政策修正に追い込まれた日銀
10月31日の金融政策決定会合で予想通り日銀は政策修正に追い込まれた。
金融市場では10月30日午後11時ころの日経新聞政策修正観測記事配信により大きな変動が生じた。
重要な政策決定に関する情報が事前に外部流出する事態を政府は厳正に検証する必要がある。
FRBの政策決定でも情報の外部流出は厳しく禁じられる。
情報漏洩が生じれば重大事態とみなされる。
日銀の情報管理体制の不備が問題視されねばならない。
私が執筆している会員制レポートでは、10月下旬号で日銀の政策修正に向けて市場心理が悪化するが、政策修正によって一種のアク抜けが生じて株価が反発する可能性が高いとの見通しを記述した。
「金利・為替・株価特報」
https://uekusa-tri.co.jp/report-guide/
日銀は2024年度と2025年度の物価見通しを上方改定した。
本年7月の展望レポートにおける日銀のインフレ率見通しは、
生鮮食品とエネルギーを除く総合
2024年度 1.7%
2025年度 1.8%
生鮮食品を除く総合
2024年度 1.9%
2025年度 1.6%
だった。
今回10月見通しで下記数値に改定された。
生鮮食品とエネルギーを除く総合
2024年度 1.9%
2025年度 1.9%
生鮮食品を除く総合
2024年度 2.8%
2025年度 1.7%
日銀は「生鮮食品を除く総合=コア」物価指数上昇率を重視する。
そのコア物価上昇率において、2024年度の見通しを7月の1.9%から2.8%に改定した。
来年度のインフレ率が2%を大幅に上回るとの見通しに変更した。
これを背景に長期金利の上限値が再び引き上げられたと言える。
米国のコア物価指数は食品とエネルギーを除く指数。
これを米国ではコア指数としている。
日本でも日銀が最重視するべき物価指数は生鮮食品とエネルギーを除く総合指数とするべきだ。
この「生鮮食品とエネルギーを除く総合指数」上昇率の2023年度見通しが2023年1月から10月にかけて、どのように変化してきたのかを示す。
2023年度の生鮮食品とエネルギーを除く総合指数上昇率推移
2023年1月見通し +1.8%
2023年4月見通し +2.5%
2023年7月見通し +3.2%
2023年10月見通し +3.8%
この数値は日本銀行の物価見通し能力欠落を鮮明に示している。
今年度のコアコア指数(生鮮食品とエネルギーを除く総合)のインフレ率を1月には+1.8%と予測していた。
時間の経過に連動して日銀のインフレ率予想=見通しが上方修正されてきたことが分かる。
年初に1.8%インフレと予測していた2023年度インフレ率見通しがこの10月には3.8%インフレ率予測に変化した。
インフレ率を正確に予測できない日銀が持続的安定的に2%インフレが実現する見通しが得られていないと主張しても説得力がまったくない。
日銀は金融緩和政策を続ける理由を「2%インフレが持続的かつ安定的に達成される見通しが得られていないこと」としている。
しかし、その「見通し」は日銀が独断で予測する「見通し」。
日銀「見通し」が現実の推移を適合しているなら、日銀見通しを前提とする政策運営に正統性が生じる。
しかし、日銀「見通し」が現実の推移をまともに予測できないなら、その見通しを基に政策を運営することに正統性はない。
日銀の最大責務は物価安定の実現。
現在のインフレ率は2%をはるかに超えている。
このインフレが国民の生活を困窮させている。
賃上げが実施されたと騒がれたが、賃上げからインフレ率を差し引いた実質賃金は大幅減少が続いている。
結局、日銀は連続して物価見通し上方修正に追い込まれ、五月雨式に金融政策運営修正に追い込まれている。
日銀の政策修正は当然の帰結だが、現実の物価統計の動き等に催促されて、政策修正が後手後手に回るのは最悪だ。
今後もインフレ率予想=見通しの五月雨式修正に追い込まれることになるだろう。
インフレの流れを加速させることは国民経済の健全な発展を阻害するもの。
日銀の政策運営能力を引き上げることが求められている。
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