統一協会隠しで閉会中審査大失敗
岸田首相が国会の議院運営委員会での閉会中審査に出席し、国葬実施に関する質疑に応じた。
本来は、議院の総議員の四分の一以上の要求があるなかで、日本国憲法第53条の規定に基づき臨時会を招集しなければならないところ、岸田内閣は憲法の規定を無視して臨時会を招集していない。
岸田内閣はこのなかで閉会中審査に応じた。
各種世論調査は主権者の過半数が国葬実施に反対の考えを有していることを示す。
国民主権の原理に基づくならば国葬実施方針を撤回するべきだ。
国葬反対論が噴出している理由として以下の五点を挙げることができる。
1.国葬実施に法的根拠がない
2.国葬が弔意を強要する側面を持ち、思想及び良心の自由を侵害する
3.国費の支出は議会の議決に基かねばならないが国会議決を経ていない
4.国葬実施は法の下の平等に反する
5.安倍氏殺害事件で旧統一協会の反社会的活動に焦点が当てられたが、その旧統一協会と安倍晋三氏および岸・安倍一族ならびに自民党が極めて深い関りを有していることが明らかにされていること
これらの事情から主権者の多数が国葬実施に反対している。
このなかで、岸田首相は自ら求めて国会での説明を行った。
これまでの首相は、閉会中審査での説明を求められた際、「国会のことは国会が決める」としてきたが、今回は首相の意向によって国会のことを決める前例を構築した。
今後に重大な影響を与える前例を構築したと言える。
すべての理由が重大なものだが、多くの国民がとりわけ重視しているのが安倍元首相と旧統一協会との関り。
国葬実施の是非を論じる際に安倍元首相と旧統一協会との関りの問題を除外することはあり得ない。
ところが、9月8日の衆議院議員運営委員会での質疑において、委員長の自民党議員山口俊一氏が横暴な議事進行を行った。
質問者が安倍元首相と旧統一協会との関り、自民党および政府の旧統一協会問題への対応を質問すると、委員長が
「関係ないから答える必要がない」
と質疑を妨害した。
質問者は国葬問題を検討するに際して、旧統一協会問題を避けて通ることができないから質問している。
むろん、国葬問題と密接に関わる重大問題だ。
これに対して、中立公正の立場で議事進行を行うべき委員長が妨害するのでは国会質疑の意義が消滅する。
岸田首相が委員長を叱責して堂々と答弁するべきだったが、委員長の暴走を止めなかった。
理事会で国葬問題に限定して質疑を行うことを申し合わせていたことを山口氏が述べたが、旧統一協会問題は国葬問題の核心のひとつ。
この問題に関する質疑を妨害することは、自民党が旧統一協会問題に真摯に取り組む姿勢を持たないことの表明と受け取られる。
日本共産党の塩川鉄也議員は安倍首相と旧統一協会との関りを明らかにする必要があると追及したが、岸田首相は
「安倍氏がなくなられているいま、関係を調査することには限界がある」
の主張を繰り返した。
「限界がある」ことが事実であるなら、「限界まで調べる」ことが当然の対応。
岸田氏の対応は
「限界があるから調査しない」
というもの。
これでは誰も納得しない。
安倍氏銃殺事件で改めて旧統一協会の反社会的行動の一端が明らかになった。
旧統一協会の反社会的活動による被害者は多数存在し、被害総額も膨大な規模に達していると見られている。
この状況下で、安倍晋三氏が旧統一協会の広告塔の役割を果たし、旧統一協会の活動を側面支援してきたことが疑われている。
同時に、国政選挙において、旧統一協会の組織票配分について安倍晋三氏が主導的役割を担ってきたとの自民党議員の証言も明らかにされている。
国葬問題を検討する際、安倍晋三氏と旧統一協会との関りを明らかにすることは必要不可欠だ。
山口委員長の議事進行は最重要の問題に関する質疑を妨害するもので、これでは閉会中審査を実行した意味が消滅する。
さらに決定的問題は「国として弔意を表明する国葬を執り行う」としながら、「国民に弔意を強制しない」とするのは根本的矛盾。
「国民に弔意を強制できない」なら「国として弔意を示す国葬」は執り行えないはず。
閉会中審査で岸田首相はこの矛盾をまったく説明できなかった。
国葬実施は論理的に不可能である。
閉会中審査を契機に国葬反対論がさらに拡大することが避けられない情勢だ。
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