食料問題が経済的安全保障の核心
1月31日午前11時より
種子法廃止等に関する違憲確認訴訟
第6回口頭弁論
が東京地裁第103法廷で開かれた。
コロナ感染が拡大するなかにもかかわらず、多くの市民が参集した。
前回の10月15日開廷の第5回口頭弁論期日には金沢星稜大学経済学部准教授の土屋仁美氏による憲法学の立場からの意見書も提出されている。
食料の確保、食の安全確保は、日本国憲法第25条が保障する「生存権」に関わる、人間の生存に本質的に重要な事項である。
土屋氏は「食料への権利」は、国内的にも、国際的にも、生命、健康、文化に関わる人権として捉えられ、国家による保障が求められているものであることを指摘する。
日本が批准している経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(A規約)においても、「十分な食料への権利」が明記されている。
土屋氏はそのなかで、「小規模農家にとって不可欠な既存のサービスを撤廃すること」などの、現在の履行レベルを悪化させるような意図的措置は「後退措置」として禁止されていることを指摘する。
小規模農業者の権利については、ITPGR(食料・農業植物遺伝資源条約)においても特記して規定されているもの。
政府は育種権者の権利を保護するための国際条約であるUPOV条約を盾にとって種子法廃止、種苗法改定等の法改定を強行しているが、関連する条約、法令はUPOV条約だけではない。
門前集会では意見訴訟弁護団の岩月浩二弁護士から、政府の施策の根拠が国会審議での政府説明ではなく、規制改革会議での政府説明に過ぎないことが暴露された。
日本政府はTPP協議に並行して行われた日米協議で次の内容を受け入れてしまった。
合意の名目は
「保険等の非関税措置に関する
日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡」
このなかの、投資・企業等の合併買収「3.規制改革」に次のように規定された。
「日本国政府は、2020年までに外国からの対内直接投資残高を少なくとも倍増させることを目指す日本国政府の成長戦略に沿って、外国からの直接投資を促進し、
並びに、日本国の規制の枠組みの実効性及び透明性を高めることを目的として、外国投資家その他利害関係者から意見及び提言を求める。
意見及び提言は、その実現可能性に関する関係省庁からの回答とともに、検討し、及び可能な場合には行動をとるため、定期的に規制改革会議に付託する。
日本国政府は、規制改革会議の提言に従って必要な措置をとる。」
米国はTPPから撤退したが、TPP協議の際に日米両国政府間で協議されて附属文書として作成された規定については、日本政府が、効力が失われていないとしている。
日本国の規制の枠組みの実効性及び透明性について、外国投資家その他利害関係者から意見及び提言を求め、規制改革会議がこれを検討して提言した場合、日本政府が「提言に従って必要な措置を取る」ことが定められている。
種子法廃止、種苗法改定は、こうしたプロセスによって実行されたものである。
つまり、ハゲタカ資本が発案し、ハゲタカ資本の主導によって、規制改革会議が提言をまとめ、その規制改革会議の命令で日本政府が「必要な措置」を取らされているのだ。
「規制改革会議」のメンバーは選挙によって選出された国会議員ではない。
これらの政策決定プロセスが民主主義の根幹を損ねるものであることは言うまでもない。
制度変更は日本の主権者の利益ではなく、ハゲタカ資本の利益のために検討、提案され、決定されてきたものなのだ。
99%の市民のための政治運営、行政運営ではなく、1%の巨大資本、ハゲタカ資本に利益を供与するための制度改正が強行されている。
その結果として、基本的人権の根幹をなす「生存権」等の権利が侵害されている。
裁判所には独立性をもって司法判断を示してもらう必要があるが、その裁判所自体が三権分立の原則から外れて、政治権力の支配下に置かれてしまっている。
裁判所が適正な判断を示すのかどうか、厳重な監視が求められる。
岸田内閣は「経済的安全保障」の重要性を訴えるが、その内容は日本の技術や学術が中国などの海外諸国に流出するのを防ぐものだという。
日本の現実を直視しない頓珍漢な政策運営スタンスだ。
日本はいまや知的資源の流出国ではなく流入国に転落してしまっている。
経済的安全保障で最重要の事項は食料の確保であり、食の安全の確保だ。
この根本を見つめ直すことから始めなければならない。
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