暴風警報下営利優先の阿波踊り
お盆休みを直撃した台風7号。
東海道新幹線をはじめ、陸海空の交通機関へも大きな影響を与えた。
台風の場合には事前の警戒が可能であるから、突発的に発生する地震などと比較すれば災害に対する備えを施すことができる。
事前の準備と最大の警戒によって被害をある程度抑止することは可能である。
それでも、大自然の力に抗うことはできない。
台風が日本本土を直撃すれば甚大な被害発生を阻止することは不可能だ。
台風が強い勢力で上陸して本土を縦断すれば大きな被害が発生する。
暴風と豪雨は甚大な被害をもたらす。
重要なことは最大の警戒を払い、被害を最小限に抑止すること。
台風襲来がお盆休みに重なれば影響はさらに大きくなる。
お盆休みには各地で重要なイベントが実施される。
徳島県では阿波踊りが、岐阜県では郡上おどりが開催された。
阿波踊りでは8月14日に市長が開催中止を要請したが実行委員会が開催を強行した。
郡上おどりでは8月15日の行事がすべて中止された。
祭りを準備してきた実行委員会が開催を希望するのは当然だ。
しかし、台風等の自然災害に遭遇した場合にどう行動すべきか。
基準を明確にしておく必要がある。
祭りは私的事業でない。
必ず公共性を帯びる。
すべてが私的な管理下で行われる行事なら、各主体に判断を委ねてよいだろう。
完全な私有地で公共に影響を与えずに私的な管理下ですべての運営が完結するなら各運営主体に判断を委ねてよいだろう。
しかし、祭りや花火大会などの行事では状況が異なる。
完全な「私的運営」はあり得ない。
公的関与が必ず発生する。
阿波踊りを実施する場所は私的空間でない。
公共の道路を占有して祭りを実行する。
「公共性」を完全に排除することはできない。
「公共性」のある事業であるから、「公共性」に沿う運営や企画が必要になる。
阿波踊りでは台風接近による重大な影響が予測されていた。
阿波おどりが開催された当時、徳島市内全域に「警戒レベル3避難準備・高齢者等避難開始」が発令されていた。
徳島市の内藤佐和子市長はSNSのXに
「徳島市として、今後、台風の影響が大きくなっていくことが見込まれるため、阿波おどり実行委員会に対して、中止を要請しましたが、実行委員会は阿波おどりの開催を決定したとのことです」
と投稿した。
判断の権限は実行委員会にあるとされ、実行委員会が開催を強行したが、適切な判断と言えない。
8月14日午後9時13分には徳島市に暴風警報が発令された。
しかし、阿波踊り実行委員会は午後9時半過ぎからの「総おどり」をスタートさせた。
重大な事故が発生する蓋然性が極めて高いなかでの祭りの強行だった。
全国の花火大会、祭り等で、有料化の動きが広がり、1人当たりの席料が20万円などという事例も報じられている。
せっかく楽しみにしてきた花火大会なのに、道路に高い塀が張り巡らされて一般市民が花火を楽しむことができない措置を取った自治体もある。
既述したように、祭りやイベントが完全に私的管理下で行われるものであるなら、有料化も肯定されるし、判断も私的判断に委ねられるべきだろう。
それでも、災害に対する緊急対応の要請は私的行動に対しても効力を有するから、暴風警報発令下でのイベント実施強行は適正でない。
祭りにせよ、花火大会にせよ、完全な私的管理下の行事ではない。
花火大会の実施に際して公的な関与が必ず発生する。
道路も公共物であるし、大空の空間も私的管理下にあるものでない。
財源調達の必要があることは理解できるが財源は広告の対価としてのスポンサー料を設定すればよい。
祭りや花火大会を楽しむ機会は市民に公平に配分されるべきである。
公共管理下で実施されるイベントに貧富の格差を持ち込むことは適正でない。
警備の必要上、人員に上限を用いて観客席を用意するなら、座席の配分は公正な抽選によるべきだ。
税金を投入して警備などを行う公共性のある事業に貧富の格差を持ち込むのは間違っている。
現在の方式の延長線上に生じるのは高額納税者にはS席を用意し、納税額が僅少の市民には観覧させないという方式である。
公共の祭りに弱肉強食の論理を持ち込むことは間違っている。
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