透明プロセスで選考委密室化の新種詐欺
東京五輪組織委員会会長人事が再び密室で始動した。
森喜朗氏が女性蔑視、女性差別の発言を示し、引責辞任に追い込まれた。
公的機関のトップが引責辞任したのだから、当然、記者会見に応じるべきだったが、2月12日の記者会見に森氏は姿を現さなかった。
会見に出て再び逆切れ会見を行うことから逃避したのだと思われる。
森氏引責辞任でありながら、正規の手続きを踏まずに森氏が、菅首相、安倍前首相、小池東京都知事、武藤敏郎組織委事務総長だけに相談して、「密室」で後任会長に川淵三郎氏を就任させることを主導した。
引責辞任するのに、自分自身が相談役に就任することまで画策されていた。
この「密室人事」の概要を川淵三郎氏が外部に「漏洩」したため、人事は白紙に戻された。
川淵氏の口の軽さが密室人事挫折をもたらしたことは滑稽だ。
この顛末で組織委の根本的問題が浮き彫りになった。
組織委の根本的問題とは、組織委の意思決定が民主的で開かれた意思決定とかけ離れていること。
森氏は「女性が入ると会議が長くなる」、「組織委の女性はわきまえている」と述べたが、女性蔑視という問題と別に、組織委員会の独裁的性格が根本問題だった。
密室で最高幹部が内定した事項に意見を述べること、反対すること、異論をさしはさむ行為は「わきまえていない行動」として排斥されていたのだ。
スポーツ報知は組織委理事の、
「組織委は森会長、武藤事務総長ら一部の方が、ほとんどのことを決めて、理事はその決定事項を会議で聞かされているという流れ。
せっかく、様々な分野から集まってきているのだから、もっと意見の交換をすることが必要だと思う」
という言葉を紹介した。
森氏の後任会長に川淵三郎氏を選出しようとしたことが明るみに出て、人事案は撤回に追い込まれた。
川淵氏が口の固い人物であったなら、密室人事が押し通されていた疑いが強い。
森氏主導の密室人事に批判が沸騰したため、人事に関与したと見られる菅首相や武藤事務総長があわてて人事案の白紙撤回を主導し、正義の行動者であるかのように振る舞っていることも滑稽だ。
このなかで、武藤敏郎事務総長は2月12日の記者会見で、
「国民にとって透明性のあるプロセスでなければならない」
と述べた。
ところが、組織委員会は宣言と真逆の決定をした。
後任を絞り込む選考委員会メンバーを非公表とすることを決定した。
新種詐欺のような話。
「透明性のあるプロセス」を謳うなら、選考委メンバーならびに選考委検討内容を公開すべき。
密室協議批判が沸騰してプロセスを透明にすると宣言しながら選考過程を密室にするのは冗談にもならない。
選考委員名公表が重要なのは、政治権力のロボットメンバーの有無をチェックする必要があるから。
選考委メンバーが「御用委員」なら、適正な人選が行われる可能性は消滅する。
組織委会長に求められる条件は五輪経験などでない。
オリンピズムの根本原則を正しく理解し、その根本原則に沿って適正に行動できるかどうかが重要なのだ。
オリンピズムの目的は、
「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」
「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために」、
「スポーツを役立てること」
がオリンピズムの目的であって、その逆でない。
森氏は
「コロナがどういう形であろうと(五輪を)必ずやる」
と述べたが、この発言は完全に間違っている。
新会長は、オリンピズムの目的を正しく理解し、行動できなければならない。
オリンピズムの目的を正確に理解し、正しい意見を表明してきた唯一のJOC理事が山口香氏だ。
山口氏は、
「五輪後の日本は、どうなるのでしょうか。
変異種を含めたウイルスが一気に持ち込まれて、冬に向かって感染が再拡大する可能性も十分に考えられます。
そうした事態をみんなが恐れていて、そのことが世論調査『反対8割』として表れているんだと思います。
世論調査によると、国民の約8割が『五輪を開催すべきではない』と考えています。
このことは重要視すべきです。」
と述べた。
これこそ、オリンピズムの目的の正しい理解に基づく発言だ。
山口氏が後任会長にもっともふさわしい。
少なくとも、選考検討委員会メンバーに山口氏が起用される必要がある。
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