日本の一番長い5年間
間もなく敗戦から79年の時間が経過する。
日本は遂行するべきでない戦争に突き進み、敗戦した。
日本が降伏文書に調印し、日本の敗戦が確定したのは1945年9月2日。
したがって、敗戦を記す特定日を抽出するなら9月2日である。
8月15日は正午から、前日に決まったポツダム宣言受諾及び日本の降伏が国民に公表された(ラジオによる玉音放送)日にすぎない。
日本政府は軍に武装解除とアメリカ・イギリス・中国などの連合軍への投降命令を発し、連合国はこれを受けて戦闘を止めた。
しかし、日本敗戦が正式に確定したのは9月2日。
したがって、9月2日を「日本敗戦の日」と定めるのが適正である。
敗戦後、最大の問題として浮上したのが天皇の責任である。
天皇の戦争責任を問うか。
憲法制定が遅れていれば天皇の戦争責任が問われた可能性は高かった。
敗戦国日本を連合国が占領管理するために設置されたのが「極東委員会」。
11ヵ国の代表からなる最高政策決定機関である。
ソ連、オーストラリア、中華民国などが含まれた。
極東委員会は第1回会議をワシントンで2月26日に開いた。
その直後の3月6日に、日本国政府が「憲法改正草案要綱」を突然発表。
連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)総司令官のマッカーサーが支持声明を発出した。
極東委員会はマッカーサーが権限を逸脱したと批判したが、結局はGHQが押し切った。
この過程でマッカーサーが天皇の免責を判断した。
同時並行で進んだのが極東国際軍事裁判。
1946年1月19日に極東国際軍事裁判所条例を制定。
同日に連合国軍最高司令官総司令部総司令官ダグラス・マッカーサー元帥による「極東国際軍事裁判所設立に関する特別宣言」が発出された。
A級戦犯28名が確定したのは4月17日。
米国の検察陣が東京入りしたのは45年12月。
2月2日に英国代表が来日し、各国検察陣が加わり、国際検察局が構成された。
これら検察陣のなかで昭和天皇に対して最も厳しい立場を取ったのはオーストラリアで2月11日に昭和天皇を含む124名の戦犯リストを提出した。
天皇の戦争責任が問われる状況が強まった。
2014年9月に『昭和天皇実録』が公表され、多くの新事実が明らかになった。
『実録』によれば、46年2月25日以降、昭和天皇による戦争責任回避に向けての「独白録」作成が4月8日に至るまで5回にわたって行われた。
「昭和天皇独白録」が書き上げられたのは6月1日だが、実はこれに先行して「英語版独白録」が作成され、4月24日にはマッカーサーの軍事秘書であるボナー・フェラーズに渡されていたことが宮内省御用掛寺崎英成日記に記されている。
戦争責任を回避する主張の核心は二つである。
第一は、真珠湾奇襲に関して、宣戦の詔書を東条大将が使用した如くに使用する意図はなかったこと。
つまり、真珠湾の奇襲は昭和天皇の意に反して東条が主導したというもの。
第二は、昭和天皇が「自分は戦争回避と和平に努力したが、内大臣の職務権限の「制約」ゆえに開戦を阻止できなかった」というもの。
立憲制の下での君主には個別の施策について口を差し挟む権限は存在しなかったというもの。
マッカーサーは日本統治を進めるにあたり、天皇制を維持することが好都合であると判断したと思われる。
そこで、象徴天皇制に移行する日本国憲法草案作成を急ぎ、憲法制定が極東委員会によって主導される前に憲法制定の動きを加速させた。
この過程で昭和天皇の「独白録」に基づいて天皇の戦争責任を回避する方向に動いたのだと思われる。
そして、歴史はマッカーサーが思い描いた方向で推移した。
結果として、1947年5月3日には日本国憲法が施行した。
この新憲法下における天皇は象徴であり、国政に関する権能を持たない。
ところが、1947年5月から1952年4月のサンフランシスコ講和条約発効に至る過程で、実は昭和天皇が日本の針路を定める主導的役割を果たした。
その事実と是非が、敗戦から79年を迎えるいま、改めて論議される必要がある。
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