検察存在意義を問う河井議員夫妻事案捜査
安倍内閣が強引に実現しようとした黒川弘務検事総長構想が崩壊した。
検察の意向は林真琴検事総長である。
黒川氏が辞任する東京高検検事長のポストに林真琴氏が就任して、本年7月に稲田伸夫検事総長が退官し、林氏が検事総長に就任する。
こうなると検察人事は当初の検察の構想に帰着する。
その可能性が高まりつつある。
検察は現職の政治家、閣僚、場合によっては首相をも逮捕、起訴し得る存在で、政治からの独立性が重要な機関である。
行政機関であり、形式上は内閣や法務大臣に人事権があるが、現実の運用においては、政治による人事介入が手控えられてきた。
検察官OBが提出した意見書においても、
「これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。
これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。」
と指摘された。
検察は安倍内閣が検察人事に露骨に手を入れてきたことに反発した。
検察庁法改正案に対する強い反対姿勢はこのことを背景にしたものだ。
黒川氏の常習賭博罪事件によって黒川氏が失脚して検察人事が原状回復を遂げる。
この方向が明確になりつつある。
ここで注視が必要な重大問題が浮上する。
河井克行夫妻の公選法違反容疑事件のゆくえだ。
広島地検は河井克行衆議院議員、河井杏里参議院議員の立件に向けて精力的な捜査活動を継続している。
コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されれば河井克行議員の逮捕許諾請求に進むと推察されている。
この場合、検察はさらに踏み込んで自民党本部に対する家宅捜索を行う必要がある。
なぜなら、河井克行氏による現金贈与の資金源が自民党本部からの資金であると見られるからだ。
河井陣営に異例に1億5000万円の資金が提供された。
この資金が買収資金として活用されたと見られる。
さらに、その1億500万円の一部が安倍首相陣営に還流したとの見方も浮上している。
河井議員案件は安倍首相事案に発展する可能性を秘めている。
他方、桜疑惑では弁護士や法律学者などの法律専門家600人超が刑事告発を行った。
検察が告発状を受理した場合、捜査を行う必要が生じる。
ホテルニューオータニ、ANAホテルにおける桜を見る会前夜祭の費用明細書類を検圧当局が押収すれば、公選法違反に該当するのかどうかの判断がつくと見られる。
今後の動向は検察の行動がカギを握る。
懸念は人事正常化と引き換えに検察サイドが河井議員捜査、桜疑惑捜査を封印することだ。
万が一、検察が捜査封印に進むなら、河井議員夫妻事件捜査は、安倍官邸に圧力をかけるためのブラフ=脅しだったことになる。
検察が人事の独立性確保と引き換えに安倍内閣追及の行動を弱める可能性を厳正に監視する必要がある。
この場合、安倍内閣と検察は「目くそ鼻くそ」ということになる。
どちらも自分の利益しか考えない最低の存在ということになる。
検察は人事の適正化を獲得しても、不正を放置する行動を示すべきでない。
人事が検察構想の方向で動く場合、最大の監視を行われなければならないのは河井事案の行方だ。
逮捕許諾請求が行われないなら、腐敗しているのは安倍内閣だけでなく検察自身でもあるということになる。
そもそも、刑法犯罪が明確になっているのに、黒川氏および新聞社職員に対する捜査が直ちに行われないことがおかしい。
時事通信などは早速「黒川氏ケース、事件化困難?」のタイトル記事を掲載して黒川氏を無罪放免にする世論形成に尽力する姿勢を示す。
一般人の犯罪ではない。
犯罪を取り締まる最高機関の最高ポストに居座る人物の犯罪行為なのだ。
より厳正な対応が必要であることは言うまでもない。
検察人事への介入に対しては意見を提出し、記者会見まで開いた検察OBが検察官の犯罪摘発の必要性を声高に叫ばないのはどういうことなのか。
それでは単に検察一家の権益を守るためだけの行動ということになってしまう。
黒川氏の犯罪捜査を適正に行い、同時に、安倍内閣関係者の犯罪捜査を適正に行う。
このことがあって初めて検察の正当性を世に問うことができるのではないか。
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