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2022年5月15日 (日)

変わらぬ沖縄差別の基本構造

沖縄が返還から50年を迎えた。

沖縄は日本の独立回復と引き換えに日本から切り棄てられた。

1952年4月28日。

サンフランシスコ講和条約が発効した。

同条約が調印されたのは1951年9月8日。

サンフランシスコ講和条約には以下の条項が盛り込まれた。

第六条
(a)連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。

サンフランシスコ講和条約の発効は日本の独立回復を意味し、この条約の発効をもって占領軍が日本から撤退することが定められた。

しかし、この条文にはただし書きが付けられた。

これが上記第六条(a)後半の次の一文だ。

但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国間の協定に基く、又はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。

米国はこの但し書きを付すことによって日本の独立を認めた。

1951年9月8日午前、サンフランシスコ講和条約に調印した日本の首相吉田茂は、サンフランシスコの米軍第6軍司令部プレシディオ(将校集会所)に連行され、ここで、午後5時、日米安全保障条約に署名した。

米国の求めたものは、米国が必要と考える軍隊を、米国が必要とする場所に、米国が必要とする期間、日本国内に自由に駐留させることだった。

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「9月8日午後5時にプレシディオで安保条約署名式」と米側から通告されたのは外務省条約局長だった西村熊雄氏。

西村氏による回想録「サンフランシスコ平和条約 日米安保条約」(中公文庫)によると、吉田首相が講和条約受諾演説をした9月7日夜の会議が終わり、午後11時近くに議場を出ようとするときに、西村氏がGHQ外交局長だったシーボルト大使から呼び止められて、このことが通告された。

これを西村氏が同日深夜に吉田首相が宿泊していたスコット邸に赴き、首相に伝えた。

プレシディオの署名式で条約に署名したのは吉田茂首相一人のみ。

署名式に同席した全権のうち、星島二郎(自由党)、池田勇人(蔵相)、一万田尚登(日銀総裁)は署名しなかった。

民主党の全権である苫米地義三は署名式に出席せず、参院緑風会の徳川宗敬も西村局長は不在だったと回想録に記している。

民主党は講和条約には賛成したが、安保には賛成しなかった。

当時民主党衆院議員だった中曽根康弘は国会での安保条約承認の採決を欠席した。

日本は米軍の駐留継続と引き換えに独立回復を獲得した。

爾来、米軍の駐留が現在まで続く。

サンフランシスコ講和条約第六条(a)の主文は守られていない。

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これだけではない。

日本が独立回復と引き換えに切り棄てたものがあった。

それが、同条約第三条に記された。

第三条
日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。

沖縄を含む南西諸島を日本から切り棄てることによって日本は独立を回復したのである。

サンフランシスコ講和条約発効は1952年4月28日。

安倍晋三元首相はこの日を「主権回復の日」として記念日にすべきと主張した。

安倍晋三氏はGHQのGS(民政局)が主導して制定した日本国憲法が施行された5月3日よりも、サンフランシスコ講和条約が発効した4月28日の方が重要であるとの主旨の発言を示していた。

しかし、4月28日にはまったく別のもう一つの意味が存在する。

「日本政府が沖縄を切り棄てた日」という意味。

4月28日は沖縄にとって「屈辱の日」である。

日本の名目上の独立は1952年4月28日に回復された。

しかし、その独立回復は、米国による軍隊日本駐留という特殊な条件が付せられた括弧付きの「独立」に過ぎなかった。

実施的な植民地状態の「独立」であったが、この状況をいまなお変えられずにいる。

そして、その「独立」は沖縄を含む南西諸島を日本から切り棄てることによって獲得した括弧付きの「独立」だった。

その沖縄が1972年に日本に返還されたが、沖縄の基地負担は一段と過重なものになった。

日本の国土面積の0.6%しかない沖縄に日本における米軍専用施設の70%が集中している。

沖縄差別はいまなおくっきりと残されている。

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