頑迷黒田日銀の無残な落城
円安誘導を主導した日銀が政策修正に追い込まれた。
日銀は12月20日の金融政策決定会合で長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げた。
2013年から始められた大規模金融緩和政策が遂に修正される局面を迎えた。
日銀の黒田東彦総裁は明年4月に任期満了を迎える。
任期満了まで政策修正をせずに突き進む姿勢を示してきたが、遂に矢が折れた。
黒田日銀の黒歴史に終止符が打たれることになった。
20日の会見で黒田氏は
「市場機能を改善し、緩和効果をより円滑に波及させることが狙い」
として、利上げや金融引き締めではないと繰り返したが、まったく通用しない。
私は
『金利・為替・株価特報』
http://uekusa-tri.co.jp/report-guide/
に、日銀は政策修正に追い込まれると記述してきた。
日本円が暴落。
日本のインフレ率も前年比4%に迫る情勢。
日銀の最大の責務は「通貨価値の維持」。
日本円が暴落するなかで大規模金融緩和を維持する正当性はまったく存在しない。
黒田東彦氏は外堀を埋められて白旗を上げることになった。
頑迷固陋の日銀総裁で被害を蒙るのは国民である。
遅きに失した政策修正である。
ただ、日銀の政策修正は当然のものであるが、日本経済悪化を回避するために財政政策を積極的に活用しなければ日本経済の混乱は拡大することになる。
黒田東彦氏の軌道修正はこれが初めてではない。
2015年6月10日、黒田東彦氏は衆議院財務金融委員会で
「実質実効為替レートでは、かなり円安の水準になっている」、
「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」
と発言した。
この発言を受けてドル円相場は1ドル=125円台をピークに反転。
2016年6月の1ドル=99円台にまで円高推移することになった。
2015年の黒田発言の背後に何があったか。
最大の背景は米国政府の意向だった。
米国政府は当時、TPPを推進していた。
このなかで米国議会は日本政府の円安放置=円安誘導姿勢を強く批判していた。
TPP協定に通貨下落誘導を禁止する「為替条項」を盛り込むことも検討されていた。
米国は日銀に対して「円安誘導停止」の命令を発したと思われる。
これが2015年6月の黒田発言の背景であったと考えられる。
その黒田東彦氏は、この12月まで、自らが推進した「超金融緩和政策」に執着する姿勢を示し続けていた。
外堀が完全に埋まっているのに、頑なに「金融緩和維持」を主張し続けてきた黒田東彦氏。
その黒田氏が政策修正に追い込まれた背景に何らかの力が作用している。
二つの力を想定できる。
第一は米国の意向。
これが一番大きいはずだ。
米国の最重要課題はインフレ抑制。
インフレ抑制に足並みを揃えぬ日銀の行動が米国の政策運営の障害になっている。
第二は岸田内閣の意向。
岸田首相の軸足はアベノミクス否定に置かれている。
安倍元首相亡き後、黒田氏を支える防波堤は消滅している。
日銀総裁人事が大詰めを迎えている。
総裁交代後に政策が全面刷新されることを踏まえて、黒田氏が体裁を保つために行動したと考えられる。
いずれにせよ、日銀が歪んだ政策運営を是正する方向に動いたことは順当である。
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