米国雇用統計と今後の金融政策
2月4日、米国の1月雇用統計が発表された。
非農業部門雇用者増加数は46.7万人。
失業率は12月の3.9%から0.1%ポイント上昇の4.0%になった。
平均時給は前月比0.7%%増。
2020年12月以来の高い増加率を示した。
平均時給の前年同月比伸び率は5.7%増。
雇用者増加数の事前市場予想は12.5万人で実績はこれを大幅に上回った。
年初来、内外株価の下落が続いた。
米国金融政策が引締め方向に転換することが確実視され、その影響が懸念されてきた。
これまで堅調を続けてきた米国株価に翳りが見え始めている。
米国株価上昇を牽引してきたのはNASDAQ市場。
このNASDAQ市場にも株価調整の兆候が観測され始めた。
私が執筆している会員制レポート『金利・為替・株価特報』では、1月5日が転換点になり、下落波動に転じたとの見通しを年初に示した。
http://uekusa-tri.co.jp/report-guide/
月末レポートでは、その下落波動が1月27日を境に上昇波動に転じた可能性を指摘した。
金融市場変動は先行きの見通し=期待の変化を反映して上下波動を繰り返す。
資金運用戦略上は、3週から5週程度の中短期波動を的確に捉えることが最重要になる。
米国の金融政策がいよいよ「緩和」から「引締め」に転換することになる。
その舵取りを任せられているのがFRB(連邦準備制度理事会)。
FRBの政策決定はFOMC(連邦公開市場委員会)で行われ、政策方針は多数決で決定されるが、FRBの政策決定に最大の影響力を発揮するのがFRB議長である。
FRB議長の采配が何よりも重要になる。
この意味でFRB議長人事は最重要の意味を有する。
2014年にバーナンキ議長からイエレン議長に交代した。
私は『金利・為替・株価特報』において、イエレン氏の起用をいち早く予測した。
イエレン氏の起用を予測するとともにイエレン氏起用が最善策であることを述べた。
最大の対抗馬はローレンス・サマーズ氏だったが、両者を比較してイエレン氏の起用が適正であるとの見解を示した。
イエレン氏は2014年から2018年までの4年間、FRB議長を務めたが、政策運営能力は極めて高かった。
米国金融政策を「超緩和」から「引締め」に転換する難しい局面を金融市場に大きな混乱を引き起こさずに乗り切った。
FRB議長に求められる三つの資質がある。
経済金融分析能力、決断と実行力、FRB内外に対する対話能力である。
サマーズ氏とイエレン氏を比較したとき、この三つ能力の総合点でイエレン氏に軍配が上がると私は判断した。
そして、その判断は誤りでなかったと言える。
イエレン氏が4年の任期を終える段階で人事問題が浮上した。
2017年に大統領に就任したトランプ大統領はイエレン議長を退任させて、パウエル副議長を議長に昇格させた。
私はイエレン氏続投が最善だと指摘したが、トランプ氏は議長を交代させた。
このときも候補者は複数存在したが、イエレン氏でなければパウエル氏が次善の策になると私は判断した。
トランプ大統領はイエレン議長が民主党員であること、大統領としての権限を誇示したいこと、の二点からFRB議長交代を強行したと考えられる。
2018年2月にパウエル氏がFRB議長に就任した際、金融市場は強い警戒感を示した。
トランプ大統領の影響を受けて、インフレ対応が甘くなるのではないかと危惧されたのである。
金融市場は長期金利上昇、米ドル下落、株価下落の「トリプル安」反応を示した。
この金融市場変動を世界で最も早く洞察したのは『金利・為替・株価特報』であったと自負している。
この不安に対してパウエル議長は果敢に反応した。
FFレートの推移(2012年~2022年)
それから4年の時間が経過して、パウエル氏はFRB議長職を再任される状況にある。
米国議会の対応が遅れて、任期切れまでに正式な再任が間に合わなかった。
現時点では臨時議長の立場に置かれているが、2月中旬には正式に再任される見通しだ。
イエレン議長に続き、パウエル議長の能力が極めて高いことが米国経済にとっては大きな幸いになっている。
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