最重要経済統計報じぬメディア
2月6日、現在の日本経済における最重要統計が発表された。
毎月勤労統計=賃金統計だ。
ところが、メディアがほとんど報道しない。
NHKがニュースウォッチ9で触れたが、その他ニュースの最後にかたちだけ触れただけ。
スタジオで取り上げることもなかった。
岸田首相は昨年10月23日の所信表明演説で
「経済、経済、経済。わたしは何より経済に重点を置いてまいります。」
と声を張り上げた。
1月30日の衆院本会議での施政方針演説では
「賃金が上がることが当たり前だとの意識を社会全体に定着させる」
と述べた。
「賃金」こそ岸田内閣が掲げる最重要経済指標である。
2023年も春闘での賃上げを岸田首相が連呼した。
そして、春闘で賃上げが実現したかのような自画自賛も演じられた。
しかし、労働者はまったく喜んでいない。
労働者にとって重要な賃金指標は名目賃金ではない。
実質賃金である。
名目賃金が増えても物価上昇率がこれを上回れば実質賃金は減る。
実質賃金が増加しなければ何の意味もない。
2月6日に、昨年12月の賃金統計が発表された。
2023年12月の実質賃金は前年同月比で1.9%減少した。
21ヵ月連続の減少。
日本の労働者の実質賃金は減少し続けている。
春闘で賃上げが行われても、物価上昇がこれを上回り、実質賃金は減っているのだ。
本年1月10日に開催されたJR総連の旗開きレセプションで、私は労働組合に対して強く要望した。
連合は賃上げを要求しており、私は賃上げを否定するものではないが、労働者にとって重要なのは実質賃金である。
賃上げが実現してもインフレがこれを上回れば実質賃金は減少する。
実質賃金の増加を獲得するには、何よりもインフレ鎮圧、物価抑止が重要である。
労働組合は政府に対してインフレ抑止を強く訴えるべきである。
こう訴えた。
この声に聴く耳を持っていただいたのかは定かでない。
しかし、現実の問題として、日本ではインフレが亢進してインフレが賃上げを上回る状況が続いている。
その結果として実質賃金が減り続けている。
このことを労働組合が問題にしないことは不当である。
12月統計発表で2023年の実績(速報値)が明らかになった。
2023年の実質賃金は前年比で2.5%減少。
マイナス1.0%だった2022年の賃金減少を大幅に上回る賃金減少が生じたのである。
この重大ニュースをテレビメディアが大きく報道しない。
さすがに日経新聞は夕刊トップで報じたがテレビメディアの取り扱いがあまりにも小さい。
岸田内閣に決定的な打撃を与えることは明らかだ。
2020年を200とする指数では2023年は97.1となり、初めて100を下回った2022年からさらに低下した。
比較可能な1990年以降で最低の水準である。
連合は賃上げを求めるが、賃上げを実行できるのは大企業に限られる。
中小零細企業は賃上げどころでない。
大企業だけが賃上げを実施すれば、大企業と中小零細企業の間の所得格差はさらに広がる。
すべての労働者の利益を重視するなら、労働組合は「賃上げ」よりも「物価抑制」を優先するべきなのだ。
「賃上げ」は大企業でしか実現されないが、「物価抑制」の恩恵はすべての労働者に行き渡る。
政府と日銀がインフレ誘導に邁進してきた理由を踏まえずに、インフレ推進に労働組合が加担することは、あまりにも思慮が浅すぎる。
岸田内閣は2024年も「賃上げ、賃上げ、賃上げ」を叫ぶが、実質賃金の大幅増は見込みようがない。
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