利権巣窟の巨大総合経済対策
1年間の国の歳出規模は一般会計、特別会計を純計して約300兆円。
特別会計の場合、保険料収入ならびに保険料収入を財源とする給付金が歳入、歳出に計上される。
また国政整理基金特別会計の場合は満期が到来した国債の償還費が歳出に計上され、その財源調達のために発行される借り換え国債の発行代わり金が歳入に計上される。
年金、医療費、介護費用等の社会保険料支出の財源の多くは保険料収入で賄われる。
このために、社会保障関連支出と国債費支出の規模が大きくなる。
国による社会保障支出は約100兆円規模だが、そのうち、国の直接財源を財源とする部分は約3分の1。
約35兆円程度が国費負担であり、残余の大半は保険料収入で賄われている。
国債については10年国債の場合、例えば1兆円額面の償還期が到来した場合、8333億円分は新たに国債を発行して財源を調達できる。
これを「借り換え国債」=「借換債」と呼ぶ。
国債整理基金特別会計では満期到来分の国債の償還費用が歳出に計上され、借換債発行代わり金が歳入に計上される。
このために国の一般会計・特別会計歳出純計額が大きな規模で表示されることになる。
日本政府の1年間の財政支出は一般会計・特別会計純計(重複分を除いたもの)で約300兆円だが、そのうちの約100兆円が国債費、約100兆円が社会保障支出である。
歳出純計300兆円の残りの100兆円のなかに地方交付税交付金(約20兆円)、財政投融資支出(50兆円弱)が含まれている。
これらを除く、社会保障支出以外の国の政策支出合計は1年間で約35兆円。
この35兆円のなかに、公共事業費、教育・科学技術振興費、防衛費、エネルギー対策費、中小企業関係費など、さまざまな政策支出が含まれる。
300兆円という歳出純計規模は巨大だが、国が各種政策運営に充当する財政支出は社会保障支出を除くと1年間で約35兆円である。
35兆円が、国が1年間に社会保障以外に充当するすべての政策運営のための支出金額合計ということになる。
300兆円のイメージとはまったく違う。
国の政策支出の1年間の金額が35兆円であることを踏まえて経済対策の内容を考察することが必要。
岸田内閣が提示した総合経済対策では29兆円規模の補正予算が編成される。
29兆円規模は、国の1年間の政策支出合計金額に近い。
巨大財政支出が追加されることになる。
2020年度にはコロナ発生を背景に3度にわたって補正予算が編成された。
補正予算規模合計額は73兆円に達した(第一次補正26兆円、第二次補正32兆円、第三次補正15兆円)。
巨大な補正予算が決定された。
財政運営で最重要の事項は貴重な国費=血税を何にどのように使うのかである。
報道は規模だけを問題にするが問題の核心は規模ではなく内容。
財政支出に求められる最重要の要件は透明性と公正性。
2020年度には補正予算に一律給付金や持続化給付金が盛り込まれた。
一律給付金が13兆円、持続化給付金が4兆円、家賃支援給付金が2兆円計上された。
一律給付金は全国民対象に一人10万円が給付された。
予算のなかでもっとも透明性、公正性の高い支出だった。
持続化給付金などの場合には、事務を取り扱う事業者等に不透明な「中抜き資金」が支出された。
それでも国庫から国民に直接給付される財政支出は比較的には透明性が高い。
しかし、これらの支出を合計しても19兆円にしかならない。
73兆円の補正予算のうち、透明性の高い支出は20兆円足らずだった。
これと別に資金繰り対策として19兆円の支出が計上された。
「資金繰り対策」の中身は政府系金融機関への資金贈与だった。
財務省の天下り先に巨大な資金贈与が行われた。
結局、巨大な補正予算は利権官庁と利権政治屋の利権獲得競争の場になっている。
巨大な補正予算を編成するなら、誰もが納得できる透明性、公正性の高い施策を軸にするべき。
一律給付金は透明であるし、消費税減税も分かりやすい。
全国小中学校の給食費公費負担なども簡単に実現できる。
補正予算編成による利権てんこ盛りを許してはならない。
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