103万円の壁より消費税減税
10月27日に実施された衆院総選挙結果は自公政治に対する主権者の厳しい審判を反映するもの。
無所属で当選した議員12名のうち6名が自民会派に所属することが明らかになり、自民会派は197になり、公明と合わせて与党は221議席になる。
しかし、衆院過半数の233には届かない。
野党は238議席、野党系無所属が6議席で合わせて244議席。
野党が結集すれば政権交代を実現できる。
今回選挙の最大の争点は「政治とカネ」。
自民党の巨大裏金組織犯罪が明らかになったが自民党は真摯な対応を示さなかった。
このことに対して主権者が厳しい判定を下した。
また、2022年7月以降に表面化した自民党と統一協会の癒着に対しても厳しい目が注がれた。
裏金事件も統一協会問題もその核心は自民党旧安倍派。
選挙でもっとも厳しい結果を蒙ったのは自民党旧安倍派。
自民党が大敗したが石破首相に対する退陣を求める世論は弱い。
自民党安倍派の大幅退潮を実現させたことに対する前向きの評価が存在しているからと考えられる。
とはいえ、自公が総選挙で大敗したことは紛れもない現実。
自公の金権政治に対して主権者が明確にNOの意思を示した。
選挙後の政権樹立に際しては、この主権者意思を最大限に尊重する必要がある。
過半数に届かぬ自公にとっては、維新または国民民主を取り込むことが重要テーマになる。
しかし、維新は馬場代表に対する不信感が党内で噴出しており、新体制が固まるまでは今後の方針について冷静な協議を行える状況にない。
この事情もあるなかで最重要のキャスティングボートを握る立場に浮上しているのが国民民主党。
国民民主党の行動によって今後の政局が大きく変化する。
自公の金権腐敗政治にストップをかけて政治を刷新するには野党勢力が結集する必要がある。
野党が結集して「政治とカネ」問題を解決する「政治改革」を実現することが国民の要請だ。
これまで焦点とされた「政策活動費」の廃止か喫緊の課題。
政治資金規正法第21条の2の2項を削除することが必要。
21条の2は政治家個人への寄附を禁止する条文だが、2の2項で政党が行う寄附を例外として除外している。
この条項を削除すると政党から政治家個人への寄附も禁止される。
野党は政策活動費の廃止を明示しているが自民党は廃止を明示していない。
国民民主党が自民党にすり寄ることは政策活動費廃止の実現性が低下することを意味する。
国民民主党も本音では政策活動費廃止に前向きでないとの憶測が生まれる。
また、より大きな問題として企業・団体献金の全面禁止があるが、自民も国民も積極的でない。
他方、国民民主党は「103万円の壁」撤廃を声高に叫んでいる。
具体的には所得税・住民税の基礎控除額の引き上げを提案している。
現行制度では年収が基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)の合計である103万円を超えると所得税が発生する。
国民民主党は所得税と住民税の基礎控除を現行より75万円引き上げて178万円にすることを提案している。
しかし、この措置が国民に与える影響に重大な不公平が生じることを見落とせない。
最大の問題は減税の恩恵が年収103万円を超える給与所得者にしか発生しないこと。
年収103万円以下の給与所得者は減税の恩恵を受けられない。
所得の少ない階層にとって何よりも重い負担が消費税。
所得のない個人にとっては消費税の過酷な負担が重圧になっている。
年収200万円の人が年収のすべてを消費に回すと20万円もの消費税負担が発生する。
消費税率を5%に引き下げれば税負担が10万円も減少する。
年収100万円であれば5万円の税負担軽減が生じる。
野党が結束して政権を樹立し、政策活動費撤廃を直ちに決定すると同時に消費税率を5%に引き下げる。
この政治刷新が望ましい。
ところが、野党第一党の立憲民主党が消費税減税に背を向けている。
要するに国民民主党と立憲民主党の双方に日本政治を刷新する本気度がないということ。
この問題を主権者は冷静に見つめる必要がある。
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