内閣交代で11月にも総選挙実施へ
岸田首相が9月の自民党総裁選出馬断念を表明した。
首相退陣の表明である。
岸田氏は2021年9月の自民党総裁選で勝利して首相に就任した。
首相の地位に3年留まった。
政権発足当初は前任者の印象の悪さの反動で高めの支持率を確保し、21年10月総選挙と22年7月参院選を無難に乗り切ったが、22年7月に安倍元首相が暗殺されて以降、支持率急落に直面した。
22年7月、「何もし内閣」が突然独断専横に転じた。
安倍元首相死去に伴い岸田首相が国葬実施を独断で決定したことを契機に内閣支持率が急落した。
岸田内閣支持率が3割を割り込んだのは22年9月。
2006年以降、内閣支持率が3割を割り込んだ内閣は例外なく10ヵ月以内に終焉した。
しかし、岸田内閣は初めての例外となり、内閣支持率が3割を割り込んでから約2年残存した。
理由は後述するように野党人気の凋落にある。
安倍元首相暗殺は自民党と統一協会の癒着に光を当てる結果をもたらした。
国民の批判は沸騰して岸田内閣支持率が凋落した。
事態が変化したのは23年前半。
5月に広島でサミットが開催され、祭り気分で支持率が小幅回復した。
岸田氏が総選挙で勝負をかける唯一のチャンスだったが、岸田氏は怯んで衆院解散を見送った。
安倍元首相国葬を独断専横で決定した岸田首相は、これを契機に独断専横路線を突き進んだ。
22年末には、軍事費倍増、原発稼働全面推進、大型増税検討の方針を打ち出した。
23年春に小幅上昇した内閣支持率はサミット開催を契機に再び下落。
内閣支持率2割割れに移行した。
23年後半以降、自民党裏金不正事件が表面化。
85名もの議員が違法行為に手を染めていたことが明らかにされた。
違法な裏金不記載の規模が1000万円を超えた議員は21名に達した。
しかし、検察は巨大犯罪の氷山の一角しか摘発しなかった。
国会で政治資金規正法改正が審議されたが自公維が出した結論は完全なザル法改正案。
これを強行制定して通常国会に幕を引いた。
この状況下で自民党は衆院補選、地方自治体首長選挙で連戦連敗。
7月7日の東京都議会議員選挙でも9選挙区で2勝しかできない惨敗を喫した。
岸田首相は首相続投を目論んだが9月総裁選での敗北が避けられない見通しになり、白旗を上げた。
自民党は9月総裁選で新総裁を選出して新内閣を発足させる。
内閣支持率は新政権発足時に高水準を記録する。
この状況を作り出し、直ちに衆院を解散して総選挙を挙行するものと見られる。
米国大統領選が11月5日に投票日を迎えるが、衆院総選挙は時期を同じくして11月10日に投票日が設定される可能性がある。
自民党は政治とカネ問題が噴出しても旧態依然の対応を続けている。
「政治とカネ」不正の根源は年間10億円を幹事長に政策活動費として付与して資金使途を一切明らかにしないこと。
法改正で政党から政治家個人への寄附を禁止することが最低限必要だったが自民党は何もしなかった。
このまま岸田首相体制で衆院総選挙を迎えれば自民党は議席を激減させる可能性が高い。
このことから、自民党内で首相交代を求める声が高まり、岸田氏は首相退陣に追い込まれた。
自民党は党首を交代しても大きな変革を実現すると期待できない。
政治刷新が必要な状況だ。
ところが、今後の変化に期待することは困難な情勢だ。
最大の原因は野党第一党の勢いがないこと。
立憲民主党も9月に党首選を実施する。
しかし、党の刷新を期待できる選挙戦になる見通しが存在しない。
代表選の壇上で「昔の名前で出ています」を皆で合唱するのが関の山の状況だ。
自民党以上に刷新が必要であるのが野党の状況である。
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