平和友好を意図して破壊する輩
昨年9月、日中国交回復50周年を迎えた。
1972年9月29日、当時の田中角栄首相と中国の周恩来首相が北京で日中共同声明に署名。
「恒久的な平和友好関係を確立する」ことで一致した。
いわゆる「日中国交正常化」が実現した。
中国は二つの点を重視してきた。
第一は、中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府であること。
第二は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること。
1972年9月29日に締結された日中共同声明において日本は、
一番目の中国の主張を「認め」、
二番目の中国の主張を「十分理解し、尊重する」
とした。
その上で二番目の中国の主張について、
「ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」
と明記した。
ポツダム宣言第8項は、「カイロ宣言の条項は履行せざるべく」という表現を含む。
カイロ宣言は、台湾および澎湖諸島を中華民国(当時)に返還させることが対日戦争の目的の1つであると明記するもの。
カイロ宣言を発表した当時の中華民国を継承する唯一の合法政府が中華人民共和国政府であることから、この宣言は台湾、澎湖諸島を中華人民共和国に返還させることが対日戦争の目的の一つであるという内容になる。
日本政府は日中共同声明において、「カイロ宣言の条項を履行せざるべく」とするポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持すると明記したため、台湾および澎湖諸島を中華人民共和国が取り戻すことを認める内容に調印したことになる。
直接的表記ではないが、台湾が中国に帰属することを日本が認める表記になっている。
他方、米国は国交樹立時に、
中国の一番目の主張を「リコグナイズ=承認」し、
中国の二番目の主張を「アクノレッジ=認知」する
とした。
米国はこれと並行して1979年に「台湾関係法」を制定。
台湾有事が発生した場合、米国が介入することを〝オプション〟と定めた。
米国が必ず介入すると確約しないが、介入する可能性を残した。
台湾有事の際に米国が介入するのかどうかをあいまいにした。
このあいまいさは、「ステラティジック・アンビグイティ=戦略的曖昧さ」と表現されている。
米国は台湾の中国帰属をはっきりとは認めず、台湾有事の際に軍事出動する可能性を「オプション」として残している。
日本と米国の台湾問題に関する条約上の立ち位置が異なっていることを確認することが重要である。
1972年の日中共同声明、1978年の日中平和友好条約締結時に難題が存在した。
尖閣諸島領有権問題だ。
日中両国政府はともに尖閣諸島の領土主権を主張し、現実に論争が存在することを認めつつ、この問題を留保し、将来の解決に待つことで了解した。
これを「棚上げ合意」と呼んでいる。
「棚上げ合意」が存在したことを読売新聞が社説に明記した。
1979年5月31日付読売新聞社説だ。
「尖閣諸島の領有権問題は1972年の国交正常化の時も、昨年夏の日中平和友好条約の調印の際にも問題になったが、いわゆる「触れないでおこう」方式で処理されてきた。
つまり、日中双方とも領土主権を主張し、現実に論争が存在することを認めながら、この問題を留保し、将来の解決に待つことで日中政府間の了解がついた。
それは共同声明や条約上の文書にはなっていないが、政府対政府のれっきとした「約束ごと」であることは間違いない。
約束した以上は、これを遵守するのが筋道である。」
読売新聞が「棚上げ合意」の存在を明瞭に記述した。
ところが、2010年6月8日、菅直人内閣が質問主意書への答弁書を閣議決定した。
内容は、
「尖閣諸島に関する我が国の立場は、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しないというものである。」
日本政府が「棚上げ合意など存在しない」と閣議決定した。
この閣議決定が原因となり、2010年9月7日の尖閣海域中国漁船衝突事件が発生した。
これを契機に中国脅威論が沸騰し、日中関係は劇的に悪化した。
「尖閣海域漁船衝突事件」の真相を明らかにしておくことが決定的に重要である。
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