適正に運営される日米金融政策
9月18日のFRB・FOMCで0.5%幅の利下げが決定された。
9月20日の日銀政策決定会合では政策金利が据え置かれた。
一連の政策決定を背景に、米国ではNYダウとS&P500が終値ベースで史上最高値を更新。
他方、ドル円は143.85円/ドルまでドルが値を戻し、日経平均株価は37723円で9月20日の取引を終えた。
東京株式市場が取引を終えた後に日銀の植田和男総裁の記者会見が行われ、会見の発言を受けた先物市場では日経平均先物2024年12月限月が37970円で取引を終えた。
12月限月の日経先物価格は9月末の配当落ち分を275円程度含んでいるため、日経平均株価換算では38245円まで値を戻したことになる。
7月31日に日本銀行が小幅利上げを決定して以降、日本の株式市場を中心に荒れ模様の市場動向が観察されているが、大山は鳴動したが、結果的に見れば市場波乱は小幅にとどまっている。
私が執筆している市場分析レポート『金利・為替・株価特報』
https://uekusa-tri.co.jp/report-guide/
では、7月31日の政策決定会合での小幅利上げを予測し続けた。
その後に、株価が急落した際も、8月8日執筆の『金利・為替・株価特報』8月13日号で、
「ファンダメンタルズの急変がなければ、緩やかに株価が反発する可能性が高い」
と明記。
実際、日経平均株価は、その後順調に緩やかな上昇を続け、9月2日には39080円の戻り高値を記録した。
7月31日の日銀総裁記者会見前株価水準を回復したのである。
その後、日経平均先物価格(2024年12月限月)は9月2日の38935円から9月9日の34900円に4035円急落。
7月末以来の株価乱高下が持続する様相を示した。
この状況下で、9月12日執筆の『金利・為替・株価特報』9月17日号で、
「日経平均株価変動基本レンジを35000円-39000円の見通し」とし、
「株価収益率(PER)は15倍を下回り、日本株価に割高感は存在しない。レンジを大幅に超える株価暴落は瞬間的には生じても長期化はしない見通し」
と明記した。
『金利・為替・株価特報』では、7月31日に日銀が小幅利上げを決定するとの見通しを提示するとともに、この利上げ以降は、性急に利上げを継続する必要性が低下するとの見通しを示した。
7月31日の日銀政策決定は想定通りであり、かつ適正なものであると判断できるが、この日の記者会見で植田総裁が
「引き続き政策金利を引き上げていくことになる」
と発言し、これを契機に金融市場の乱高下が始動したことは、本来回避すべきものであったと言える。
この点については、植田総裁の発言が必要なかったとの評価を示してきた。
その後に日本株価が急落したのは8月2日に発表された米国7月雇用統計によっている。
また、9月2日から9日にかけての株価再反落も米国経済統計発表が契機になっている。
最大の焦点は米国経済軟着陸の可否。
8月2日以降に台頭したのは、米国経済が「軟着陸」ではなく「リセッション=景気後退」という「ハードランディング」に向かうとの思惑だ。
内外の専門家筋が「米国経済ハードランディング」を強調して不安が煽られてきた。
しかし、『金利・為替・株価特報』では、一貫して米国経済軟着陸可能性を指摘し続けてきた。
現時点では、金融市場が再び「米国経済軟着陸」の可能性を想定し始めている。
こうしたなかで、日銀の金融政策運営に対する論評があれこれ提示されている。
9月20日の植田総裁記者会見でも、7月末政策決定を含めた日銀政策運営を批判する主張が一部の記者から示され、日本テレビ系ニュースサイトでも植田総裁の政策運営を批判する論調が強調された。
しかし、これらの批評は大局観を見失ったもの。
大局を概観すれば、植田日銀の政策運営は極めて正当である。
自民党総裁選でもマクロ経済政策運営について論議があるが、金融政策超緩和の継続を求める声が依然として存在することは驚きに近い。
日本のインフレ率は日銀目標の2%を大幅に突破した。
日本で警戒しなければならないことはインフレの加速であり、日銀が金融超緩和を修正することは当然の対応である。
マクロ経済政策で論議しなければならないのは、財政政策と金融政策の望ましい組み合わせ。
この論議が完全に欠落している。
実際、7月31日以降の日本株式市場の乱高下を詳細に観察すると、明確な政策路線のあり方がくっきりと明示されることが分かる。
以下にその点を詳述したい。
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