拭えぬ震災原発事故10年イベント感
東日本大震災、フクシマ原発事故から10年の時間が経過した。
満10年に合わせて各種特集が組まれたがイベント感を否めない。
「イベント」であるというのは、10年のタイミングに多くの企画が策定されてそれを実施することが目的になってしまい、10年の瞬間が通過してしまえば、何も残らないということ。
原発事故10年が済んだら、次は五輪だ。
この感覚でものごとが進められている。
震災被害も原発事故も過去の出来事ではない。
いまなお持続する事象だ
震災は自然災害であるから歴史の彼方から現在まで繰り返されてきたこと。
人は忘れやすい。
遠い過去に発生した津波の災害を風化させてきてしまった。
歴史の教訓を忘れることなく現在まで引き継いできたなら、被害を軽微にすることができたかも知れない。
西暦869年に発生した貞観地震とこれに伴う大津波の教訓は十分には生かされなかった。
1896年にも明治三陸地震が発生して岩手県綾里(現大船渡市)で38.2メートルの遡上高が記録されている。
自然災害の歴史を振り返り、その教訓を生かすことが求められる。
しかし、フクシマ原発事故は自然災害とはまったく異なる属性を持つ。
フクシマ原発事故は自然災害でなく人災である。
フクシマ原発事故により原発安全神話は崩壊した。
放射性物質が外部に放出されることを防ぐ五つの防御壁は簡単に吹き飛んだ。
原発が電源を失うだけで原発は崩壊する。
冷却機能を失った原子炉ではむき出しになった燃料が溶融して圧力容器も格納容器も溶かしてしまう。
実際にフクシマ第一原発の1号機、2号機、3号機で核燃料が溶融。
メルトダウンが起きてしまった。
3月12日のNHK正午のニュースは原発メルトダウンの事実を伝えるものだった。
ところが、ニュース原稿が読み上げられたあとに、横から、
「ちょっとね、いまの原稿使っちゃいけないんだって」
の声が入り、アナウンサーは7秒間の沈黙を示し、別の原稿に差し替えられた。
福島第一原発では、地震発生から約1時間後の当日15時42分に、原子力安全・保安院に対して、東京電力から福島第一原発1、2号機で炉心を冷やす緊急炉心冷却装置(ECCS)が稼動しなくなったとの報告が入っている。
この報告を受けて「原子力緊急事態宣言」が発出された。
2011年3月11日16時36分のこと。
「平成23年(2011年)16時36分、東京電力(株)福島第一原子力発電所において、原子力災害対策特別措置法第15条1項2号の規定に該当する事象が発生し、原子力災害の拡大の防止を図るための応急の対策を実施する必要があると認められたため、同条の規定に基づき、原子力緊急事態宣言を発する。」
直ちに、原発周辺20キロ圏内の住民の避難が必要だったが、避難措置は講じられなかった。
枝野幸男官房長官は次のように述べた。
「原子炉そのものにいま問題があるわけではございません。
万が一の場合の影響が激しいものですから、万全を期すということで、緊急事態宣言を発令して、最大限の万全の対応をとろうということでございます。
放射能が現に漏れているとか、現に漏れるような状況になっているということではございません」
しかし、このときすでに福島第一原発は全署停電=ステーションブラックアウトに陥っていた。
事実を正しく国民に伝えたと言えない。
原子炉が電源を失えば燃料の冷却が不可能になる。
むき出しになった燃料は2000度の温度で溶融し、圧力容器、格納容器を溶融させてしまう。
1号機では格納容器も溶かされて核燃料が外部に流出した疑いが強い。
原発周辺ではいまなお高レベルの放射線が観測されている。
日本の国民の人為的影響による被曝上限は法律で年間1ミリシーベルトと定められている。
ところが、原発周辺地域では年間線量20ミリシーベルトの場所に住民が居住を強制されている。
原発事故被災者への放射線被曝を放置しているのが菅内閣である。
この状態を放置してフクシマから「復興五輪」の聖火リレーをスタートさせることは犯罪行為である。
「UIチャンネル」第380回放送、鳩山元首相との対談がアップされております。
ぜひご高覧賜りたい。
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
のご購読もよろしくお願いいたします。
上記メルマガを初めてご購読される場合、
2ヶ月以上継続して購読されますと、最初の一ヶ月分が無料になりますので、ぜひこの機会にメルマガのご購読もご検討賜りますようお願い申し上げます。
https://foomii.com/files/information/readfree.html
続きは本日の
メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」
第2874号「原発稼働容認する裁判所の誤り」
でご購読下さい。
『アベノリスク』(講談社)
の動画配信はこちら
著書と合わせてせて是非ご高覧下さい。
2011年10月1日よりメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(月額:540円(税込)/配信サイト:フーミー)の配信を開始しました。
創刊月2011年10-2012年6月は、このようなテーマで書いています。ご登録・ご高読を心よりお願い申し上げます。詳しくはこちらをご参照ください。
メールマガジンの購読お申し込みは、こちらからお願いします。(購読決済にはクレジットカードもしくは銀行振込をご利用いただけます。)なお、購読お申し込みや課金に関するお問い合わせは、info@foomii.comまでお願い申し上げます。
価格:1,650円 通常配送無料
出版社:株式会社コスミック出版
amazonで詳細を確認する
価格:994円 通常配送無料
出版社:詩想社
amazonで詳細を確認する
価格:907円 通常配送無料
出版社:発行:祥伝社
amazonで詳細を確認する
価格:1,620円 通常配送無料
あなたの資産が倍になる 金融動乱に打ち勝つ「常勝投資術」~(TRI REPORT CY2018)
価格:1,620円 通常配送無料
価格:994円 通常配送無料
出版社:発行詩想社 発売星雲社
amazonで詳細を確認する
価格:1,620円 通常配送無料
出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する
価格:1,512円 通常配送無料
出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する
日本経済復活の条件 -金融大動乱時代を勝ち抜く極意- (TRI REPORT CY2016)
価格:1,728円 通常配送無料
出版社:ビジネス社
amazonで詳細を確認する
価格:1,728円 通常配送無料
出版社:星雲社
amazonで詳細を確認する
« 改革勢力候補者一本化の申し入れ | トップページ | 五輪と共に去りぬ菅内閣の五輪終 »
「福島原発炉心溶融」カテゴリの記事
- 海水浴に行かず近海魚介食べない(2023.07.06)
- 脱原発をさえぎる本当の敵(2023.06.20)
- 北海道電力泊原発運転差し止め命令(2022.06.01)
- 拭えぬ震災原発事故10年イベント感(2021.03.15)
- 原発メルトダウンNHK隠蔽指示者は誰か(2021.03.11)