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2026年5月 1日 (金)

原発を止めるべき理由

今年の3月11日、ある本の増補改訂版が刊行された。

ある本とは

『私が原発を止めた理由』(旬報社)

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https://x.gd/8p69X

著者は元福井地方裁判所裁判長の樋口英明氏。

2014年5月21日、大飯原発運転差し止め訴訟判決で運転差し止め命令を下した。

しかし、名古屋高裁金沢支部は2018年7月に判決を破棄して、その後確定した。

また、2022年6月17日、最高裁は

「福島原発事故の被害について国は賠償責任を負わない」

とする判決を示した。

多数意見を示した3名の裁判官は

「実際に起きた地震の規模や津波の方向が予想されたものと違っていた」

との理由で国の責任を認めなかった。

樋口英明裁判長は原発を止めたが、上級審は樋口裁判長の判決を覆した。

また、最高裁は国の賠償責任を認めなかった。

日本を喪失しかねなかったフクシマ原発事故。

事故の前に巨大地震の発生は警告され、巨大地震と津波の発生で福島原発が電源を失うことが警告されながら、国と東京電力は適切な対応を取らなかった。

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その結果として事故が発生して巨大な損害が生まれたが裁判所は国と東京電力を無罪放免にした。

下級裁判所が適正な判断を示しても上級裁判所がその判断を覆す。

これが日本の裁判所の実態である。

22年の最高裁判決で多数意見を書いた裁判官のうち、裁判長を務めた菅野裁判官は判決の1ヵ月後に定年退官し、その1ヵ月後に東京電力と深い繋がりのある大手法律事務所に就職した。

多数意見の他の2名の裁判官は同様の大手法律事務所出身の裁判官。

検察官出身の三浦守裁判官だけが、津波を伴う地震が発生する可能性を指摘した地震調査研究推進本部の発表の1年後には東電が東側からの津波に備えた堤防を築き、更に地下に水が入らない措置を取る義務があったのに対応を取らなかったために責任を負うとし、また、これらを命じなかった国も責任を負うとの判断を示した。

国と東京電力の損害賠償責任を問わなければならないのに、裁判所は国と東京電力を無罪放免にした。

樋口英明氏が『私が原発を止めた理由』を刊行されたのは2021年3月11日。

5年が経過する間に上記の最高裁判決が示され、これと足並みを揃えるように岸田内閣の下で原発回帰の政策決定がなされた。

24年1月には北陸電力志賀原子力発電所が立地する石川県志賀町で震度7の揺れを記録する巨大地震が発生。

しかし、原発回帰を見直す動きは取られていない。

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また、南海トラフ地震のシミュレーションが示されているのに、なぜか、愛媛県の伊方原発や静岡県浜岡原発に関するシミュレーションが抜け落ちているという。

これらの事象を踏まえて増補版が刊行された。

2014年5月の大飯原発運転差し止め命令を示した樋口裁判長。

その理由の根幹は日本の原発の耐震性能不足にある。

震度7の地震は地震の揺れの強さを示すガルで表示すると1500ガル以上になる。

日本では1500ガルを超える揺れを伴う地震が頻発している。

この強い揺れを伴う地震は日本列島のどこでも生じ得る。

ところが、日本の原発のほとんどが700ガルの揺れに耐える構造でしか建造されていない。

かつて関東大震災の揺れの強さは400ガル程度と推定されていた。

この知見に基づいて原発が建造された。

ところが、1995年に阪神淡路大震災が発生し、全国に地震計が設置されるようになり、震度7の地震が1500ガル以上であることが判明すると同時に、1500ガル以上の地震が日本で頻発していることが判明した。

樋口裁判長は日本列島のどの地点でも1500ガル以上の揺れを伴う地震は発生し得るのに対して耐震性能不足は明白であることから運転停止命令を下した。

当然の判断である。

日本の進路を考えるときに、最重要の政策判断事項の一つが原発稼働の是非だ。

二度とフクシマ事故を起こしてはならないとの立場に立てば原発を全廃するしかない。

樋口氏の上掲書は簡潔に分かりやすく明解に原発問題の要点を教示してくれる最高の書である。

すべての日本国民必読の書であると断言できる。

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