あまりに杜撰な高額療養費改悪
予算審議で最重要のテーマは高額療養費制度。
根源的なセーフティネット。
誰しも重篤な疾病にり患する。
その際の治療費が高額になる可能性がある。
国民皆保険制度の根幹はすべての国民が必要十分な医療を受けられることを保障すること。
高額療養費制度は高額な医療を受けなければならないときに、本人負担に上限を設けるもの。
現在の上限でさえ負担は極めて重い。
しかし、この制度が存在することにより必要十分な医療を受ける道が辛うじて確保されている。
この制度を改変して本人負担の上限を大幅に引き上げることが提案されている。
国民の命綱を切る暴政だ。
制度変更には十分な論議が必要。
政府は本人負担を大幅に引き上げることにより健康保険の保険料をわずかに引き下げることができると主張する。
しかし、わずかな保険料引き下げと本人負担の据え置きのどちらを主権者である国民が選択するか。
これが重要だ。
圧倒的多数の国民がわずかな保険料の引き下げよりも本人負担の据え置きを選択することは間違ない。
本ブログ、メルマガでも懸命な情報発信を続けてきたが、主権者の反発はすさまじい。
この状況を踏まえて石破内閣がいったん制度改悪を凍結する腹を固めた模様。
適正な対応である。
財政民主主義の基本に基づき、本人負担の据え置きを決定するべきだ。
人命に直結する話。
批判が沸騰したことから政府は制度変更を一部見直すことを表明。
多数回該当の制度利用者の本人負担を据え置くことを表明したが目先を
ごまかす弥縫策であることは明白だった。
高額療養費制度の全利用者は現在795万人。
そのうち多数回該当の利用者は155万人。
現在、多数回該当の利用者が多数回該当の要件を満たし続ける限り、本人負担を据え置くとしていた。
例えば年収が650万円で毎月の治療費が13万8000円の人の場合、現行の本人負担の上限は80200円で上限を超えるため、本人負担は8万200円に軽減されてきた。
直近12ヵ月で3回以上適用された場合、4回目からは本人負担の上限が4万4400円に軽減されている。
これが多数回該当の負担軽減である。
政府は多数回該当の利用者が多数回該当の要件を満たす限り、本人負担を4万4400円に据え置くとしている。
この利用者は負担が増加しない。
しかし、2027年8月からは本人負担の上限が13万8600円に引き上げられるため、2027年8月以降に新たに治療を受けて治療費が月に13万8000円かかる人は高額療養費制度を利用できないことになる。
つまり、この人は年収が650万円で毎月13万8000円の治療費を支払わなければならなくなる。
現在多数回該当で、今後も多数回該当であり続ける人だけが毎月の負担額が4万4400円で済むということになる。
同じ年収で月に13万8600円の本人負担の治療を受けている人が、現在多数回該当の人は本人負担が4万4400円で済み、新たに治療を受け始めた人は高額療養費制度そのものを利用できずに、毎月13万8000円の治療費を払い続けなければならないことになる。
完全に〈法の下の平等〉に反する措置だ。
売り尽くしセールの会場があって、会場内にいる人にだけ廉価販売を行い、こちらのセール会場に新規入場をできない措置を取る。
この会場にいる人は会場内に居続ける場合にだけ廉価で購入できるが、ここからいったん退場すると、もう廉価での購入ができなくなる。
新たに購入する人には新規市場が用意され、新たに購入する人はこちらの会場にしか入れない。
同じ商品が新規会場では3倍の値段で売られているが、必需品なのでどうしても買わなければならない。
こんな制度が提案されていたわけだ。
高額療養費制度の利用者795万人のうち、現在、多数回該当の利用者は155万人。
この人たちだけが本人負担軽減の適用対象になる。
厚労省は、155万人の多数回該当の利用者が3年後には激減している(死亡する)ことを想定して現行の本人負担水準で据え置くとしている。
国民の命綱を断ち切る基本は何も変わらない。
まずは制度改悪を完全に凍結することを確認することが最重要になる。
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