「いざなぎ景気超え」詐欺実態は「いかさま景気」
9月、10月になるとNHKが
「いざなぎ超え」
などと喚く可能性があるが、とんでもない誤報である。
「いざなぎ」とは、1965年11月から1970年7月まで続いた景気拡大局面のことを指し、景気の拡大期間が56ヵ月だった。
他方、2002年1月から2008年2月まで続いたとされる景気回復期間が73ヵ月だったので、日本政府が認定する景気拡大期の時間的な長さでは、これが最長とされている。
この景気拡大局面を「いざなみ景気」と命名したのだそうだが、さすがに、こんな名称を聞いたことがある人はいないだろう。
およそ「景気拡大」などと表現できるような代物ではないからだ。
日本の名目GDPは1997年の534兆円をピークにして、その後、2014年までの17年間、これを上回ったことがなかった。
2016年にようやく537兆円に達して1997年の水準に肩を並べた。
ならしてみれば18年間ゼロ成長だったわけで、「いざなみ」も「つきなみ」もないのである。
政府は2012年12月から景気回復期間が現在まで続いているとしている。
この計算だと、本年9月で57ヵ月になり、「いざなぎ」を超えて、戦後2番目に長命の景気回復になると喧伝している。
恐らく、10月の選挙向けに、「いざなぎ超え」という「印象操作」を全面的に展開するつもりなのだろう。
ふざけるのもいい加減にしたほうがよい。
昨日記事にも記述したが、1966年から70年の実質経済成長率は
9.8%、12.9%、13.4%、10.7%、10.9%。
1965年の生産水準=所得水準を100とすると、1970年の生産水準=所得水準は173になった。
5年で所得水準が7割も拡大したのだから、これは本格的な景気拡大だ。
「いざなぎ」以来の景気拡大と言っても過言ではないだろう。
しかし、「いざなみ景気」などと政府が称している2002年から2007年の実質経済成長率は、
0.1%、1.5%、2.2%、1.7%、1.4%、1.7%。
2001年の生産水準=所得水準を100とすると、2007年の生産水準=所得水準は109だ。
6年間で所得水準はわずか1割も増えていない。
時間の長さだけで過去の10%成長時代の景気拡大と類似していると表現することがそもそもの大間違いである。
今回、「いざなぎ超え」だとしようとしている日本経済を検証すると、2013年から2016年の実質経済成長率は
2.0%、0.3%、1.1%、1.0%で、
2012年の生産水準を100とすると2016年の生産水準は104に過ぎない。
2017年に1%成長を実現しても5年間で5%しか所得は増えていない。
「景気拡大」などと表現できる代物でない。
今回の景気を命名するなら「いかさま景気」ということになる。
メルマガの読者が命名してくれた。
景気の浮き沈みを最も端的に示す経済指標が鉱工業生産統計だ。
生産活動が低下してしまうのが「景気後退」=「不況」、
生産活動が上昇するのが「景気回復」、「景気拡大」である。
グラフを見ると分かりやすいが、2008年にはサブプライム危機を背景とする不況が発生し、2012年には、野田佳彦政権が超緊縮財政を強行したために「野田緊縮財政不況」が発生したことがはっきりと読み取れる。
鉱工業生産統計のグラフを見ると、実は2014年1月から2016年5月にかけて、生産活動の低下傾向が続いたことが分かる。
鉱工業生産指数の推移が示す景気後退局面
これが何であるかと言うと、
「消費税増税不況」なのだ。
2014年4月に安倍政権は消費税率を5%から8%に引き上げた。
その結果、日本経済は深刻な不況に転落したのである。
生産活動が改善に転じたのは、為替レートが円高から円安に回帰した昨年央以降のことだ。
今回、景気が改善傾向を示し始めてから、まだ1年しか経っていないのだ。
これが事実に基づく日本経済の推移だ。
実際、日本のGDP成長率は2014年第1四半期から第3四半期まで、3四半期連続でマイナス成長を記録した。
米国では2四半期連続でマイナス成長となれば、景気後退=リセッションと認定される。
実質GDP成長率の推移が示す景気後退局面
日本経済は消費税増税が強行された2014年に明確に景気後退に突入し、経済悪化は昨年半ばまで続いたのである。
ところが、財務省が工作して、この「景気後退」の認定をしていない。
消費税増税で日本経済が不況に転落したという「明白な事実」を隠蔽し、「景気後退」がなかったことにしているのである。
そのうえで「いざなぎ超え」とは開いた口が塞がらない。
森友疑惑で、財務省という役所が、いかにいかがわしい役所であるかということが、ようやく広く世間に認知されたが、そのいかがわしい体質はまったく変わっていないのだ。
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