検察庁法採決強行なら安倍内閣終焉へ
コロナ禍の日本政治は5月18日の週に最大のヤマ場を迎える。
安倍内閣は違法な検察人事を強行している。
黒川弘務東京高検検事長は本年2月に定年を迎えた。
国家公務員法が定める勤務延長の特例期待は検察官には適用されない。
昭和56年(1981年)4月28日、衆議院内閣委員会において所管の人事院事務総局斧任用局長が、
「検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されない」
旨明言している。
これに反する運用はこれまで1回も行われて来なかった。
ところが、本年2月13日の衆議院本会議で安倍首相は
「検察官にも国家公務員法の適用があると従来の解釈を変更することにした」
旨を述べた。
これは、本来国会の権限である法律改正の手続きを経ずに内閣による解釈だけで法律の解釈運用を変更したという宣言である。
しかも、法律解釈変更の正規の手続きが取られていない。
過去の国会答弁の事実が明らかになったあとで、口頭で解釈変更の手続きを行ったと苦し紛れのウソが示されたと見られている。
元検事総長をはじめとする検察官OBが森法相に提出した意見書は、安倍内閣の法律解釈変更について、
「フランスの絶対王制を確立し君臨したルイ14世の言葉として伝えられる「朕(ちん)は国家である」との中世の亡霊のような言葉を彷彿(ほうふつ)とさせるような姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。
時代背景は異なるが17世紀の高名な政治思想家ジョン・ロックはその著「統治二論」(加藤節訳、岩波文庫)の中で「法が終わるところ、暴政が始まる」と警告している。
心すべき言葉である。」
と指摘している。
安倍首相は黒川弘務氏を強引に検事総長に引き上げるために違法な黒川氏の勤務延長を強行した。
現在の稲田伸夫氏が本年7月に就任2年を迎える。
このタイミングまでに稲田氏を退官させて、後任に黒川弘務氏を検事総長に引き上げることが目論まれている。
検察庁内部では稲田検事総長の後任に林真琴名古屋高検検事長を就任させる方針が固められていた。
検察庁は行政機関のひとつであり、検察官の人事権は形式上、内閣や法相に付与されているが、実際の運用においては特別な配慮が施されてきた。
検察官OBの意見書は、このことを次のように記述する。
「検察官は起訴不起訴の決定権すなわち公訴権を独占し、併せて捜査権も有する。
捜査権の範囲は広く、政財界の不正事犯も当然捜査の対象となる。
捜査権をもつ公訴官としてその責任は広く重い。
時の政権の圧力によって起訴に値する事件が不起訴とされたり、起訴に値しないような事件が起訴されるような事態が発生するようなことがあれば日本の刑事司法は適正公平という基本理念を失って崩壊することになりかねない。」
「こうした検察官の責任の特殊性、重大性から一般の国家公務員を対象とした国家公務員法とは別に検察庁法という特別法を制定し、例えば検察官は検察官適格審査会によらなければその意に反して罷免(ひめん)されない(検察庁法23条)などの身分保障規定を設けている。
検察官も一般の国家公務員であるから国家公務員法が適用されるというような皮相的な解釈は成り立たない。」
と指摘するとともに、
「これまで政界と検察との両者間には検察官の人事に政治は介入しないという確立した慣例があり、その慣例がきちんと守られてきた。
これは「検察を政治の影響から切りはなすための知恵」とされている(元検事総長伊藤栄樹著「だまされる検事」)。」
と記述する。
検察官の責任の特殊性、重大性から、検察官の人事に政治は介入しないという慣例が確立されてきたが、安倍内閣の行動はこれをあからさまに破壊するものである。
黒川氏の勤務延長は現行法体系から逸脱する違法なものであり、これを押し通して黒川氏を検事総長に就任させる行為は「法の支配の終焉」、「完全なる暴政の始動」を意味するもの。
安倍内閣が検察庁法改正案の採決を強行し、暴政を本格化させるなら、日本の主権者国民は、いまこそ主権者の主権者たる所以を行動で示す必要がある。
次の衆院総選挙までには1年以上の時間があると安倍首相は判断しているのだろう。
それだけの時間がたてば国民は忘れてしまうと高を括られている。
主権者国民に対する冒涜姿勢を許すのか許さないのかを決めるのは主権者自身だ。
安倍内閣が強行採決に突き進む場合には、法案賛成議員を次の総選挙で必ず落選させるために主権者は力を結集する必要がある。
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