特定価値観強要は民主主義の否定
5月21日に投開票されたオーストラリア下院(任期3年、定数151)総選挙で、アンソニー・アルバニージー氏が率いる野党・労働党が、スコット・モリソン首相の与党・保守連合を破り、勝利することが確実になった。
政権交代は2013年以来約9年ぶり。
アルバニージー氏は5月24日に東京で開催されるQUAD首脳会合に出席する見通し。
QUAD首脳会合は米日豪印4ヵ国首脳の会合。
背景に「中国包囲網形成」の思惑がある。
しかし、これはあくまでも米国の目論見。
米国の植民地である日本は考慮の余地なく、米国の意向に服従だが、他の国はそうとは言い切れない。
ロシアに対する国連総会での非難決議に際しても、インドは賛成しなかった。
3月2日の国連総会緊急特別会合における「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議」採択においては、賛成141ヵ国に対して非賛成52ヵ国だったが、人口比では賛成国42%、非賛成国58%だった。
賛成しなかった国の人口合計が賛成した国の人口合計を上回った。
4月20日のG20財務相・中央銀行総裁会議でロシア代表発言時に退席したのは米英加豪の4ヵ国のみ。
G20の対ロシア経済制裁実施国と経済制裁非実施国はどちらも10ヵ国(EUを1ヵ国として)で、人口比では制裁実施国の19%に対し制裁非実施国は81%(EUを人口最多国スペインの人口で計算)を占めた。
G20会合でロシア代表発言時に退席した米英加豪の4ヵ国はすべてアングロサクソンが主流の国家である。
AUKUSという豪英米の軍事同盟があるが、これもアングロサクソン連合である。
これまでオーストラリア首相を務めたモリソン氏は保守連合の代表で米国と歩調を合わせてきた。
しかし、オーストラリアで労働党が第一党に躍進し、政権交代が行われることから、今後の方向は明らかではない。
いずれにせよ、多くの国で政権交代が実現している。
米国の場合、共和党と民主党の差異は極めて小さいが、それでも大統領所属政党は共和党と民主党との間で頻繁に入れ替わる。
米国は米国一極支配を目論み、米国の価値観を世界に強要する姿勢を示すが、この米国の横暴を冷ややかな目で見る国と市民は驚くほど多い。
G20でロシア経済制裁に参加していない国の人口比が81%である現実を見落とせない。
インドも対米隷属一辺倒ではない。
ロシアとも中国とも完全敵対しているわけではない。
岸田首相が繰り返す
「自由、人権、民主主義、市場経済、法の支配
という価値観を共有する国との連携」
の言葉が持つ根本的な矛盾を見つめなければならない。
民主主義の根幹は多様性の尊重。
多種多様な価値観、思想の存在を認めること。
これが民主主義の根幹。
この価値観を有する者は、特定の価値観を他者に強要することを拒絶する。
ところが、米国が提示する「価値観外交」は特定の価値観を他国に強要し、相手が従わなければ武力の行使も辞さないというもの。
これこそ、本質的な「力による現状変更」主義である。
ウクライナは異質の民族が同居する多民族国家である。
西部に居住するのはウクライナ語を話し、カソリックであるウクライナ民族。
東部に居住するのはロシア語を話し、ロシア正教徒であるロシア系民族。
一方が他方を支配しようとすれば分裂か内戦になるとキッシンジャー氏が警告した。
2014年に米国はウクライナの極右勢力と結託して暴力によってウクライナ政府を転覆した。
非合法的に樹立された新政府はロシア系住民に対する非人道的弾圧を展開した。
これがウクライナ戦乱の根本背景になっている。
米国は軍事力を行使して米国の価値観を他国に強要することを是とするが、これが世界の主流と勘違いすることは大いなる誤りだ。
日本においてはメディアが流布する情報が一色に染め抜かれているが、世の中には別の視点からの見解が多数存在することを知っておかねばならない。
多様な価値観、見解が存在することを重視するのが民主主義を重視する立場なのである。
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