古くて新しい資本主義の欠陥問題
世界上位1%の超富裕層の資産が世界全体の個人資産の37.8%を占めたとの推計が発表された。
経済学者ら100人超による国際研究の結果。
下位50%の資産は全体の2%だった。
資本主義の経済運営を放置すれば格差は際限なく拡大する。
格差拡大こそ現代社会の最大の問題。
しかし、この問題は決して新しい問題でない。
基本的人権に自由権、参政権、生存権がある。
自由権が18世紀的基本権、参政権が19世紀的基本権、生存権が20世紀的基本権と呼ばれることがある。
1920年代の米国。
経済活況がピークに達した時代だ。
その米国経済が1929年の株価暴落を契機に大転落した。
世界大恐慌の到来だ。
市場メカニズムにすべてを委ねる経済運営の限界が露呈したものでもあった。
資本主義のメカニズムがもたらす諸問題に修正の手が加えられるようになった。
このなかで確立されたのが「生存権」。
1947年に施行された日本国憲法にも「生存権」が明記された。
「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」
が基本的人権として保障されることになった。
「自由」、「人権」、「民主主義」
は私たちが最も大切にする価値である。
将来においても、この三つの価値を守る必要がある。
しかしながら、ここにいう「人権」については、意味が時代の経過とともに広がってきたという歴史を有する。
「自由」な経済活動の結果としての「資本主義経済」の矛盾、問題が明らかになった。
最大の問題は「格差」。
「資本」は自己増殖の動機を有する。
自己増殖の動機によって経済活動が発展してきたとの側面がある。
「資本」は利益を極大化するために「費用」を限りなく圧縮しようとする。
可変的な「費用」のひとつが「労働賃金」。
経済活動の「自由」を認めることにより、「資本」は際限のない労働コスト削減に進み、自分の労働力を売ることによってしか生存し得ない労働者が得る賃金が圧縮される。
その結果、労働者が生存の危機に直面する。
こうした事情から20世紀になって基本的人権として「生存権」が重視されるようになった。
「自由」に委ねる「資本主義」に修正の手が加えられるようになった。
「修正資本主義」の考え方は決して新しいものではない。
第二次大戦後の世界において「生存権」が重視され、国家による保障が重視されるようになった。
とりわけ、西欧社会において国家による生存権の保障が重視され、自由放任の経済政策運営が見直され、国家による保障を重視する「福祉社会」が目指された。
英国における社会保障制度の拡充は「ゆりかごから墓場まで」と表現され、国家による民衆への保障の厚さを重視する新しい経済政策運営モデルとされた。
自由主義経済体制を採る西側諸国の間で「福祉国家」の保障の厚さを競う動きが広がった。
ところが、この流れに大きな変化が生じることになる。
1980年代以降の世界で国家による手厚い保障が経済活動への意欲を削ぐとの主張が強まった。
国家による保障を切り下げ、再び市場メカニズムに基く「競争原理」を重視するべきとの論調が強まった。
これが「新自由主義経済政策運営」の背景である。
爾来、30年の時間が経過して、再び「新自由主義経済政策運営」に対する見直しの気運が広がっている。
自己増殖を目的とする資本の運動法則が存在する以上、格差の問題は自己解決しない。
地球の限界がより明確に認識されるなかで、資本主義に対する根本的な修正が求められる局面が到来している。
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