フランス左派連合が大躍進
6月19日に行われたフランス国民議会(下院、577議席)総選挙の決選投票が即日開票された。
国営テレビの予測では、4月の大統領選で再選された中道のマクロン大統領の与党連合が第一党を維持したものの過半数を大きく割り込んだ。
極左政党の「不屈のフランス」を率いる大統領選に出馬したメランションが左派勢力の選挙協力を実現させた。
左派連合は131議席程度を獲得し、野党第1勢力に躍り出た。
「不屈のフランス」は中道左派の社会党や環境政党などと格差是正に力点を置く共通公約を掲げた。
マクロン大統領の与党連合(中道右派)は過半数(289)を大幅に割り込み、245議席にとどまった。
前回選挙の350議席を大幅に下回る敗北。
下院議長や会派代表、環境相、保健相といった大物候補の落選が相次いで伝えられている。
4月の大統領選で決選投票に進んだルペンが率いる極右政党「国民連合」は前回8議席の10倍以上となる89議席程度を獲得する見通し。
左派連合が最大野党勢力になり、極右政党「国民連合」が第3勢力に躍進する。
マクロンが率いる「共和国前進」などの与党連合は2017年の総選挙では約6割の議席を獲得し、議会主導権を掌握した。
ところが、今回総選挙での獲得議席は過半数を大幅に割り込み、政権運営は極めて厳しい状況下に置かれることになる。
法案可決には野党の支持が不可欠になり、大統領2期目の政権運営は不安定になる。
フランス総選挙には大きな特徴がある。
フランスでは国民議会の議員選挙にも「決選投票」制度が導入されている。
下院議員選挙制度が「小選挙区2回投票制」になっている。
一つの選挙区からただ一人の当選者を選出するのは日本の小選挙区制と同じだが、1回の投票だけで当選者を決定しない。
第1回投票で過半数の票を得た候補者がいない場合、1週間後に第2回投票を実施して当選者を決定する。
ただし、2回目の投票は1回目の投票で12.5%以上の票を得た候補者による決選投票になり、上位2名による決選投票ではない。
欧州では20世紀初めころまでは2回投票制が主流だったが、現在も2回投票制を維持しているのは先進国ではフランスのみ。
費用と時間、労力がかかるため敬遠されているが、民意を議会議席数に正確に反映させるための方法だ。
日本では米国に隷従する政治体制を維持するために、米国の支配勢力は明確な戦術を採用している。
それは、反与党勢力の分断。
日本の衆参両院選挙で勝敗のカギを握るのは当選者が一人だけ選出される小選挙区や1人区。
この選挙区で与党が勝利するために最重要の戦術が野党分断だ。
野党を分断し、同一選挙区から複数の野党候補者を擁立させると与党候補が勝利しやすい。
得票率で与党と野党が同水準であるのに、獲得議席数に2対1程度の大差が生じるのは、小選挙区や1人区選挙の特性を与党勢力が活用しているからだ。
国民の政治思潮が均質で政党の主張に大きな差異がない場合は、小選挙区制の制度下で「二大政党体制」が構築される可能性が高まる。
米国では民主、共和の二大政党体制が、英国では保守、労働の二大政党体制が確立された。
しかし、主権者の政治思潮が多様化する場合、多数の政党が存立し得る。
この場合に民意を国会議席配分に正確に反映させるには制度対応を工夫する必要がある。
一つの方策はフランスのような決選投票制度の導入。
もう一つの方策は比例代表制を選挙制度の中核に据えること。
欧州で決選投票制度が廃止された大きな背景は、各国が比例代表選挙制度を導入したからだ。
日本においては、野党が乱立する状況下で小選挙区制度が基軸に置かれている。
この制度に対応して野党が議席拡大を図るには野党の共闘が必要不可欠になる。
逆に与党が優勢を維持するためには野党の分断が最重要になる。
この目的からCIAは戦術の中心に野党分断を置き続けてきたと考えられる。
日本でも「決選投票制度」の導入または比例代表選挙中心制度への移行を検討するべきだ。
しかし、権力を維持したい与党が賛同しないことが予想される。
この現状を踏まえれば、どうしても野党勢力の共闘強化が重要になる。
野党共闘を妨害する勢力を明らかにし、その障害を取り除くことが重要だ。
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