民主主義を破壊する国葬強行
国権の最高機関は国会。
その背景は国民主権にある。
日本国憲法は、
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
(中略)
ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」
の一文で始まる。
そして、
「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」
に続く。
国民主権が日本国憲法の根幹をなす最重要の原理である。
日本国憲法第65条は行政権が内閣に属することを定めるが、内閣の職務権限は、第73条が定めるように
「法律を誠実に執行し、国務を総理すること」
に集約される。
国会が国権の最高機関であり、国会が決めたことを内閣が執行する。
このような建付けになっている。
内閣府設置法第4条3項33号に「国の儀式」が所掌事務とされていることを岸田内閣は国葬実施の根拠であると強弁するが、同条項は国葬の権限義務についての根拠規定となしうるものではない。
「内閣府設置法」4条3項33号にある「国の儀式」は、憲法第7条10号が定める「儀式を行ふこと」を前提にして法定化されている皇室典範(法律)24条、25条が定める「即位の礼」、「大喪の礼」など、すでに国会によって国家の意思が決められ内閣に授権されている儀式についての規定である。
大日本帝国憲法下においては天皇の勅令として定められた「国葬令」が存在した。
しかし、1947年に日本国憲法の施行と共に、
「日本国憲法施行の際、現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」(法律第72号)
が制定され、平和主義・民主主義・国民主権の理念等、憲法の根本規範に適合しないと評価された勅令等は、その第1条により廃止された。
「国葬令」もそのひとつ。
その後も国葬の根拠を定める立法措置はとられておらず、現在に至っている。
そこには、かつて存在した国葬令に対する一定の否定的評価が存しているといえる。
敗戦後日本における唯一の例外が1967年10月に実施された吉田茂元首相の国葬。
しかし、批判が強かった。
1968年5月の衆院決算委員会で社会党議員が、
「政府の思い付きで(国葬を)やることは承服できない。国会、国民が納得する(対象者の)基準を発表する必要がある」
と質問した。
これに対して政府の水田三喜男蔵相(当時)が、
「何らかの基準をつくっておく必要がある」
と答弁している。
国葬令が失効したままであり、その後に国葬を定める法令は制定されていない。
岸田内閣が国葬を実施しようとするなら法的根拠を定める必要がある。
百万歩譲っても、最低限、国会の議決を得る必要がある。
ところが、岸田内閣は法的根拠がないなかで国葬実施を閣議決定し、さらに国葬にかかる国費の支出を閣議決定した。
国会軽視、国会無視の岸田首相の姿勢は、とりもなおさず、主権者である国民軽視、国民無視のものである。
日本国憲法は財政上の措置について、
第83条
国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
第85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
と定めている。
財政措置の執行は国会の議決に基く必要がある。
これを財政民主主義と呼ぶ。
第87条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
の定めがあるが、これは巨大な天災地変などが生じた場合などの災害復旧等の措置を取るためのもので、あくまでも例外的な措置。
法的根拠もない国葬にかかる国費支出の執行に国会での事前の議決が必要であることは明白だ。
日本国憲法の根幹を踏みにじる岸田首相の姿勢は民主主義の根幹を破壊するものと言うほかない。
日本国民は国葬実施を断固として阻止しなければならない。
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