種子法廃止違憲訴訟で証人尋問
6月3日、「種子法廃止等に関する違憲確認訴訟」第7回口頭弁論が行われた。
訴訟は「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」が提起したもの。
「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」はTPP(環太平洋パートナーシップ)協定の違憲性を問う訴えである「TPP交渉差止・違憲訴訟」を起こしていたが、2018年10月に出されたその控訴審判決で、裁判所が
「種子法の廃止については、その背景事情の一つにTPP協定に関する動向があったことは否定できない」
と判示した。
この司法判断を踏まえ、2019年5月に、「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の参加者を中心とする原告が新たに
「種子法廃止等に関する違憲確認訴訟」
を提起した。
訴訟で原告は、
種子法が廃止されることで食料の安定供給や食の安全が害されること、
憲法上保障されるべき「食料への権利」が侵害されること
を訴えている。
この訴えは、食の安全、持続可能な農業を取り戻し、食料主権を守る闘いでもある。
3日の第7回口頭弁論期日には6名の証人に対する尋問が行われた。
多数の原告、市民が参集し、抽選に当選した者が法廷を傍聴者で埋め尽くすかたちで午前10時から午後5時までの時間帯で証人尋問が行われた。
弁護団共同代表の岩月浩二氏は裁判の意義について次のように解説する。
https://bit.ly/3Q3lom8
裁判には、憲法上、二つの大きな意義がある。
一つは、食料への権利が憲法上の基本的人権であることを認めさせること。
もう一つは、種子法廃止法が食料への権利を侵害する憲法違反の法律であることを認めさせること。
基本的人権は尊重されなければならないが、制限したらすぐに違憲となるわけではない。
食料への権利の根拠となる憲法25条の生存権については、国家の干渉を受けない自由権と異なり、国家の作為によって保障される社会権であるため、違憲審査基準について特別な構成が必要になる。
違憲であることを認めさせるための方法の一つは
生存権を保障するために一旦具体化された制度を後退させることは、正当な理由がない限り憲法違反になるとするもの。
多くの憲法学説に支持されている。
もう一つは、
立法過程そのものを審査するもの。
立法過程で正当な手続きがとられているか、考慮すべき要素が考慮されているかなど、国会が結論に至る過程を検討するもの。
政策的な立法については国会に立法裁量があることを認めた上で、立法過程に瑕疵があると認められる場合には、「立法裁量を逸脱して食料への権利を侵害した」として、違憲判断を示すことができる。
3日の証人尋問は上記の二つの方法で種子法廃止が違憲であることを立証するために行われた。
証人として証言したのは採種農家、有機農業を行う米農家、消費者の立場を代表する生活協同組合元理事長、県の農業試験場で原種、原々種の供給事業に従事してきた元公務員、農水省の食料農業農村政策審議会の部会長を務めていた農業経済学者、憲法学者の6名。
尋問を通じて上記の二つの方法による憲法違反が鮮明に主張された。
憲法学者の土屋仁美金沢星稜大学准教授は膨大なスライド資料を用いて、種子法廃止が、
「食料に対する十分な権利」という憲法が規定する生存権を保障するために一旦具体化された制度を後退させるものであること、
種子法廃止の立法過程に重大な瑕疵があること、
を明確に証言した。
採種農家、有機農法農家、県元職員は種子法廃止による影響が「食料に対する十分な権利」を守るために具体化された制度が後退している現実を具体的に明らかにした。
東大農学部教授の鈴木宣弘氏は本来、「食料農業農村政策審議会」に諮問され討議されなければならない種子法廃止の提案がまったく審議に付されず、正当な立法手続きを経ずに同法廃止が国会で議決された事実を明らかにした。
鈴木教授はその背景にTPP協議の際に日米両国が実施した並行協議で交わされたサイドレターにおける決定事項が効力を発揮し、日本政府が外国資本の要請を受けて規制改革会議で決定したことを国内の正当な立法手続きに付すことなく法制化している事実を指摘した。
裁判所が正当な判断を示すなら、種子法廃止が違憲であるとの判決が示されることになるだろう。
証人尋問を踏まえて、次回口頭弁論期日とされた10月7日午後2時に、最終弁論が提示されることになる見込みである。
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