死刑を地味な事務処理とする感覚
自民党の葉梨康弘法相が11月9日、東京都内で開かれた同党の武井俊輔外務副大臣のパーティーで、
「法相は朝、死刑のハンコを押し、昼のニュースのトップになるのは、そういう時だけという地味な役職だ」
と述べた。
さらに、
「今回はなぜか旧統一教会の問題に抱きつかれ、解決に取り組まないといけないということで、私の顔もいくらかテレビに出るようになった」
「外務省と法務省は票とお金に縁がない。
外務副大臣になっても、全然お金がもうからない。法相になってもお金は集まらない。なかなか票も入らない」
とも発言した。
死刑執行という重大な行政。
自民党の歴代法相が命の重みをまったく理解していない。
2018年7月5日夜、自民党議員数十人が宴会を開催した。
西日本各地に大雨警報や土砂災害警戒情報、避難指示・勧告が出されていたさなかの宴会だった。
宴会は「赤坂自民亭」によるもので多くの議員が宴会に顔を連ね、写真がSNSで拡散された。
宴会には安倍晋三首相、上川陽子法相も出席。
翌7月6日にオウム真理教元幹部7名の死刑が執行された。
死刑執行命令書に署名したのは上川陽子法相だ。
上川氏も赤坂自民亭で笑顔で親指を立てて写真に収まっている。
2010年時で死刑廃止国(10年以上死刑を執行していない事実上の廃止国を含む)は139か国。
死刑存置国は58ヵ国。
世界の3分の2が死刑を廃止ないし停止している。
死刑存置国の中で実際に死刑を執行している国は2009年が19ヵ国、2010年が23ヵ国。
死刑廃止が国際的潮流。
国際人権(自由権)規約第6条は、「生命に対する権利」の保障を定め、死刑制度は廃止することが望ましいことを示している。
日本に対しても死刑執行停止を求める国連拷問禁止委員会勧告(2007年5月)や国連人権理事会審理(2008年5月)がなされている。
国際人権(自由権)規約委員会は、日本の人権状況に関する審査の総括所見(2008年10月)において、「締約国は、世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、必要に応じて、国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである」と述べている。
死刑については、免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件という4件の死刑判決が再審により無罪となったことからも明らかなように、常に誤判の危険を孕んでいる。
誤判であった場合に死刑が執行されてしまうと取り返しがつかないという根本的な欠陥がある。
また、死刑に直面している者に対し、被疑者・被告人段階あるいは再審請求の段階における十分な弁護権、防御権が保障されておらず、執行に至る処遇の段階でも死刑確定者の人権保障の面で多くの問題を抱えている。
日本国憲法は
〔拷問及び残虐な刑罰の禁止〕
第三十六条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
という条文を置いている。
最高裁は1948年3月12日判決で、
「現代多数の文化国家におけると同様に,刑罰として死刑の存置を想定し,これを是認したものと解すべきである (中略)死刑は,まさに窮極の刑罰であり,また冷厳な刑罰ではあるが,刑罰としての死刑そのものが,一般に直ちに同条にいわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。」
「ただ死刑といえども,他の刑罰の場合におけると同様に,その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には,勿論これを残虐な刑罰といわねばならぬか
ら,将来若し死刑について火あぶり,はりつけ,さらし首,釜ゆでの刑のごとき残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば,その法律こそは,まさに憲法第36条に違反するものというべきである。」
とした。
74年前に示された最高裁判断がいまも大手を振ってまかり通っている。
「京都から死刑制度の廃止をめざす弁護士の会」
https://bit.ly/3UqX2o7
は次のように指摘する。
「死刑制度は、生命を奪うことにより、人を永遠に社会から排除します。
まず、そのように人の存在を全否定する点において、死刑制度はそれ自体極めて残虐な刑罰と言いえます。
そして、死刑の執行は、どのような執行方法をとったとしても残虐です。
殺人事件において、その殺害方法に残虐でない方法がないのと同じく、生命を奪う死刑制度にも残虐でない執行方法はありません。」
死刑もれっきとした「殺人」。
この「殺人」を「ハンコを押す地味な仕事」などと述べる人物に死刑執行の最高責任を委ねてよいわけがない。
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