安保第5条米軍防衛義務に関する幻想
米国の最大の関心は
「日本の人々が政府を通じて米軍基地の使用を認め、安全保障上の守備範囲を広げてくれること」
2007年9月の日本経済新聞主催セミナーで米国国務副長官のリチャード・アーミテージ氏が発言した。
米国は、
「米国が望むだけの軍隊を、望む場所に、望むだけの期間駐留させる」
権利維持を最重視している。
それは日本を守るためではない。
米国の利益を守るためだ。
このことを押し通すためには条件の整備が必要だ。
第一に日本を取り巻く環境を不安定に見せること。
第二に日本の国民に米軍の存在が必要と思わせること。
第三に日本の政府が米政府に従順であること。
米国は日本を取り巻く環境を不安定にするために四つの工作を展開してきた。
ロシアとの間の領土問題、韓国との間の領土問題、中国との間の領土問題、北朝鮮との間の緊張関係。
これらの諸条件は、日本を米国に依存させるために必要なもの。
日本国民に地政学上のリスクを感じさせることが重要になる。
トランプ大統領は北朝鮮との交戦関係に終止符を打とうとした。
しかし、その企図は挫折した。
米国の軍産複合体にとって北朝鮮との敵対は「金のなる木」に等しい。
軍産の代理人であるボルトン補佐官などが行動して米国と北朝鮮との和解は阻止された。
2010年問題に戻る。
沖縄における米軍の権益、プレゼンスを維持するためには、「中国の脅威」が必要だった。
「脅威」がなければ日本の「共依存」を実現できない。
そのために活用されているのが「尖閣問題」である。
2010年9月に中国漁船と海上保安庁巡視艦との衝突事件があった。
この事件は人為的に創出されたものと言える。
尖閣海域の漁船への対応については日中両国が2000年6月に日中漁業協定を発効させている。
漁業協定に基づき、北緯27度以南の水域(尖閣諸島が含まれる水域)は、新たな規制措置を導入しない、つまり、自国の漁船を取締り、相手国漁船の問題は外交ルートでの注意喚起を行うこととされてきた。
この運用が2010年6月以降に変更された。
菅直人内閣が発足した2010年6月8日、菅内閣は質問主意書に対して
「解決すべき領有権の問題は存在しない」
との答弁書を閣議決定した。
この答弁書に基づいて前原誠司国交相の下で海上保安庁が尖閣海域の警備基準を日中漁業協定基準から国内法基準に変更した。
そのために尖閣海域漁船衝突事件が発生した。
前原誠司氏は2010年2月に米国務次官補カート・キャンベルが来日した際に会談している。
前原氏は同年12月の沖縄県知事選で伊波洋一氏が当選する可能性を「リスク」であることとキャンベル氏に伝えた。
日本における米軍権益を維持するためには「中国の脅威」が必要である。
この要請から漁船衝突事件が創作されたと考えることができる。
日本の国民が米軍プレゼンスは必要だと思わせるには、有事の際に米軍が展開するとの幻想を抱かせることが必要だ。
そのために用いられているのが、
「米国は尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用地域であることを認めた」
というフレーズの流布。
このフレーズは尖閣有事の際に米軍が展開することを保証するものでない。
ほぼ無意味に近い。
しかし、このフレーズが常に誇大宣伝される。
常に誇大宣伝するのが読売新聞であることも見落とせない。
本日、2月15日月曜日午後8時から、鳩山友紀夫元首相が主宰する東アジア共同体研究所によるYouTube動画「UIチャンネル」第380回放送で鳩山元首相と対談をさせていただく。
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