宏一前副社長と損保Jの会見必須
記者会見を開いても質問者が的確な質問を振り向けなければ意味を失う。
ビッグモーター社が記者会見を開き前社長ならびに新社長が出席した。
顧客から預かった修理のための自動車を損壊し、保険会社に過大な保険金支払いを行わせていた行為が明るみに出て、企業の責任を明らかにするために会見が開かれた。
ビッグモーター社の創業者であり社長を務めていた兼重宏行氏は不正行為を知らなかったと述べた。
企業の代表権を持つ役員が不正行為を認識していた、あるいは指示していたのか、経営幹部がまったく知らず、関与しないかたちで不正が行われたのかによって責任追及の対象は変化し得る。
兼重社長は組織ぐるみということはないと発言したが信ぴょう性は低い。
ネットメディア等によって伝えられている多くの関係者の証言によると不正事案のカギを握っているのは兼重宏行氏の子息である兼重宏一氏であるとのこと。
兼重宏一氏はビッグモーター社の取締役副社長を務めてきた。
5年ほど前に会社の指揮命令発出の中心が兼重宏行社長から兼重宏一副社長に移行したと伝えられている。
ビッグモーターの不正事案が目立つのは5年前以降のこと。
経営の実権が宏行氏から宏一氏に移行したのと不正行為が多く観測され始めたことが軌を一にしていると見られている。
兼重宏行前社長が不正行為の詳細を把握していなかった可能性はある。
しかし、一連の不正行為等を指揮命令したトップが宏行社長ではなく宏一副社長であった疑いが強い。
したがって、記者会見で「組織ぐるみでない」と明言した宏行氏に対して、
「組織ぐるみでないという説明は、宏一副社長の関与有無を含めても明言できることか」
と問う必要があった。
仮に宏行社長が不正行為の詳細を把握しておらず、会見でその事実を述べたとするなら宏行前社長の直接的関与の疑いは消失する。
しかし、このことが、不正事案に対するビッグモーター経営幹部=役員の関与がなかった証明にはならない。
元従業員等の事実を知る関係者の多くが、一連の不正行為に直接関与していると見られるのは宏一副社長であると証言している。
したがって、記者会見を開く場合に、絶対に出席する必要があったのが宏一副社長ということになる。
会見で質問する記者は、ビッグモーター関係者への事前取材をもとに、多くの関係者が宏一副社長の関与を指摘しているため、宏一副社長会会見出席が必要不可欠であることを明確に表明する必要があった。
その上で、ビッグモーター経営陣から宏一前副社長出席の会見を改めて開く確約を取る必要があった。
宏行前社長が不正事案の詳細を完全に把握していない可能性は存在する。
しかし、現場が独断でリスクが極めて大きい不正事案を実行する可能性は高いと思われない。
多数の部署で同時並行して不正が実行されたことは組織的な指揮命令が存在したことを推認させるもの。
ビッグモーター社の板金・塗装部門トップが指揮命令を行った可能性はあるが、このことを踏まえれば、板金・塗装部門の責任者が会見に出席しなければ十分な説明ができないことも明らかだ。
より重大な問題が別に存在する。
不正事案に関する損保ジャパンの関与だ。
宏一前副社長は損保ジャパン前身の日本興亜損保に在籍したあとでビッグモーター社に入社している。
自動車が事故に遭遇し、保険を適用して修理を受ける際、保険会社は修理費用請求が適正であるかを審査する。
ビッグモーター社は器物損壊行為などを通じて保険会社に過大請求していたと指摘されている。
保険会社の審査機能が適正に機能していれば、審査段階で不正の発見等が可能になったと考えられる。
現に、いくつかの保険会社から不正請求の可能性が指摘されていたと見られている。
ところが、ビッグモーター社が過大請求と引き換えに特定の損保会社に対して利益供与していた疑いが存在する。
不正請求を見逃してもらう見返りに自賠責保険の購入を当該特定損保会社に優先的に配分することが実行されていた疑いがある。
特定の損保会社は過大請求で保険金支払いが過大になるが、ビッグモーター社から提供される自賠責保険購入拡大で差し引きプラスになれば、不正請求を容認することが可能になる。
ビッグモーター社は板金・塗装部門の売上が拡大し、当該損保会社は全体として業容を拡大できることになるが、保険業界全体で考えると本来不要な保険金支払いが発生することになり、その分だけ、最終的には任意保険の保険料が跳ね上がる結果につながる。
つまり、ビッグモーター社と当該特定損保企業の不当利益を消費者である自動車を利用する保険ユーザーが負担することになる。
損保ジャパンの不正への関与が疑われている。
重大な問題である。
この問題の徹底追及が必要不可欠である。
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