テリー・ゴウ氏の穏健な主張
2024年1月13日に台湾総統選が実施される。
直接選挙方式による台湾総統選は1996年に導入され、これまでに7回実施されてきた。
明年1月総統選が第8回目になる。
これまでの総統選では国民党の李登輝、民進党の陳水扁(2回)、国民党の馬英九(2回)、民進党の蔡英文(2回)が選出されている。
国民党と民進党が交互に総統を輩出してきた。
国民党は中国との距離が近く、民進党は米国との距離が近い。
2017年に発足したトランプ政権は対中国敵対政策を加速させた。
米国の対中国政策の基本姿勢を鮮明に示したのが2018年10月に米ハドソン研究所でのペンス副大統領講演である。
米国の対中国敵視政策の骨格が鮮明に示されている。
2019年から2020年かけて香港民主化デモが拡大した。
この背景に台湾総統選が存在したと考えられる。
米国は民進党蔡英文氏の総統再選を希望した。
しかし、蔡英文の支持率は低迷していた。
ところが、香港民主化デモ拡大を背景に蔡英文氏が支持率を上昇させ、2020年総統選で勝利した。
米国が香港での民主化デモ拡大を誘導したと考えられる。
2024年1月の総統選に向けて米国と中国の駆け引きが激化することが予想される。
このなかで、日本でも有名な鴻海(ホンハイ)精密工業創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)氏が総統選への出馬意思を表明している。
鴻海(ホンハイ)精密工業は2016年、液晶事業の不振で経営危機に陥ったシャープを買収した。
鴻海は経営危機に陥ったシャープの業績をV字回復させた。
鴻海は液晶事業からEV(電気自動車)に主軸をシフトさせようとしている。
躍進する台湾経済を代表する企業の一つが鴻海精密工業だ。
その鴻海精密工業創業者の郭台銘氏が4月27日に台湾の東海大学で講演し、中国は台湾との戦争を望んでおらず、自身が総統になれば独立を宣言することはないため、攻撃しないだろうとの見解を示した。
郭台銘氏は
「私の理解では彼らは戦争を望んでいない。
しかし独立を目指し、独立すれば戦争になる。
彼らは台湾を自国の一部を見なしている」
と述べた。
郭台銘氏は総統選で中国の関係が深い野党・国民党の候補指名獲得を目指している。
中国との緊張関係拡大に対して、台湾の市民は冷静な視点を有していると考えられる。
4月2日付ブログ記事
「アメポチでは日本国民を守れない」
https://bit.ly/3LFt8tt
同日付メルマガ記事
「米国介入を迷惑に思う台湾市民」
https://foomii.com/00050
に記述したように、台湾市民は米国が台湾と中国の緊張を意図的に拡大させていることを好意的に捉えていない。
しかし、台湾総統選の結果は米国の利害を大きく左右する。
このため、米国は今回総統選に向けても、あらゆる手段を駆使して介入を強めてくると考えられる。
米国と中国を比較して、どちらの国がより危険な存在であるのかを考える必要がある。
中国が突然、日本に戦争を仕掛けてくることがあるのか。
むしろ、警戒するべきは、米国が意図的に緊張関係を高めて、何らかの軍事衝突を人為的に引き起こすことではないのか。
私たちは「米国の手口」について、より深い勉強が必要であるし、「米国の手口」に関してより強い警戒感を持つべきである。
中国は日本や米国との国交関係樹立に際して核心的に重要な二つのことがらを明確に示した。
第一は、中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府であること
第二は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること。
米国は第二の点について、あいまいさを残して国交を樹立した。
この点が火種として残っている。
しかし、多数の台湾市民は中国との戦争を望んでいない。
中国もまた台湾との戦争を望んでいない。
このときに、戦乱を誘発させる行動を取ることは賢明でない。
日本でも戦争発生を煽る論説が流布されているが、人為的に創作される緊張拡大策に最大の警戒を払う必要がある。
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