日本経済衰退主因の政策運営
「骨太の方針」と呼ばれるものがある。
あまりにも陳腐なネーミング。
本来の名称は「経済財政運営と改革の基本方針」。
このなかにも意味不明な言葉が用いられている。
「改革」だ。
何かを変えることを「改革」と表現しているのだが、何をどう変えるのかによって「改正」にもなるし「改悪」にもなる。
「改革」という言葉にはプラスのニュアンスが含まれているから、いかなる改悪であっても「改革」の言葉をかぶせてしまえば良い制度変更であるかのように偽装できる。
だから名称は単純に「経済財政運営の基本方針」とすべきである。
方針が良いものであるか悪いものであるのかを判定するのは主権者である国民。
運営側が「改革」と称して「良い制度変更をする」と、判定を強要するのは不当だ。
2001年1月、省庁再編で内閣府に経済財政諮問会議が設置された。
このとき、当時の宮澤喜一財務相が「諮問会議では骨太の議論をする」と発言したために、「経済財政運営と改革の基本方針」の通称が「骨太の方針」とされたといわれる。
骨太の議論をすることは構わないが「経済財政運営の基本方針」に「骨太の」と付すのは奇妙。
言葉が陳腐であるだけでなく、基本方針に対する評価を発表する側が名称に盛り込むことがおこがましい。
企業が経営計画を発表する際に
「素晴らしい経営計画」、「立派な経営計画」、「最高の経営計画」などの修飾語を付すようなもの。
実際に日本経済は25年間、凋落を続けてきた。
2001年に小泉内閣が「骨太方針」を発表し始めてから、現在まで経済の凋落が続き、日本国民の生活は悪化の一途を辿っている。
その原因は三つ。
第一は市場原理至上主義が採用されてきたこと
第二は大企業利益だけが追求されてきたこと
第三は財政収支均衡主義が根幹に置かれたこと
大資本と富裕層の利益だけが追求された。
このことは、裏を返せば一般国民=労働者=消費者の利益が踏みにじられてきたことを意味する。
大企業の利益を拡大するために諸制度が改変された。
これを「改革」と称してきた。
「改革」は大資本利益を増大させる制度変更で、同時に、一般労働者の不利益を増大させる制度変更だった。
このことを端的に示しているのが労働者一人当たりの実質賃金推移。
1996年から2023年までの27年間に労働者実質賃金は16.7%も減少した。
労働者分配所得が減少した一方で、大企業利益は激増した。
株価上昇は日本経済好調の反映ではなく大企業利益好調の反映。
大企業利益は労働者所得減少を踏み台にして達成されたもの。
「改革」の代表は労働規制の撤廃。
派遣労働が拡大し、正規労働者が激減して非正規労働者が激増した。
「働き方改革」という名の「働き方改悪」も強行された。
長時間残業が合法化され、定額働かせ放題労働プランも拡大された。
経済財政運営の歪みの象徴が税制の改変。
消費税大増税と法人・個人大減税が同時並行で進められた。
消費税が導入された1989年度から現在までに消費税で500兆円が吸い上げられたが、同じ期間に法人と個人の税負担が610兆円も軽減された。
庶民から税金をむしり取り、この税収が大企業と富裕層の減税に充てられた。
個人消費の推移を見ると個人消費の停滞が消費税増税を連動していることが一目瞭然だ。
この日本経済がいま、景気後退の入り口に立っている。
経済政策運営を根底から刷新しなければ日本経済は深刻な不況に転落する。
「骨太」という陳腐な名称の政策方針を全面撤回することが強く求められる。
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