進行すると、


日本のメディアは、


「安全資産として日本円が買われている」


「世界経済のリスクが高まり株価が下落している」


と報道する。


それでは、2013年から2015年にかけて、


円安と日本株価上昇が進行したときに、


「危険資産を回避する行動が強まり、日本円が売られている」


「世界経済の回復期待が強まり株価が上昇している」


と説明していたか。


違う。


「アベノミクスの政策対応が好感されて、円安と株高が進行している」


と伝えていた。


そうであるなら、


「アベノミクスの政策対応が嫌気されて、円高と株安が進行している」


と伝えるべきだろう。


NHKはニュース報道のなかで、


「リスク回避の行動が強まり、安全な資産を買う動きが強まり、日本円が上昇しています」


などと、断定する原稿を用意するが、そもそも断定などできない。

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これまでに断定形でのニュース原稿を書いてきたことをよいことに、勝手に理由をNHKが決めている。


もちろん、原稿を創作するときには、政治権力の顔色を窺う。


こうして、大本営発表のニュースが報道される。


こうして小さなウソが積上げられて、ペテンに満ちた政策が遂行されている。


しかし、安倍政権を支えてきた唯一の拠り所が株価上昇だったから、株価急落は政権の屋台骨を揺さぶることになる。


2月12日の東京市場では、取引時間中に日経平均株価が15000円を割り込んだ。


日経平均株価が15000円を割り込むのは2014年10月以来、1年半ぶりのことだ。


2014年10月31日、黒田東彦日銀は、追加金融緩和政策第2弾を決定した。


2014年12月14日の選挙に合わせて、株価吊り上げの政策発動を決定したのである。


安倍政権は選挙に合わせて、2015年10月の消費税率10%への引上げを延期する決定を行った。


同時に原油価格の暴落が発生して、日本株価が大幅上昇して、安倍政権は2014年12月の総選挙にも勝利してしまった。


しかし、日本の株価は、この黒田日銀金融緩和第2弾を決定する前の水準にまで下落してしまったのだ。

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『金利・為替・株価特報』2016年2月15日号(2月上旬号)


http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html


には、株価下落の背景と事態打開に必要な条件を記述した。


政治権力に支配された日本のマスメディアは、円高と日本株価下落が、日本の経済政策とは無関係であるかのように報道するが、まったくの間違いだ。


そもそも、アベノミクスそのものに大きな間違いが含まれている。


また、アベノミクスと言われるけれども、安倍政権はアベノミクスで提示した政策とは正反対の政策も実行している。


アベコベノミクスとアベノミクスが混じり合っていて、正確に表現すると、アベノミクスの悪い点はそのままにして、アベノミクスの正しい部分は正反対にしているのだ。


サイアクノミクス


となってしまっている。


これまでは、株価が上昇していたから、雪があらゆるものを純白に染め抜いてしまうように日本経済の闇の部分が隠されてきた。


しかし、株価が下落して雪が解けてしまうと、あちこちから、汚れた部分が見え始める。


春節で中国からの旅行者は多いが、元は下落し、中国株価が暴落したから、中国旅行者の支出は金額で見て大幅に減少するはずである。


日本経済の現状を正確に捉えて、適正な政策対応を打ち出さなければ、日本経済は再転落することになるだろう。


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