害悪だらけの日銀超緩和政策
12月19日の金融政策決定会合で日銀は金利引き上げを見送った。
利上げを見送った直接の要因は、前日の12月18日に米国FRBが利下げを決定したものの、先行きの金利引き下げペースを緩やかにする方針が明示されて米国株価が急落したことにある。
NYダウは12月17日終値43,449ドルから1,123ドル急落して18日は42,326ドルで取引を終了した。
FRBはFFレートの見通しを公表した。
9月FOMCでは2025年末のFFレート水準を3.25~3.50%としていたが、12月FOMCでは3.75~4.00%とした。
12月18日のFOMCでFRBはFFレートの誘導目標を4.25~4.50%に引き下げた。
昨年9月FOMC以来12月までに3回のFOMCが開催されたが、そのすべてで利下げが決定された。
しかし、12月のFOMCでは2025年の利下げをペースダウンする方針が決定された。
9月時点での、2025年に0.25%幅の利下げを4回実施するとの見通しが、2回実施方針に修正された。
パウエルFRB議長は会見で
「今後は利下げでより慎重になる可能性」
「インフレ率が持続的に2%に向かわなければ、利下げペースをより鈍化させることが可能」
と示した。
FRBの利下げペースが鈍化する方針が示されたことに反応してNYダウが前日比1123ドル急落した。
昨年7月末の金融政策決定会合で日銀は利上げを決定。
利上げ決定は想定の範囲内のもので、日銀の利上げ決定を受けて日本株価は反発した。
ところが、その後の記者会見で植田和男日銀総裁が
「今回の展望レポートで示した経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えています。」
と述べて金融市場が激烈な反応を示した。
日銀の利上げ対応は適正なもの。
しかし、利上げ後の会見で「利上げを継続する」と宣言する必要はなかったと言える。
日経平均株価は7月11日の42,426円から8月5日の31,156円へ11,270円、26.6%の暴落を演じた。
歴史的な株価大暴落になった。
しかし、1990年の大暴落とは異なり、今回の株価急落は「バブル崩壊」ではない。
私は株価が反発に転じる可能性が高いとの予測を明示した。
実際、その通りになった。
この経験があるため、12月19日の利上げは見送る以外に道はなくなった。
しかし、日銀の短期金利引き上げは適正な政策対応である。
日銀の利上げを闇雲に批判する者がいるが正しくない。
日銀の責務は「通貨価値の維持」と「金融システムの安定性確保」。
「通貨価値の維持」とは「物価安定」のことだが、対外的な「通貨価値」が為替レートであり、日本円暴落は「通貨価値の暴落」を意味しており、日銀は日本円暴落を回避するために行動しなければならない。
マクドナルドのビッグマックはさまざまな要素価格が組み込まれたものであるとともに、各国で販売されていることから、為替レートの偏りを判定する上で有用な財である。
ビッグマック1個の価格がA国とB国で等しくなる為替レートを計算することができ、これを「購買力平価」と捉えることができる。
現在のビッグマック価格を基準とするとドル円レートの購買力平価は1ドル=85円程度になる。
1ドル=160円は日本円暴落水準である。
日本円暴落は日本国民保有資産のドル表示金額を激減させる。
グローバルスタンダードでの日本国民保有資産金額の激減を招いている。
国民は海外から輸入した財を消費する。
円が暴落すると輸入財に対して多くの日本円を支払わなければならない。
日本円暴落によって日本国民は巨大な損失を蒙っている。
日本円暴落によって利益を得るのは輸出者のみである。
また、2023年には日本で4%を超えるインフレも発生した。
インフレも消費者、労働者、生活者、主権者、国民に損失を与える。
金利が上がると住宅ローン金利が上昇して困ると言うが、家計の預金と借金を比較すると圧倒的に預金が多い。
金利上昇はプラスマイナスを相殺すると家計にはプラスになる。
1月の金融政策決定会合で日銀が利上げを決定することは適正な措置になる。
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