適正な日本銀行の政策修正
日銀が政策修正を決定した。
マイナス金利を解除し、イールドカーブコントロールを撤廃した。
想定通りの政策修正である。
日銀の政策修正は当然のもの。
遅きに失した面が強い。
理由は安倍内閣がインフレ誘導をゴリ押ししてきたことにある。
インフレ誘導は庶民にとってメリットのある施策ではない。
2%程度のインフレ率が安定的に維持されることは悪いことではないが、インフレの亢進そのものは弊害が多い。
物価上昇率が2%程度ある状況は悪いことでない。
財サービスの価格が平均で2%程度上昇する状況下では相対価格の調整が円滑に進むからだ。
モノの値段は上がるものもあれば下がるものもある。
全体のインフレ率がゼロであると相対価格の調整が進みにくい。
理由は価格に下方硬直性があること。
値段が上がることは普通だが、値段が下がることは起こりにくい。
値段が下がることが少ないと、平均インフレ率がゼロの場合、相対的に値下がりするべきものの値段も下がらず、価格のばらつきが生じにくくなってしまう。
平均で2%程度のインフレがあると、相対価格が下がるべきものの値段が下がらず横ばいであっても、他のものが2%値上がりしたり、4%値上がりしたりすることにより、相対価格の調整が円滑に進む。
価格変化のばらつきが広範に広がることが相対価格の調整の進展で資源配分の適正化に資する。
この意味で2%程度のインフレ率が安定的に維持される状況は悪いものでない。
ただし、インフレがどんどん進行することの弊害は大きい。
インフレとデフレは経済に影響を与える。
ある者にとってはプラスに、別の者にとってはマイナスに作用する。
インフレで利益を得るのは賃金を支払う者と借金をしている者。
逆に賃金を受け取る者と預金している者はインフレで損失を蒙る。
デフレはこの逆。
デフレになると賃金を支払う者と借金をしている者が損を蒙る。
逆に賃金を受け取る者と預金をしている者は利益を得る。
2012年12月に発足した第2次安倍内閣が「インフレ誘導」の旗を振った。
この「インフレ誘導」で利益を得ることを期待したのは企業と政府だった。
企業は支払う実質賃金を抑制できる。
政府にとっては、借金の重みがインフレ進行によって軽くなる。
2022年から2023年にかけて、日本でも激しいインフレが起きた。
4%を超えるインフレだ。
このようなインフレを日銀が容認するのは誤り。
日銀総裁が代わり、ようやく金融政策正常化が動き始めた。
黒田東彦氏は安倍晋三氏と手を携えてインフレ誘導を目指した。
不幸中の幸いで、その政策目標は実現しなかった。
インフレ誘導政策を強行したがインフレ誘導は実現しなかった。
ところが、2022年から23年には特殊な要因でインフレが生じた。
このインフレを抑止するのが日銀の役割。
黒田東彦氏は自身が提示した路線に執着して、最後の最後まで政策修正を断行できなかったが、日銀総裁が交代して、ようやく異常な金融政策運営に終止符が打たれつつある。
この日銀政策修正を批判する者がいるが間違っている。
インフレ誘導を推進する人々は、当人が大きな借金を背負っている場合が多いと言われてきた。
インフレが生じると借金が目減りするからだ。
しかし、一般的な庶民にとって、インフレは百害あって一利なしである。
このことを正確に認識しておかねばならない。
日銀が政策を修正し、インフレ抑止の姿勢を持つことは正しいことを認識しておかねばならない。
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