道路陥没事故が示す日本の衰退
埼玉県八潮市で道路が陥没した。
事故が発生したのは1月28日午前10時頃。
八潮市大字二丁目487付近の県道松戸草加線中央一丁目交差点内の道路一部が陥没。
通行したトラック1台が陥没した穴に転落した。
74歳の男性ドライバーが運転していたと見られている。
事故発生から7日目を迎える2月3日時点で転落した男性はまだ発見されていない。
地下を通過する下水管が破損して下水が漏出。
漏出した下水が道路下部の土を流出させて空洞が発生。
地上の重みの影響で道路が陥没したと見られている。
穴は直径40メートルにも広がり、深さが15メートルに及んでいる。
破損した下水管からの下水の流出が続いており、当該陥没箇所の崩落が現在も続いていると見られる。
穴の下部に重機を搬入して男性を救出することが目指されているが、固い地盤の確保ができず、現時点でも男性の救出活動が進展してない。
当初地上の道路からクレーン車を用いて転落した車両の引き揚げ作業が試みられたが、作業中に道路に新たな陥没が発生した。
危うく作業をしていたクレーン車が転落するところだった。
重大な二次災害が発生する危険性があった。
二次災害は回避されたが十分な安全確保が図られていたと言い難い。
事故発生から7日目を迎えるが、下水道の復旧は無論、転落した男性の発見、救出も進展していない。
日本の技術力の衰退を鮮明に浮かび上がらせている。
下水管は腐食しやすい。
事故が起きた現場の当該下水管の耐用年数は50年とされ、当該下水道は敷設から43年目にあたるという。
しかし、下水が化学反応を起こし硫酸を発生させると下水道管の腐食が進展し、耐用年数に至っていなくても下水道管が破損することはあるという。
問題は埼玉県八潮市にとどまらない。
全国の下水道管で同様の損傷が生じれば下水が流出して道路下の土を流出させる恐れが生じる。
その結果として道路陥没が発生する恐れがある。
社会インフラにはそれぞれ耐用年数がある。
時間が経過すれば経年劣化が生じ、インフラ自体の破損が生じる。
インフラを守るには「更新投資」が必要不可欠。
財政支出にはさまざまな需要が存在するが、生活インフラの整備は極めて優先度が高い。
日本全国の水道、下水道が老朽化し、そのメンテナンスが必要になっている。
公営水道や公営下水道ではインフラを整備する財源を調達できないから民営化することが必要との主張が提示されてきた。
しかし、公営でインフラ整備ができないのに、なぜ、民営化すれば可能になるのか。
インフラを整備するには費用がかかる。
民営化した新事業主体がインフラを整備するには費用が掛かるから、その費用が水道代金や下水道代金に上乗せされることになる。
インフラは生活必需品であるから市民に使用しない選択肢がない。
事業者は利益獲得を目的に事業に参入する。
公的事業は利潤獲得を目的としないから、民営化事業会社が事業を運営すれば、効率が同水準なら民営化企業の提供する事業の利用料金は利潤の分だけ必ず高くなる。
民営化しようが公営で事業を継続しようが、インフラ整備に要する費用は同じ。
利潤追求がないから公営の方が安い利用料金を提供できる。
「親方日の丸」で事業を実施すると効率が下がるというなら、効率が下がらないように公益事業を監視するメカニズムを作ればよい。
設備の老朽化が進んでいるから民営化が必要という理屈は通用しない。
問題の根源は市民生活に必要不可欠な生活インフラ整備に適正に財政資金を投下しないことにある。
下水道の整備にお金をかけずに万博を開くことが問題なのだ。
下水道の整備にお金をかけずに民間の半導体工場建設に兆円単位の補助金を投下することが問題なのだ。
財政資金配分で無駄な政府支出を排除すれば、そのお金で日本全国の下水道をピカピカに整備することが可能。
要するに、国民生活への予算配分を切り、予算の大半を利権支出に回している構造に問題があるということだ。
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