「国家財政は破綻する」という嘘
財務省事務次官の矢野康治氏が文藝春秋2021年11月号に寄稿した文章が大きく取り上げられたが内容は稚拙そのもの。
政府債務が大きく国家財政が破綻するとの「オオカミ少年」の言葉が繰り返されているだけだ。
後藤田正晴氏の「勇気をもって具申せよ」を実践したとの美談仕立てだが、内容に説得力がまったくない。
財政危機論の論拠は
「政府債務が1166兆円に達し、GDPの2.2倍になっており、先進国でずば抜けて大きい」
というもの。
財政危機に直面した、あのギリシャでさえ、政府債務のGDP比は170%だった。
この主張にころりと騙されたのが菅直人氏だった。
2010年に菅直人氏は消費税増税の主張を示せば人気が出ると判断した模様。
民主党内クーデターで鳩山内閣総辞職後に首相の地位を強奪した直後、菅直人氏は2010年6月17日の参院選公約発表会見で、突然、消費税率10%への引き上げ公約を公表した。
この政策提示で民主党は参院選で大惨敗。
2009年の政権交代の偉業を根底から破壊した。
政策責任者は玄葉光一郎氏だった
民主党は2009年の総選挙で
「天下り根絶無くして消費税増税なし」
を訴えた。
この主張をもっとも大声で叫んだのが野田佳彦氏。
この野田佳彦氏が菅直人氏のあとに後継首相に就任。
天下り根絶に手を付けず、シロアリを一匹も退治しないまま、消費税率を10%に引き上げる消費税増税法を強行制定して自爆解散に打って出た。
民主党は壊滅的敗北を喫して現在に至っている。
日本財政が危機に直面しているのかどうかを判断する最重要指標は政府債務残高でない。
企業の財務状況を診断するときに債務残高だけを注視する手法はない。
破綻危機ランキングが債務残高ランキングと同じになってしまう。
あるいは、債務残高の売上高比、債務残高の営業利益比、債務残高の経常利益比ランキングと同じになってしまう。
政府の財務状況は債務だけでなく資産を合わせて判断する必要がある。
内閣府が発表している国民経済計算統計によると、日本政府の負債残高は1335兆円。
たしかに1000兆円を超えている。
2019年のGDP559.9兆円の2.4倍。
矢野氏はこの数値をもって日本は財政危機に直面していると主張する。
木を見て森を見ず。
矢野氏は日本政府の資産残高に言及しない。
国民経済計算統計には日本政府の資産残高も記載されている。
2019年末の政府資産残高は1439兆円。
負債残高よりも99兆円多い。
日本政府は資産超過の状態にある。
この状態で財政破綻は生じない。
メディアは財務省の言いなりで、日本国民一人当たり1000万円の借金を背負うと連呼して財務省キャンペーンに加担するが、「債務」ではなく、「純債務」で表示するのが適正であることは常識に属す。
財務省は政府債務残高に言及するが政府資産残高に言及しない。
日本政府は巨大な資産を保有している。
資産の45%が金融資産で55%が非金融資産。
直ちに現金化できないものもあるが政府資産であることに変わりはない。
3億円の借金があって大変だと叫ぶ人がいたとしよう。
周りの人は、それは大変だと気の毒に思うだろうが、その借金主が重要なことを語っていなかったら話が変わる。
実は当人は3億1000万円の資産を保有している。
「借金が3億円あって大変だ」
の発言は大嘘だと叩かれるだろう。
政府の財務状況は資産負債バランス、貸借対照表、バランスシートで論じるべきもの。
矢野氏の論考には政府資産への言及が皆無。
この時点で論考が批評の対象にもなり得ぬ稚拙なものであると断ぜざるを得ない。
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