2014年暴力革命延長線上の紛争
ウクライナをめぐる報道が過熱している。
ロシアが「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認した。
同時に、両共和国とロシアは「友好協力・相互援助条約」にも署名した。
両共和国は共和国内に展開するウクライナ軍を撃退するために、ロシアに軍事的支援を要請した。
このことについて米国のバイデン大統領が「ロシアによる軍事侵攻」と表現している。
ものごとには多面性がある。
一つの角度からの情報だけでは全体像を掴めない。
異なる角度から事象を見つめることが重要だ。
ウクライナ東部地域とウクライナ政府は2015年に「ミンスク合意」を締結している。
ミンスク合意は2014年と15年に結ばれた。
合意内容には、親ロ派勢力が実効支配するウクライナ東部ドンバス地域をめぐる紛争の停戦や、この地域への自治権付与が含まれた。
ロシア、ウクライナ、仏、独の4カ国がまとめた。
ロシアが重視してきたのは東部地域への自治権付与である。
ウクライナ東部地域が外交自主権を確保すれば、ウクライナのNATO加盟は不可能になる。
ロシアは旧ソ連邦国家のNATO加盟を阻止する考えを有していると見られる。
ロシアのプーチン大統領はウクライナが東部ドンバス地域の紛争解決を目指す「ミンスク合意」を履行しなかったと批判し、ロシアによるドンバス地域の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立承認はやむを得ない決定だったと述べた。
これに対して、米国のバイデン大統領は「ロシアによる軍事侵攻が始まった」と繰り返している。
同じ事象であっても、表現の仕方が変わると印象が著しく異なる。
この問題を考えるに際して見落とせないことは2014年のウクライナ政変についての理解だ。
2014年にウクライナのヤヌコヴィチ大統領がロシア亡命に追い込まれた。
暴力革命が勃発して政権が排除された。
このとき、暴力革命の背後で糸を引いたと見られるのが米国である。
米国のバイデン副大統領、ヌーランド国務次官補が中核的役割を担ったと見られている。
ヌーランド国務次官補が、ウクライナの極右組織「スヴォボダ(自由)」の
オレフ・チャグニボク党首と、クーデター直前の2014年2月6日に満面の笑顔を湛えて撮影された写真がインターネット上にも流布されている。
「スヴォボダ(自由)」は、戦前のナチスドイツ協力者で、ユダヤ人やポーランド人の数万人に及ぶ殺害に手を染めたステパーン・バンデーラの「ウクライナ民族主義者組織」の直系であるとされる。
成澤宗男の世界情勢分析
「バイデンが国務省に入れた極右の正体2」
ヤヌコヴィチ大統領は民主的な選挙で正当に選出された大統領である。
その政権を米国が介入して暴力革命で転覆した。
成澤氏は次のように指摘する。
「街頭での暴力行為の中心にいた「ライトセクター」と称する極右・ネオナチ集団があくまでヤヌコヴィッチ打倒を掲げ、手薄になった大統領官邸に押しかけて力づくで政権を打倒したというのが真相だ。」
この経緯を含めて問題を捉えないと正当な評価は成り立たない。
親ロシア派だったヤヌコヴィッチ政権が欧州連合(EU)との通商協定調印を見送ったことが、政権が転覆された直接の契機になったと見られる。
2014年9月、ドンバスの内戦が続いたなかで、ミンスク合意(「ミンスク1」)が調印された。
しかし、2015年1月に戦線全体で再び戦争が勃発。
ウクライナ勢は再び主導権を握ろうとして軍事行動を激化させたが失敗に終わり、2015年2月に「ミンスク2」が締結された。
2019年5月にゼレンスキー大統領が選出され、すでに任期が半分以上経過したが、ミンスク2を履行する気配すら示さない。
「2015年末までのドネツク・ルガンスク州の個々の地区の特別の地位に関する永続法の採択」という規定の実現がまったく見えない。
このなかでロシアが両地域を共和国としての独立を承認した。
当面は、ロシアが両共和国の独立を守るための行動を実施することにとどまる見通し。
米国のバイデン大統領は軍産複合体の要請に応えるとともに、秋の中間選挙に向けて支持率の回復を目指していると見られる。
巨大な軍事紛争に発展させないための外交交渉が強く求められている。
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