内外株価急落と今後の動向
8月2日の内外金融市場で株価が急落した。
日経平均株価は前日比2216円下落して35909円で引けた。
1日の下落幅としては1987年10月のブラックマンデーの下落幅3836円に次いで歴代2番目の大きさになった。
7月31日に日銀は短期政策金利を小幅引き上げた。
1987年の世界的な株価急落はドイツが金利を引き上げ、日本もドイツに追随する構えを示したタイミングで発生した。
当時の米国は財政と経常収支の「双子の赤字」に苦しんでおり、海外からの資本流入によって経済が回る状況にあった。
日本は巨額の経常収支黒字を計上しており、資本供給国の利上げは国際的な資金循環を阻害する要因になると指摘された。
米国での株価急落はドイツの利上げ、日本の利上げへの動きが背景になったと指摘され、米国は日本の利上げ中止を要請。
日本は利上げを見送り、89年5月まで1年半、利上げを先送りした。
日本は金融引き締めを先送りしたが、その結果、日本で過剰流動性が生み出され、資産価格のバブルが生成された。
日本は1987年に米国からの圧力に屈せずに、金融政策の引き締めへの転換を断行するべきであった。
日本のバブル生成は米国による圧力に屈して利上げ措置を先送りしたために発生してしまったものである。
今回の株価下落も基本図式としてブラックマンデーと類似した部分がある。
今回は日銀が小幅利上げを決定したあとで株価急落が生じた。
日銀の政策決定が誤りであったとの論評も生まれる可能性がある。
しかし、その指摘は正しくない。
日銀の政策修正は正当なもの。
金利引き上げは決定されたが小幅なものであり、日本のインフレ進行、日本円の暴落を踏まえれば、遅きに失した面すらあると言える。
8月2日に米国の7月雇用統計が発表された。
非農業部門雇用者数は前月比11万4000人増となり事前の市場予想を下回った。
失業率は2021年9月以来約3年ぶりの高水準となる4.3%に上昇した。
7月の平均賃金は前月比0.2%上昇、前年比3.6%上昇になった。
平均賃金の前年比上昇率は約3ぶりの低水準となった。
失業率は「遅行指標」と呼ばれる。
景気減速が進行し、遅れて失業率が上昇するとされる。
その失業率に明確な上昇傾向が観察されるようになった。
FRBが実行した強力な金融引き締め政策が経済活動を抑制する効果を発揮し始めたと考えられる。
状況変化を受けて9月にFRBが利下げを始動させる可能性が高まった。
内外株価が急落したが、基本的にはこれまでの株価急騰の反動の側面が強い。
米国経済で最大の焦点は経済軟着陸の可否。
インフレを抑止し、かつ、景気拡大を維持する。
これが「経済軟着陸」シナリオだが、これが実現するのかどうか。
経済軟着陸に成功するなら株価が暴落し続ける可能性は限定的である。
これまでは、景気指標、物価指標が強く、利下げを正当化できる状況になかった。
ところが、8月2日発表の7月雇用統計はFRBの利下げ着手を後押しするものになった。
これまで、米国の株式市場は利下げ観測が強まれば株価が上昇し、利下げ観測が後退すると株価が下落するとの反応を示してきた。
今回は利下げ観測が強まる経済指標が発表されたのであり、本来は株価が堅調に推移してもおかしくない局面である。
日本では7月11日にかけて株価が急騰した。
しかし、7月末日銀政策決定会合で利上げが決定される可能性があり、7月11日から株価は反落した。
7月31日の金融政策決定会合で日銀が利上げを決定し、いったんは、悪材料出尽くしで株価反発が生じたが、その後に、反落した。
7月11日高値が42426円で8月2日には35909円まで下落。
下落幅は6517円、下落率は15.4%に達した。
8月2日のCME日経平均先物は34812円で引けた。
7月11日高値からの下落幅は7614円、下落率は17.9%に達した。
しかし、経済の基礎的条件=ファンダメンタルズが変化したわけではない。
金融市場の投機色が強まっていることが背景の株価乱高下である。
ブラックマンデーの株価暴落も比較的短期に完全修復されている。
狼狽することなく経済のファンダメンタルズを確認することが重要である。
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