問題すり替える斎藤元知事
兵庫県議会は斎藤元彦知事に対する不信任決議案を全会一致で可決した。
斎藤知事は辞職、議会解散、失職のいずれかを選択することになったが失職を選択した。
失職後、新たな知事を選出する知事選が実施される。
兵庫県選挙管理委員会は9月30日、斎藤元彦氏失職に伴う次期知事選を10月31日告示、11月17日投開票の日程で実施することを決めた。
他方、次期衆院総選挙は10月15日公示、10月27日投開票で実施される方針が示された。
この結果、知事選は衆院選の投開票日の4日後に告示される。
衆院選との同日実施は準備の面で難しいと判断された。
斎藤元彦氏はこの知事選に出馬する意向を表明した。
斎藤氏が辞職でなく失職を選んだのは、失職に伴う出直し選挙では当選した場合の任期が4年になるからと見られる。
辞職に伴う出直し選では新たな知事の任期は1年になる
出直し知事選で当選して4年の任期を新たに獲得することを目指すということ。
斎藤氏は出直し知事選に立候補する意向を示した会見で、
「文書問題の調査を行い、事実を解明していくことはすごく大事だが、果たして知事が職を辞すべきことなのかというのが根底にあるのが正直なところだ。」
「違ったことはしっかり改めるべきで、机をたたいたことや付箋を投げたことは反省しなければいけないが、知事は大きな負託を受けてなるもので、職を辞することはかなり重大なことだ。議会の判断だが、本当にそこまでいかなければいけなかったのかという思いは正直あった」
と述べた。
斎藤氏は自分が何を問われているのかをまるで理解していない。
文書に書かれていたことを根拠に不信任が突き付けられたのではない。
斎藤知事の問題を内部通報した県幹部職員の行動に対して県として適切な対応を取らなかったことを追及されている。
内部通報が行われた場合、内部通報者を守ることが内部通報制度の根幹である。
ところが、斎藤知事は内部告発の犯人捜しを指示し、内部告発をした人物に対する不正で不当な脅迫行為を繰り広げたと見られている。
決定的に重要であるのは内部告発を行った県局長が自死に追い込まれたこと。
斎藤知事の指示に基づき告発者の犯人探しが実行され、告発者のPCを押収し、PCに保存されていた個人データを材料に脅迫行為が展開されたと指摘されている。
このために県局長が自死に追い込まれたとの見方が有力である。
一人のかけがえのない命が失われた。
しかも、かけがえのない命が失われたことに、斎藤知事の行動が深くかかわっている疑いが指摘されている。
かけがえのない命が失われたのは1名でない。
兵庫県総務課長は斎藤氏が主導した阪神優勝パレードの資金調達の困難に直面させられた。
不足する資金を補うために兵庫県は金融機関に対する補助金を増額して、その増額分を寄附でキックバックさせたとの疑いが指摘されている。
違法な財政資金の取り扱いである疑いもあり、刑事告発もなされている。
総務課長は、この難題処理を背負い苦吟していたと伝えられている。
この総務課長も自死に追い込まれた。
さらに、国と兵庫県が共同出資する公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長を務める五百旗頭真・神戸大学名誉教授に対し、同氏が全幅の信頼を置く2人の副理事長を解任する方針を片山副知事が通告し、その直後に五百旗頭理事長が急逝した。
この死も県の対応が影響を与えたものだとの見方がある。
つまり、文書に書かれていた内容が知事辞任に値するとの理由で不信任案が可決されたのではない。
内部告発問題に対する斎藤知事の対応の不適正が一人の幹部職員の尊い命を失う原因になったとの見方があるなかで、斎藤知事がこの問題に対して真摯な姿勢を示さないことに対する県議会の判断であると言える。
また、阪神優勝パレードの資金調達に関連した不透明な県の対応と、その問題を背負わされた県総務課長の自死問題に対する斎藤氏の対応が真摯でないとの判断などが知事不信任決議の背景であると思われる。
斎藤氏は、この重大な問題に対する見解を明らかにしていない。
その上で「道義上の責任」さえ否定している。
文書に書かれていたことが知事辞職に値するのかどうかという問題ではない。
知事の不適切な対応で少なくとも二人の県幹部職員が自死に追い込まれた疑いがあるという問題なのだ。
兵庫県民は、この点を見落とすことなく知事選に臨む必要がある。
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