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2025年1月11日 (土)

インフレ誘導が間違っている理由

日本のインフレ率は公式発表で2%台とされているが実感とかけ離れている。

さまざまな分野で広範な価格上昇が観察されている。

インフレ抑制は日銀の責務。

日本銀行法は第1条で目的として「通貨及び金融の調節を行うこと」と定め、第2条で「通貨及び金融調節の理念」を

「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」

と定めている。

2022年から2023年にかけて日本でも深刻なインフレが発生した。

ところが黒田日銀はインフレ抑止の政策スタンスを示さなかった。

2023年に日銀総裁を退任するまで黒田東彦氏は「インフレ推進」の旗を振り続けた。

日銀総裁が植田和男氏に交代して、ようやく日銀の金融政策運営の修正が始動した。

世の中では「インフレ推進」、「金融超緩和継続」を求める声が存在する。

2013年に始動した「インフレ誘導政策」を主張した人々だ。

彼らは日銀が短期金融市場に大規模資金を投入すればインフレが実現すると主張したが、現実には実現しなかった。

インフレ誘導政策は失敗した。

ところが、2022年から23年にかけて、これとは別の要因によって日本でインフレが発生した。

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海外のインフレが日本に波及したこと、日本銀行が日本円暴落政策を遂行してきたことが背景。

しかし、インフレ進行は日本の国民=消費者=労働者=生活者にとっては「百害あって一利なし」の現象だった。

したがって、日銀は早期にインフレ抑止の政策を遂行するべきだったが、黒田日銀の対応が著しく遅れた。

黒田日銀はインフレを推進し、そのインフレの力によって賃上げを実現することを提唱した。

激しいインフレが発生して、たしかに一部で賃上げの動きは広がった。

しかし、労働者にとって重要な指標は単純な賃金上昇率ではない。

労働者にとって重要なのは「実質賃金上昇率」だ。

賃金が2%増えても、物価が4%上昇したらどうか。

実質賃金は2%減少してしまう。

2022年4月から2024年5月まで26ヵ月連続で労働者実質賃金は減り続けた。

24年6月と7月に実質賃金が前年比でわずかにプラス数値を記録したが、8月以降は再び前年比マイナスに転じた。

8月から11月まで再び4ヵ月連続の前年比マイナスが記録されている。

これまでに指摘してきたが、インフレ誘導政策は元々企業の賃金コストを削減するために提案されたものなのだ。

インフレが実現すれば賃金を据え置くだけで実質賃金を削減できる。

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物価下落=デフレの局面では「賃下げ」が困難であるため実質賃金コストが拡大する。

これを回避するためにインフレ誘導が提案された。

したがって、インフレ進行下で実質賃金が減少するのは順当なこと。

労働者の実質賃金増大を目指すなら「インフレ誘導」は適正な政策対応でない。

インフレ進行を受けて一部の企業で賃上げが実施されているが、重要なことは賃上げがすべての企業で一律に実施されるものではないこと。

力のある大企業の正社員の賃金は増加するが、力の弱い企業では大幅賃上げは実現しない。

正社員の賃金は増加するが非正規労働者の賃金は増加しない。

インフレを推進して賃上げを奨励する結果、労働者間の格差が拡大する。

賃上げの恩恵を受けることができない弱い立場の労働者は賃金が増えないのに生活必需品の物価が大幅に上昇するという現実に直面している。

庶民のなけなしの虎の子預金はインフレで目減りする。

つまり、インフレを推進する政策は間違っているのだ。

日銀に求められる行動は「物価安定」を確実に確保すること。

「物価安定」を確実にしたうえで企業に賃上げを求めるのは正当。

ただし、企業に対しては正規労働者だけでなく非正規労働者の賃金引上げを強く求めなければならない。

国会においては、「インフレ誘導」が間違った政策目標であることを確認することが重要だ。

日本経済の回復=経済成長はインフレ誘導によっては実現しない。

経済成長政策を担うのは財政政策であることを確認するべきだ。

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