安倍首相健康問題と政局への影響
連続在職日数が歴代最長になった8月24日午前、安倍首相が慶応大病院(信濃町)に入った。
8月17日に続いて2週連続の病院訪問は異例。
首相官邸は「先週の受診時に医師から1週間後にまた来るよう言われており、受診は前回の続き」と説明したが、額面通りに受け取る者はいない。
政治家にとって健康問題は機密事項。
日帰りの病院訪問であれば隠密に行ことが普通。
首相官邸に医師を招くこともできる。
往診では対応できない事情があると考えられる。
隠密での行動は週刊誌等に発覚された場合の影響が大きいため、あえて公表していることも考えられる。
いずれにせよ、重大な健康問題が発生している可能性が高い。
病院訪問を公表しているのは、政局転換の伏線を張っている可能性もある。
早期に安倍首相が退陣を表明する可能性を否定できない。
かつて、石橋湛山首相が健康問題を理由に早期辞任を決断したことがあった。
日本政治史の屈折点である。
石橋内閣が長期内閣になっていれば、日本が暗黒史を刻むことはなかった可能性が高い。
拙著『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)
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から引用する。
「吉田内閣が造船疑獄事件で退陣に追い込まれた後、公職追放から復帰した鳩山一郎氏が首相の座に就いた。
鳩山一郎氏は米国と一定の距離を保ち、ソ連との国交回復を実現した。
このことによりシベリア抑留者50万人が日本に帰還できたのである。
1956年、鳩山一郎内閣はソ連との平和条約締結寸前まで交渉を進展させた。
ところが、ここで米国が横やりを入れた。「日本が歯舞・色丹二島返還による平和条約締結に踏み切るなら、米国は永遠に沖縄を日本に返還しない」と恫喝したのだ。
日ソ平和条約は締結に至らず、北方領土問題の解決も実現しなかった。
この後、日本は北方領土について、四島が日本帰還との主張を始めた。
米国の差し金による日本の主張の大変化である。
孫崎享氏の著書『日本の国境問題』(筑紫書房)に詳しいが、米国は日本と中国、日本と韓国、日本とソ連が友好関係を構築しないように、国境問題、領土問題において紛争の種を植え込んだ。
これが尖閣、竹島、北方四島の問題である。
鳩山一郎氏首相の後継首相の座を狙っていたのが岸信介氏である。
しかし、1956年12月の自民党総裁選で岸信介氏は敗北した。
米国に対して堂々とモノを言う石橋湛山氏が首相に就任した。
米国は石橋首相の誕生を警戒した。
石橋湛山首相は首相就任に際して「自主外交の確立」を掲げ、対米隷属の修正を目標として明確に定めた。」
「この石橋湛山内閣誕生に関して春名幹男氏は、米国国務省北東アジア部長のパーソンズ氏が「ラッキーなら石橋は長続きしない」と述べたことを記す英国外交文書の存在を明らかにした。
そして現実に、石橋内閣は、この言葉通り、わずか65日の短時間で終焉した。
石橋首相は1957年1月25日、帰京した直後に自宅の風呂場で軽い脳梗塞を発症した。
報道は「遊説中に引いた風邪をこじらせて肺炎を起こした上に、脳梗塞の兆候もある」と発表したとされる。
母校早稲田大学で行われた行事に出席し、体調を悪化させたとも伝えられている。
石橋首相は2ヶ月の絶対安静が必要との医師の診断を受けて、「私の政治的良心に従う」として首相の職を辞した。
石橋湛山氏は昭和初期に、暴漢に狙撃され、帝国議会への出席ができなくなった当時の濱口雄幸首相に対して退陣を勧告する社説を『東洋経済新報』に執筆していた。
国会に出ることができない自分が首相を続投すれば、社説での言説との矛盾が生じるとして首相辞任を決意したと伝えられている。」
重大な健康問題が存在するなら、国政に遅滞が生じることは免れない。
安倍首相が辞任を表明するなら、日本の政局は重大局面を迎える。
衆院の任期満了が1年後に迫る。
どのようなかたちで次の衆院総選挙が実施されることになるのか。
安倍政治NOの考えを持つ日本の市民は、この機会に日本政治の刷新を図らねばならない。
そのための具体的な構想を構築し、直ちに実行する必要がある。
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